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狭心症の治療、重度の場合は広げる、迂回路を作るの2とおり

狭心症はまず薬物療法が行われます。軽度の場合はそれでコントロールできることが多いです。今回は重度で十分な治療効果を得られない場合行われる、心臓の冠動脈に対する直接的な治療についてお伝えします。

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重度の狭心症の治療法

薬物療法で十分な効果が得られない場合、カテーテル治療やバイパス手術などの治療が行われます。カテーテル治療やパイパス手術が検討されるのは、以下の様な場合です。

  • 薬をしっかり服用していても発作が抑えられない
  • 不安定狭心症

それぞれの治療法について、詳しく見ていきましょう。

 

カテーテル治療

冠動脈を広げる治療法です。カテーテル治療で現在主に行われているのは、ステント療法という方法で、ステントと言う金網製の小さな筒を用います。

カテーテル(医療用の細い管)を使ってステントを冠動脈の狭窄(きょうさく)部(内腔が狭くなっている部分)まで送り込み、広げて留置し、ステントで血管の壁を支えます。

ステント療法

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出典: 新東京病院医療相談室内 新心会(2004. 10月、SHINSHIN Report 第38号より)

  • 先端にバルーンがついたカテーテルにステントがかぶさっている状態で、冠動脈の狭窄部に送り込む②
  • 生理食塩水と造影剤を混ぜた液体を送り込みバルーンをふくらませ、ステントを広げる③
  • 広げたステントで冠動脈を押し広げた後、バルーンをしぼませてカテーテルを抜き、ステントを留置する④

治療時間: 1時間~1時間半程度

入院期間: 2~5日程度

費用(参考): 総額150万円程度、3割負担50万円前後、高額療養費適用の場合15~20万円程度

狭心症の程度や狭窄の場所によっては、日帰りで治療できる場合もあります。ただ、ステントを入れた部分が再び狭くなってくることがあります。体にとってステントは異物なので、それを覆うように動脈の組織が増殖してくるためです。

再発と血栓

現在はステントに組織の増殖を防ぐ薬を塗った「薬剤溶出型ステント」も使われており、このステントを使った場合は、ステントを入れた部分が再狭窄する可能性は、3~5%に抑えられます。

ステントを入れた部分以外で動脈硬化が進行し、再発することもあります。また、ステントには血液の塊(血栓)がつきやすいという問題もあり、ステント療法を受けた人は、血栓を作りにくくする薬を長期間服用する必要があります。

生体吸収性スキャフォールド

再発の危険性を解消するため、新しいカテーテル治療の開発研究もすすめられていて、昨年、血管の中で自然に溶けるステント、「生体吸収性スキャフォールド」と呼ばれるステントが承認されました。

手術で使われる「生体吸収糸」が素材で、血管に入れると2年位で吸収されてしまいます。血管は6~8ヶ月間支えられていれば、広がったままの状態を保つことがわかっています。ステントが吸収されても再狭窄が起こることは殆どありません。長期的には多くのメリットの可能性がありますが、スキャフォールド血栓症の発症リスクは高いと考えられます。

参考: CVIT 日本心血管インターベンション治療学会 /www.cvit.jp/news/2016/12/22_005523.html

 

バイパス手術

冠動脈に狭窄部がある場合、冠動脈の根元側から、狭窄した部分を迂回するようにして、その先まで新たに血管をつなぎ、血液の迂回路を作るのがバイパス手術です。バイパスは通常3~5箇所作り、心臓の筋肉に十分に血液を送れるようにします。

バイバスの血管(グラフトといいます)には、患者さんの心臓とは別の場所にある、取っても体に大きな影響が無いことがわかっている健康な血管*を使います。

*バイバスに使われる血管(グラフト)

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出典:中頭病院 心臓血管外科

  • 内胸動脈(肋骨の内側にある)
  • 右胃大網動脈(胃の脇を通っている)
  • 橈骨(とうこつ)動脈(肘から手首にかけてある)
  • 大伏在(だいふくざい)静脈(太股の内側にある)

など。

内胸動脈は非常に動脈硬化を起こしにくく、バイパスに最も適した血管です。

バイパス手術の特徴

バイパス手術は患者さんの体に与える負担が大きい治療ですが、3~5箇所の狭窄を一度に治療することができ、特に内胸動脈をバイパスに使用した場合、その後に狭心症や心筋梗塞を再発する心配は殆どないのがメリットです。

手術時間: 5時間程度

入院: 2週間程度必要

費用(参考):総額300万円ほど、3割負担で100万円程度、高額療養費制度適用で15~30万円程度

切った胸の骨が完全にくっつくまでに2~3ヵ月かかります。

 

治療の選択

どちらの治療を選択するかは、以下のような点を考慮し総合的に判断します。

  • 狭窄の場所
  • 狭窄の数
  • 年齢
  • 持病

カテーテル手術、バイパス手術、どちらの治療にもメリットとデメリットがあります。これをよく理解した上で、ライフスタイルなども考慮して医師と十分相談の上総合的に判断します。どちらの治療も、再発を予防することは大切です。

判断材料

 バイパス手術カテーテル治療
狭窄が根本や3箇所以上
75歳以上
適する例(持病) 糖尿病や透析患者 脳卒中の発症後や肺、肝臓の病気
体への負担
メリット 一気に改善できる 繰り返し行える
抗血栓薬 なし 長期間

狭窄の場所 
冠動脈の根本に近い部分が狭窄している場合、そこが詰まると心臓の広い範囲に影響が及びます。この場合は、確実に血液を確保できるバイバス手術が向いています。

狭窄の数 
狭窄部分が3箇所以上ある場合、一度に複数箇所の治療ができるバイパス手術が向いています。

年齢 
75歳以上の場合、多くは体への負担が軽いカテーテル治療が選択されます。

持病 
糖尿病がある、透析療法を受けている、という人は動脈の状態が悪くなっていることが多いので、バイパス手術が向いています。

一方、脳卒中を起こしたことがある、肺野肝臓の病気があるという場合は、体への負担が軽いカテーテル治療が適しています。

 

まとめ

カテーテル治療、バイパス手術、どちらを選択しても、再発予防は大切です。狭心症は、もともと動脈硬化を起こしやすい人が発症する病気です。生活習慣を改善し、心臓リハビリテーションをしっかりおこなって行きましょう。

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