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犯人は嫁!家族が認知症になった時の対応と家族の健康を守るコツ

認知症で妄想や暴力、徘徊などが起こるBPSDは介護者に負担が強くかかり心身の不調をきたすことも。患者さんのみならず、介護者の健康を守るため、家族が認知症になったときの対応をお伝えします。

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BPSD(行動・心理症状)

認知症の症状には、中核症状(認知機能の障害)とBPSD(行動・心理症状)があり、中核症状は、物事を順序よく実行できなくなる実行障害や記憶障害(物忘れ)などが起こります。また、BPSD(行動・心理症状)は、

  • 妄想
  • うつ状態
  • 興奮や暴力
  • 徘徊

なども起こり、家族など周囲の人が対応に困ることも多いです。心労や疲労で介護者が倒れてしまうことも少なくありません。

認知症患者さんが線路内に立ち入り、鉄道会社から莫大な損害賠償を求められた裁判が起き、世間で大きな問題となったこともありました。認知症の介護における家族の心労は計り知れません。

家族が認知症になったら、患者さんだけでなく、介護をする家族の心と体の健康も考える必要もあるのです。

 

介護者の負担を軽減する

 

またトイレットペーパーが盗まれている!
泥棒がはいったのよ。いつもそう

 

泥棒さん、もういないから大丈夫ですよ。
新しいペーパーを入れておきましょうね。

 

高齢のおばの家で、毎日、何回も繰り返される会話だそうです。相手をしているのは息子の奥さん、つまり嫁です。おばはレビー小体型認知症を発症しているそうですが、ちょっと見は、普通と変わりはないので、苦労は多いようです。

毎日この会話が繰り返され、おかしくなりそうだとお嫁さんは言っていました。幸い「盗られる」のは今のところトイレットペーパーだけで、「泥棒さんが犯人」、ということで収まるので、まだ救われると。

物盗られ妄想や暴力などの矛先は、同居のお嫁さんに向かうことが多い傾向にあります。

犯人はお嫁さん

BPSDでは、患者さんは疲れや強い不安を感じています。物取られ妄想が多く見られますが、疑われるのはお嫁さんが多い。自分でしまった財布の場所を忘れて、「嫁が盗った」と騒いだり、食事をしているのに「嫁がご飯を食べさせてくれない」と近所にいいまわったりすることなどがその例です。

ご近所の方が、患者さんが認知症と知らない場合、「何ていう鬼嫁!」という噂がたち、お嫁さんが介護疲れやストレスから不定愁訴となって、家庭がギクシャクしてしまったりすることもあります。

BPSDが起きた場合は、患者さんの不安を減らす工夫をすることと同時に、介護する家族、特にお嫁さんの心身の負担を軽減することを考えることも大事です。

 

BPSDの症状の対処

BPSDでは、物盗られ妄想がよくみられる症状ですが、そのほか夜中に興奮して大声を上げる、些細なことで暴力をふるう、徘徊、と介護者が困ってしまう症状が起こります。それぞれが起こる背景に応じた対応をすることが大事です。

物盗られ妄想

 

私の財布、あんた、盗んだでしょ!

 

無くなったの?じゃあ一緒に探しましょう
あら、ここにありましたよ。良かったですね

 

良かった

 

見つかったら、一緒にお茶を飲むなどして気分を変え、その話題は終わりにします。

ここで、

 

私ではないです。
お母さんがほかの場所にしまったんではないですか。

 

などと反論しては逆効果です。一緒に探そうという態度を取りましょう。

財布や通帳など大切なものをどこかにしまったものの、しまったこと自体が頭からすっかり抜け落ちてしまい、財布や通帳が見当たらないことを合理的に説明するために「盗られたに違いない」と妄想を作り上げ、認知のゆがみが起きます。この時患者さんは、しまった記憶がないため、焦りや不安を感じています。

疑われるのは身近で世話をする家族がほとんどで、息子の嫁や自分の娘などを犯人扱いにすることが多いのですが、相手を日ごろから恨んでいるわけではありません。このような場合は、反論したり言い訳をしたりしても聞き入れませんので、騒がずに一緒に探すとよいです。繰り返し起こる場合も、毎回淡々と対応します。そのうち、しまい忘れる場所は検討がつくようになるものです。

疑われる人に必要な周囲のサポート

病気のせいだとわかっていても、いつも理不尽に疑われるのはつらいものです。ほかの家族は、疑われる人へのいたわりを忘れないようにしましょう。

興奮や暴力の対処

  1. まず、介護する人の身の安全を確保する
  2. 「いつ、どこで、どんな状況で、誰に対して、どの程度」を観察して記録する
  3. 原因を考えてみる
  4. 専門家に相談し、対応策を検討

夜中に興奮して大声を上げる、些細なことで暴力をふるったりすることもあります。夜中に興奮する場合、実際にはないものが見える「幻視」や、病的な寝ぼけである「夜間せん妄」が起こっていることが有ります。

まず、危険を避け、介護者の身の安全を確保することを最優先しましょう。冷静になるのが難しいこともあると思いますが、上記2をできるだけ具体的に記録しておきます。

落ち着いて状況を整理すると、唐突に見えた興奮や暴力の裏に、患者さんなりの合理的な理由が見えてくることが有ります。

興奮や暴力の理由を、介護する人が考えるとともに、担当医に相談し、専門家と一緒に対応を考えることが大切です。

徘徊の対処

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  • 徘徊時の状況を観察して記録する
  • 目的地が合理的な場合、不合理な場合
  • じっとしていられない場合
  • はぐれた場合
  • なぜ起こったかを考えてみる
  • 専門科に相談し、対応策を検討する

徘徊には様々な状況があります。

  1. 自分のいる場所がわからなくなり、「家に帰る」と自宅を出てしまう
  2. 歩いては行けない遠い場所の実家に向かって、突然歩き始める
  3. 家族の姿が見えず、不安になって外に探しに出てしまう
  4. 外出時に暗くなって道に迷う

など、患者さんによって違います。

患者さんがいなくなって必死に探しまわったり、警察に保護されたと連絡会って駆けつけたりと、周囲の人が振り回されることも多いのですが、冷静に前後の状況を考えてみましょう。

上記1~4では対応が異なります。徘徊が起こった状況をできるだけ冷静に観察・記録しその理由を自分で考えるとともに、担当医に相談します。

徘徊の理由が推測でき、対応が考えられる場合もあります。目的がなく、止めるのが難しい激しい徘徊の場合は、一時的な入院や、薬による治療が必要なこともあります。

  • 見つかりやすい工夫
  • 居なくなったときに見つかりやすいように
  • 衣服に名札を付ける
  • 名刺をバッグや服のポケットに入れておく
  • GPS機能付きの携帯電話をバックにいれておく

などのほか、近所のかたや警察にも、あらかじめ頼んでおくとよいでしょう。

 

家庭での介護が難しい時

BPSDで介護する家族など負担が大きかったり、危険が及びそうなときは、薬による治療も検討されます。特に妄想や幻視、興奮や暴力、睡眠障害など、家族の負担が大きい症状には、環境調整と並行して、適切な薬物療法が必要になります。副作用に注意しながら慎重に使うことが大切です。薬の効果の有無は、患者さんにより異なります。

介護の負担を分散する工夫

  • 介護者の休みを確保する
  • 1人で背負わず、ほかの家族などにも協力してもらう
  • 介護保険制度を利用
  • 同じ経験をした人からアドバイスや共感をもらう

自宅での介護の負担が大きくなりすぎ、介護者が体調を崩したり、心の健康が損なわれたりしたのでは本も子もないです。近年の高齢化社会、核家族化で、老老介護もすくなくありません。特定の人に介護の負担が集中しないよう、家族全員が協力して介護の負担を分散させることが大切です。無理をしないことが前提です。

介護保険、施設サービスなどの利用も考えましょう。施設にはいろいろな種類があるので、あらかじめ調べておけば、「いざとなったら〇〇がある」と考えることができ、自分を追い込まずに済みます。

 

BPSDとは

認知症では中核症状が起こると、自分を取り巻く環境(外界)を正しく認識できなくなり、自分ではよくわからないことが次々と起こるので、生活そのものがストレスになってしまいます。

そこに、患者さんの心の状態、正確、生活環境などが影響すると、妄想、うつ状態、興奮や暴力、徘徊などが起こることがあります。こうした様々な行動や心理の変化をBPSDと呼びます。

記憶障害や実行機能障害などの中核症状に様々な要因が加わってBPSDが起こり、強い不安を感じるのが代表的な認知症のパターンです。

※かつてBPSDは、中核症状に対して「周辺症状」と言われてきました。

参考:認知症フォーラム 認知症の基礎知識 中核症状とBPSD /knowledge/kaigo/007.html

 

まとめ

介護をする人が疲れ切ってしまうと、患者さんにとっても良くありません。「ちゃんとお世話をしなくちゃ」と気負いすぎず、自分や家族の時間を確保することも大切です。また、患者さん、介護者の両者ともに心身に余裕があるうちに、施設の入所を考えておくと、いざと言う時に冷静な判断や選択がしやすいものです。

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