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徘徊、妄想、暴力は安心感で改善!認知症周辺症状の対応具体例

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認知症の周辺症状は、介護をする人や周りの人の対応のしかたで、症状が改善して、生活の質を向上させることも可能です。

 

「周辺症状」については前回の認知症との接し方4つの基本~JR事故、家族の監督責任で思うことでも触れましたが、ここでは具体例を挙げて、よりわかりやすく説明します。

 

認知症の周辺症状とその対応

軽度の認知症では、「財布を盗まれた」など、ものを取られたという妄想(物盗られ妄想)がよく見られます。これはものをどこにおいたか、という記憶がなくなるために起こり、不安から誰かが盗ったと思い込みます。

 

高度の認知症では、「時間」、「今いる場所」、「人物」。などに対する認識や理解が正確に出来ないため、大変不安定になっています。進行すると自分のこともよくわからなくなります。

 

軽度の認知症でよく起こる「物盗られ妄想」と、高度の認知症で見られる暴力や暴言を例として、その対応を解説します。

 

周辺症状とは?サラッとおさらい

認知症は治療をすることで、改善されたり、進行を遅らせたり出来る症状もあります。

 

基本的に次第に進行して、良くなることがないのが

「中核症状」 物忘れ、今いる場所や時間がわからない、理解や判断の障害など

 

周囲の人の対応で改善可能なのが

「周辺症状」 妄想、徘徊、意欲低下、抑うつ・暴力など

です。

 

物盗られ妄想~軽度の認知症

物盗られ妄想が起きている場合の対処は

  • 否定しない
  • 怒らない
  • 丁寧に話を聞く

です。

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置き場所を変えたことを忘れる

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いつもの場所にない
家族が盗ったと怒り出す

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一緒に探す

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財布がなかったことは忘れる
優しい人、と言う感情が残る

数年経過

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症状は少し進むが
家族と一緒に元気で過ごす

 

Aさんは自分で財布をしまう場所を変えました。しかしその記憶が抜け落ちて「いつもの場所」に「財布がない」のは、家族がとったせいだ、と考えました。

 

「物がない、盗まれた」と言う時は言い分を聞いて、「え、財布がないの?一緒に探そう」等と言って、一緒に探してあげることが大事です。しばらく探すうちに財布のことを忘れ、落ち着くことが多いです。この時、「自分の言い分を聞いてくれて、一緒に探してくれた優しい人」という温かい感情が残ります。

 

この繰り返しで、物忘れは多少進んでも、家族と元気に暮らすことが可能となります。

 

認知症の患者さんは嘘をついているわけでも、家族を困らせようとしているわけでもありません。記憶が抜け落ちているため、自分が忘れたことが不安で、誰かに盗まれた、と思い込むことで不安を拭っているのです。

 

 

高度の認知症の場合

否定したり怒ったりしない、というのは軽度の場合と同じです。病気の進行とともに記憶が亡くなっていくため、「自分はなぜここにいるのか」、「隣にいる人は誰なのか」、といったことがはっきりしなくなってきます。さらに進むと自分自身に関することも良くわからなくなってくる。

 

そんな不安を取り除き、安心できるような対応が必要です。

 

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忘れていることを指摘
否定する、怒る

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財布のことは忘れる
怒る怖い人、と言う感情が残る

数年経過

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周辺症状が進む
介護拒否
暴力・暴言など

 

先ほどの物取られ妄想が起きた時に、「自分で場所をかえたのに、忘れた」と怒ったり、「家族が盗むわけがない」と言い分を否定すると、財布のことは忘れても、「いつも怒る怖い人」という感情だけが残ってしまいます。

 

すると、「この人は怖い人、嫌な人」という感情から、介護に手を貸そうとすると抵抗したり、暴力を振るったりするようになってしまいます。

 

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Bさんは、夕方になると「家に帰る」と言い出すことがよくあります。今いる場所が自分の家だと認識できず、不安を覚えている。以前住んでいた家が、安心できる場所と思っています。

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この場合は、「ここがあなたの家ですよ」と反論してはいけません。

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 「今日は泊まりましょう。明日送っていきますよ」、「一緒に帰りましょう」など話を合わせたり、行動をともにすることで安心します。

 

そのような対応をしているうちに、患者さんは何をしようとしていたのかを忘れることもあります。

 

出来ないこと、忘れたことを否定したり怒ったりせずに、一緒に考えたり行動したりすることで、不安な気持ちを落ち着かせ、安心させることが出来ます。

 

 

周辺症状が現れる

同じことを何度も言われると、つい、イライラして辛く当たったりしてしまいがちですが、患者さんの言い分を否定したり、間違いを指摘したりすると、周辺症状が悪化し、介護を拒否したり、暴力を振るうようになったりすることもあります。

 

病状が進行している場合、「時間」、「今いる場所」、「人物」などを正確に認識や理解が出来ないため、とても不安になっています。なぜ自分がここにいるのか、隣にいるのは誰か、といったことがはっきりしなくなります。

 

赤子笑うな来た道だ。年寄り笑うな行く道だ。

 

盗んだ、と頻繁に言われれば、否定したり怒ったりしたくもなるし、「嫁が財布を盗んだ」、「ご飯を食べさせてくれない」など、認知症のことを知らないご近所に触れ回ることもある。真に受けてひどい家族だ、と思われているのでは、という心労も増します。

徘徊は周りの人にも迷惑をかけるのですが、重大な事故を起こさない、事故に合わないよう、四六時中目を話さずにいることは難しいし、家に縛り付けているわけにも行きません。

物盗られ妄想や暴力・暴言などは、身近で一生懸命介護をしている人にむけられることが多いのも、問題なのです。

 

認知症の周辺症状のため、と頭で理解していても、つい辛くあたってしまったり、介護を放棄したくなったりする心情は、想像に硬くありません。

 

さらに一生懸命介護しても、周辺症状に悩み、身も心もボロボロなのに、先日のJR事故のように、監督責任を問われる可能性もある。

 

「監督責任」重い問題です。

 

家族だけで抱え込まない

記憶障害があると、過去と現在を関連付けることが出来ません。病気が進行すると、自分は誰か、一緒にいる人は誰かもわからなくなり、時として暴力や暴言などで介護する人が身も心もボロボロ、経済的にもくるしくなったり、家庭崩壊に繋がるケースもあります。

 

認知症の人の介護は、家族や周りの人だけの力だけでは難しい。地域包括支援センター、認知症の人と家族の会などに相談したり、ショートステイの利用なども考えましょう。

 

 

まとめ

話を聞いたり、一緒に行動したりすることで安心して、困った言動のことを忘れることは良く有ります。その時々で、認知症の患者さんへの対応を変えることが重要です。

 

対応や言葉を変えてもうまくいかない場合は、多くの場合薬物療法が検討されます。

暴力や暴言がひどく、危険な行為が予測される場合は、「抗精神病薬」を使ったりします。症状に応じて、抗うつ薬や睡眠導入薬を使用することもあります。

 

周辺症状は、周りの人の対応や、くすりで改善することも可能です。進行を遅らせ良い状態を維持するためにも、介護をする人、家族などに、周辺症状についての知識を正確に持って欲しいと思います。

行政の認知症への対応、社会の理解も進みますように。

 

 

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