ナースほど誇れる仕事はありません

ナースダイアリー・超忙しい看護師のひとりごと

病棟のゴールドフィンガー!看護師は下の世話が好き~摘便でスッキリ

下の世話が「汚いこと」「大変なこと」と世間が思っていて、看護師自身もそこから抜け出せないと、看護師辞めたい、となってしまいやすい。摘便が上手な看護師が、「病棟のゴールドフィンガー」と称号が与えられるのは何故か。そのお話をします。

f:id:lady-jhones:20160125181912j:plain

食べて不要になったものは出す。これは生きていく上で需要なこと。下の世話について、新人看護師に知っていてほしいことです。

※摘便とは自分では出せない便をかき出す処置のことです。

看護師と下の世話

看護師を辞めたい理由に、下の世話がどうしても慣れることができない、という新人ナースも少なくありません。

病院と排泄物は切っても切れない縁に結ばれています。失禁する患者さんが多く、おむつ交換の数を数えている暇もありません。

患者さんの家族から「看護師さんって大変ね」と言われるのは、たいてい下の世話をしている時。「汚いこと」のお世話と無意識に思われているのだろうな、とちょっぴり悲しくなります。

排泄の大切さをきちんと理解しなければ、世話をされる患者さんの尊厳を守ることができないし、お世話をする看護師も自分を卑下し人格が保てなくなるから。

 

下の世話は汚い、大変なこと?

新人ナースが、下の世話に抵抗感を持ち、看護師辞めたいと思うのも、こういった意識が抜けないからでしょう。

>

でも、よく考えてください。出なかったら大変!健康な人だって、便秘が続けば身体のあちこちに問題が生じてきます。病気ならなおさらです。

看護師は下の世話が好きなもの。患者さんが綺麗になって、快適に思ってくれるのがうれしいのです。

 

カルチャーショック

看護師になって、一番カルチャーショックを受けるのは、看護師が明るく元気に「う◯こ」と日常的に言うこと。

尿の事は気取って「お小水」なんて言ってもわからない世代も多くなったし、「おしっこ」と普通に言えると思います。一方便は、「大きい方」とか「お通じ」とか。

 

恥ずかしがっていては通じない

お年寄りでちょっとボケているような方が、もぞもぞしているので、「お通じですか」と聞いても、ちっとも通じません。大きな声でもう一度言ってみましたがダメ。

そこに先輩ナースがやってきて、はっきり一言「う◯こ?」と聞くと、患者さんは大きくうなずいたのです。

普段は「お小水」「お通じ」と言っていても、いざとなったら「おしっこ」「う◯こ」でなければ通用しないことが多い。

戸惑ったのは最初だけで、すぐに明るく「う◯こ」といえるナースとなっていました(笑)。

 

大事なものは引き出しに

飼い犬が食糞をして困っている…という話はよく聞きますが。

ボケがある患者さんの中には、う◯こをこねくり回したり、ベッドなどにこすりつけたりする方もいます。知りたくないのですが、口元に何故かついていたり。

おむつはとりかえたし、失禁もしていないのに病室が臭い。

おかしいと思って臭いの元を探すと…なんとベッドサイドの床頭台の引き出しに、てんこ盛りになっていた。なんて衝撃的な事件も有りました。

「こんなところにう◯こをしまっちゃダメですよ」とさらっと言えるようになると一人前の看護師です。(笑)

 

摘便、下の世話は看護師の腕のみせどころ!

看護師は下の世話を、ただ出たものを始末する、というだけでなく、いかに患者さんの負担を軽く、スムーズに出せるか、ということから捉えます。

 

病棟のゴールドフィンガー

指の長い人は、便をかき出しやすそうと羨ましがれるのが、看護師の世界。摘便が上手な人は「病棟のゴールドフィンガー」という称号を与えられたりします。

摘便の準備は、熱いビニール手袋を2枚重ねでつけるところから。指に臭いが移らないためです。ここで失敗するとしばらく「う◯こ」の臭いが残ってしまいます。

次に

  • 直腸に便が降りてきているか、人差し指を肛門に入れて確認
  • 指に何も触れなければ、下剤を上げて翌日再トライ
  • 便が触れたら、コロコロと掻きだす

なんだか肛門が痛そうですよね。でも、摘便が必要な患者さんは、下半身の近くが鈍っていたり、肛門が弛緩していることが多く、さほど痛みを感じないようです。

 

摘便が必要な患者さん

摘便が必要なのは、脳卒中の後遺症などで、下半身にマヒがあるような患者さんがほとんどです。

便を出すためお腹に力が入れられないので、下剤を使うと、下痢状態(便が出っぱなし)あるいは、直腸内で固くなり肛門を塞ぐ状態になってしまうか、どちらかになります。

がんのターミナルケアでも、下の世話は大きなウェイトを占める。モルヒネを使っていると、程度の差は有っても、副作用として頑固な便秘に苦しむことが多いのです。

 

下剤か摘便か

始終下痢をしていると、局部がただれたり炎症を起こしたりするし、下の世話もそれだけ頻繁になって大変です。

少し便秘気味になるように下剤を調整し、摘便するほうが、ずっとお世話がし易いし、患者さんにとっても、下痢のことが気になったり、肛門が腫れて痛い思いをするよりも、不快な気分を少しの間我慢するだけのほうが、ましのようです。

看護師の都合で摘便を勧めているように見えるかもしれませんが、退院して在宅看護に移行した場合のこと、介護する人の負担を軽くすることも考えなければなりません。

単に入院中の快適さを提供するだけが、看護師の仕事では無いのです。

 

医師と看護師が逆転の下剤処方

本来、下剤を含め薬剤の投与は医師の指示が必要です。看護師自身の判断で下剤を飲ませてはいけません。

しかし、便通に関しては医師よりも看護師のほうが、遥かに患者さんの状態を把握しているので、看護師の指示で医師が下剤を処方するような状況も、無いとはいえません。

 

パブロフの犬

人間って、一度辛い思いをすると、苦痛という感覚も学習して、便秘で苦しんだことがあると、ちょっとお腹が張っただけでも、その時の苦しみが呼び覚まされてしまうもの。

頑固な便秘は体験しないで済めば、それに越したことはありません。しかし現実はそううまくは行かないんですよね。

 

ターミナルケアにおける下の世話

モルヒネの量が増えるにしたがって、便通も悪くなっていきます。最後には毎日のように摘便と浣腸を繰り返す。

便を出しきっても、患者さんがまだ浣腸をして欲しいとおっしゃることも多い。

特に腹腔内にがんが広がっているような時は、お腹が張った感じがずっとあるので、「便をすべて出しきれば、お腹がすっきりする」といちるの望みを託しているのです。

ムダとわかっていても、気が済むまで浣腸します。

このような時患者さんは、起きているときはいつも、便のことばかり考えているように思えて、やりきれない思いも感じます。

 

苦痛なく、自然に食べて出すこと

ターミナルケアでは特に、これが原点では無いかと考えています。

看護師が、自分のために快適な生活を送れるように努力してくれている。その姿勢が患者さんに伝わることが、患者さんの心に寄り添ってお世話するスタートではないかと。

残り少ない日を、便が出たとかでないとかだけの会話で終わってしまうのは、あまりにも悲しい。

 

まとめ

下を清潔に保つことは、感染防止など衛生上の問題もありますが、寝たきりの患者さんのQOL(生活の質)の向上にも繋がります。

眠れない、と訴えていた患者さんの、おむつ交換や陰部の清拭などにより注意を払うようにしたら、よく眠れるようになった、という事はよく有ります。

摘便は、身体に不要なものを排出するためにも重要ですが、患者さんのスッキリした、という感覚も非常に大切なのです。看護師自身もすっきりするんですよ。

看護師辞めたい、と言っていた新人ナースも、いつの間にか下の世話が楽しみになるのは、こういう達成感が得られるからかもしれませんね。

苦痛なく自然に食べて出すこと。それが摘便であり、下のお世話は看護師の仕事でも、重要な項目の一つです。

「ナースのひとりごと」~今日も1ページ