ナースほど誇れる仕事はありません

健康を大切にしたい方へ贈るひとりごと

人の死が怖い!新人ナースがそれでも看護師の仕事を続ける理由

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プリセプターをしていた頃のことです。担当した新人ナースから悩みを打ち明けられました。

「患者さんの死が怖いんです。いつかは誰もが死ぬ、ということはわかっているのですが、受け持ちの患者さんが亡くなったら、その後普通に仕事ができるかどうか不安で…こんな私が看護師の仕事が続けられるんでしょうか」

 

人の死が怖い

彼女に話したことは次のようなことでした。

人の死は誰だって怖い。むしろ死に対して、何の感情も持たないほうが怖い。

患者さんの死に直面し、怖いと思ったり、動揺したり、感情は揺れ動くのが当たり前なのでは。ただ、それが仕事に影響してはいけません。亡くなった方を思い、悲しむ時間が有っても良い。気持ちを押し殺さずに、悲しみを十分感じてから、前をむけば良い。

死は、運命のようなものだと考えて、その人が精一杯生きたことを受け止める。生まれてすぐに無くなった赤ちゃんも、高齢で眠るように静かに無くなった方も、何かしらのメッセージを残してくれます。

患者さんが亡くなった~その時彼女は

担当の患者さんが亡くなられた時、私の言葉を思い出して、家族や病院スタッフと一緒に悲しみ、病院での患者さんの在りし日を偲びつつも、必要な対応をテキパキとこなせたそうです。

「患者さんの最後のお顔が、私に微笑んでくれているようで嬉しかった。ご家族からも感謝の言葉をいたき、看護師の仕事がますます好きになりました」

死を怖り、ナースの仕事ができるのかと悩んでいた新人ナース、その成長を見るのは、本当に嬉しいものです。


その後数年して、自ら希望して緩和ケア病棟に異動し、終末期の患者さんの看取りを続けています。彼女とは今でも交流を続けていて、先日もこんな話をしてくれました。


若くして亡くなるということ

緩和ケア病棟は、がんが治療できる段階を超えた、終末期の患者さんばかりです。若い患者さんほど、病気が不意打ちで、進行も早く、医師も看護師もやるせない。

それでも患者さんたちが、みな穏やかに過ごされていたのが、心に深く残っています。

30代半ばの男性は、3年前に消化器系のがんを発症して、手術を何回も行ない、化学療法も繰り返したのですが、がんは進行し、治療が難しい段階に。

 

緩和ケア病棟を選んだ理由

度重なる手術で胃ろう、2つのストマ(尿路と排便)、多くのカテーテルが体に入っていました。創部からの浸出液が多く、処置にはかなりの時間がかかるので、家での療養は家族も本人も不安だったようです。

最後は家族に囲まれて、穏やかに過ごしたいと望まれ、緩和ケア病棟に入院されました。ご家族は毎日面会に来られ、良く一緒に外出されていました。

まだまだ食べたいものがある!

患者さんは、自分には「まだ時間があるような気がする」と良く話をされていました。その根拠が、「まだ食べたいものがたくさんあるから」なのでした。

家族が来られると、よく外出しては食べ物を沢山買ってきて、病院で食べているのです。食べる、と言っても消化管は既に閉塞しているので、口に入れたものは、噛んだ後に吐き出す。飲み込んでしまったものは、胃ろうから吸引して出します。

「この食べ方だからねえ。外食はできませんよ。持ち帰りしないと」「でもね、持ち帰りできないのもあるんだよね」と明るく笑いながら話してくれました。

「焼き肉。焼き肉が食いたいなあ!」

看護師の仕事を喜んでいただけた時

それから1ヶ月ほど後に、ご家族に看取られ、患者さんは亡くなられました。「焼き肉が食べたい」と言う若さで亡くなる。胸にずしりと応えた経験でした。

人の死は怖いことではなく、「旅立ち」と捉えたい。

看護師の仕事は、今ここにある生命のために、出来る限りのお世話を誠心誠意つくすこと。喜んでいただけた時、「穏やかに逝くお手伝いができて良かった」と思えます。

講演会の講師に招かれた

そんな彼女が、看護学校の卒業生、看護師の先輩として、記念講演会の講師としてデビューした時のことです

今までの講演では、言わば成功例のオンパレード。ポジティブで、モチベーションアップみたいな内容が多く学生たちもだんだん眠くなる、というパターンが多かった。

意外な展開に息を飲む

しかし、彼女は出だしからトツトツと、辛かった経験や、落ち込んでしまった時のことなどを、話し続けたのです。途中で、「でも、◯◯だったから乗り越えられました!」みたいな展開は一切なし。

その意外な展開に誰もが驚き、眠気も吹っ飛んで集中していました。辛いことが待っているのでは、と不安になったりする学生もいたでしょう。

 

焦る先生方と困惑

学生たちは、彼女に講演を依頼したA先生が責任を感じて、相当焦っているのでは無いかと、A先生の方をチラチラ見ています。先生方も内心穏やかでなかったのではないでしょうか。

講演終了後には、在校生の代表が感想を述べ、花束を贈呈することになっていますが、代表の学生は、なんと感想を述べたら良いのかわからないのでしょう、困った顔をしていました。

彼女が伝えたこと

公演時間終了間際、彼女は大きく息を吸い、ゆっくり会場を見渡してこう言ったのです。

今まで新人ナースとして未熟さ故に、失敗したり、辛いことばかりでした。辞めたいと思ったことも数えきれず。患者さんの死を考えると、怖くて不安で、看護師の仕事を続けられるかも悩みました。

でも、私は辞めていません。

今は、辞めたいとも思いません。続けたいんです。未だに失敗はするし、辛いし、落ち込む。でも辞めません。看護師の仕事には、何かある。具体的にこう、と言えないのがもどかしいのですが。

採血が上手く出来ない私を、「大丈夫よ、自信を持って、ほらヤレばうまくなるじゃない」と励ましてくれた「ベテラン」患者さんもいた。

患者さんとの毎日で、いろいろな感動がある。人としてスゴイ人生経験ができる仕事だと思っています。

 

まとめ

人の死は、看護師に限らず誰だって怖いもの。しかし、いずれは誰にでも訪れる。死に対して何の恐れも感情も持たないほうが、問題です。

患者さんの死に向き合った時、どう考えるのか。看護師自身も死と向き合っていかねばなりません。

死が怖いと不安に思っていた新人ナースが、落ち込んだり、辛い思いをしてもなお、看護師の仕事を続けたいと思えたのは、患者さんとの出会いから学ぶものが大きいから。

看護師は、得難い人生経験ができる仕事です。


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