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妊婦は栄養不足に注意!赤ちゃんが小さいと生活習慣病のリスクが高くなる

生活習慣病の発症リスクは、出産時に赤ちゃんが小さいと高まる!そんなびっくりの情報があります。「生活習慣病胎児期発症起源説」と呼ばれる学説です。妊婦の栄養不足は胎児の出生後の生涯健康にも深く関わっています。

妊婦は栄養不足に注意!赤ちゃんが小さいと生活習慣病のリスクが高くなる

今朝の朝日新聞オピニオンよりご紹介。昨日のエントリと関連性が深いので取り上げさせて頂きました。
早稲田大学理工学研究所研究院・福岡秀興教授と大阪大学大学院准教授・小原美紀さんのインタビュー記事です。福岡秀興教授は日本の「生活習慣病胎児期発症起源説研究」の第一人者で、各地での講演も数多くあります。

 

妊婦の栄養不足と胎児の生涯健康

2500g未満で生まれる赤ちゃんを低出生体重児と言いますが、将来糖尿病や高血圧などになるリスクが高くなる、と考えられています。産まれたときの赤ちゃんが小さい要因の一つに、妊婦の栄養不足が上げられています。

35歳からの妊活でも触れましたが、卵子が老化していると遺伝子の異常などが起こりやすく、赤ちゃんの健康にも影響が起こりやすい。栄養不足は卵子の老化にもつながります。

低体重児が生まれる要因としては、栄養不足の他にも、高齢出産、喫煙もあり、また帝王切開の場合にも低体重児の割合が高いこともわかっています。妊娠中の大きなストレスも赤ちゃんの大きさに影響します。

 

赤ちゃんが小さいと起こりやすいリスク

低体重児は、将来糖尿病、高血圧などの生活習慣病になるリスクが高くなる*と想定されていますが、小さく産まれた赤ちゃんは病気になりやすい、というわけではありません。

栄養不足など、の環境では病気になりやすい体質が作られますが、健康な生活を送っていれば病気になる可能性は、普通の大きさで産まれた赤ちゃんと、ほぼ変わりはありません。

病気になりやすい体質を持っているので、不健康な生活習慣、栄養のとりすぎ、過剰なストレス、運動不足などが加わると、病気発症のリスクが高くなるということです。

また日本では、産まれた赤ちゃんが小さいと、大人になって2型糖尿病になりやすい、低体重で産まれた女性は、妊娠糖尿病になりやすいと言う結果も出ています。

出生体重との関連が明確な疾患:虚血性心疾患、心筋梗塞、糖尿病、高血圧、メタボリック症候群、脳梗塞、脂質異常症、神経発達異常

*イギリスのデビッド・バーカーが示した「バーガー説」と呼ばれる説、その後、21世紀最大の医学学説の1つとも言われる「ドーハッド説」に発展した。(解説は記事最後に)

妊婦の栄養不足の背景にあるもの

飽食の時代に栄養不足、というのはなぜでしょうか。若い女性にある痩せ願望が大きな要因の一つです。肥満は妊娠中毒症や妊娠糖尿病のリスクが高まりますが、痩せすぎは栄養状態が良くないことが多いです。

やせた方々は受精した時点で、必ずしも栄養状態がよくありません。受精してから2週間は、遺伝子の働きを調整するメカニズムが激しく変化する重要な時期なのですが。

また、妊娠期間中は厚生労働省の食事摂取基準でも、付加すべき栄養素を推奨していますが、一般の女性が必要とする量にも足りない場合が少なくありません。

出産後すぐにもとに戻りたいという願望も強いのでは、と教授は話されています。

小さく産んで大きく育てることが推奨されたことも

産まれたときに体重が小さい赤ちゃんのリスク

ひところ「小さく産んで大きく育てる」ことが良いとされていた時期があります。

おなかの赤ちゃんが大きくなると、生むときに大変なので、なるべく体重を増やさない(胎児を大きくしない)で、産まれた赤ちゃんが小さいのは、たくさん飲ませたり食べさせたりすれば良い。という説です。

しかし、妊婦の栄養不足は、赤ちゃんが産まれてからの健康にも大きく影響することがわかっています。以前は妊婦さんの体重管理が厳しいこともありましたが、現代は行っていません。

BMIによりどのくらい増えても良いか、という体重は異なります。産婦人科の医師と相談して適切な体重コントロールをしましょう。

赤ちゃんが小さいとき注意してほしいこと

2500g未満で産まれた低体重児は、乳児期に急に体重を増やさないようにすることが大切です。産まれたときの体重が少なくても、大抵の場合は1年ほどで平均に追いつきます。

早期急激に摂取カロリーを増やすと、DOHaDの観点からかえって健康に良くありません。

赤ちゃんが小さい

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厚生労働省「出生数及び出生時体重2500グラム未満の出生割合の推移」
平成29年我が国の人口動態 p11 厚生労働省(www。mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf)

妊婦の体格が大きければ赤ちゃんも大きく生まれるのが普通で、女性の体格は良くなっているのに、近年出生時の赤ちゃんが小さい傾向になっているそうです。

2500g未満で生まれる赤ちゃんの割合が年々増加していて、ここ数年は横ばい状態ではあるものの、平成27年度、男8.4%、女10.6%と先進国の中でも高く、日本は特異です。

上記画像ではわかりにくいので、平成21年度までのグラフも参考まで。

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生活習慣病胎児期発症起源説

小さく生まれると、将来糖尿病や高血圧などになるリスクが高くなると想定されます。

バーカー説 

30年ほど前、英国のデビッド・バーカーが、疫学研究に基づいて示した『出生体重が小さいと心筋梗塞(こうそく)リスクが高くなる』という説。その後多くの研究で、体内の低栄養状態に胎児が順応し、出生児に赤ちゃんがとても小さいと、成長したときに肥満でなくても生活習慣病になりやすい」ということがわかりました。

ドーハーッド(DOHaD)説 
バーガー説から発展した説。『受精時、胎児期、乳幼児期という人生の早期に低栄養やストレス、環境化学物質など劣悪な環境に暴露されると、生活習慣病になりやすい体質が形成される。そこに、望ましくない生活習慣が加わると病気が発症する。病気は2段階を経て発症する』

胎児期から乳幼児期までのいろいろな環境因子が、成長後の健康や様々な疾病の発症リスクに影響を及ぼすという概念です。親から子の1~2世代で伝わる遺伝情報は変わらず、遺伝子の発言の仕方が変わり、胎内で低栄養状態であるとそれにあわせたプログラムが現れます。

ここまで参考: 早稲田大学理工学研究所研究院 福岡秀興教授(インタビュー記事、講演等より)

経済学の分野でも危惧される出生体重

経済学の分野で1990年代後半以降、注目を集めた研究に「出生時の健康状態、特に出生体重が成人後のさまざまな状況を左右する」というものがあります。主に先進諸国で、それを支持する結果が報告されてきました。「成人後の状況」は健康状態だけでなく、教育成果や雇用状況、所得、社会階層などを含んでいます。

出生時の低体重が成長後の教育成果や生産性に影響する可能性があるという事実から目を背けず、社会で認識を共有すべきです。出生体重を低下させない、あるいは小さく生まれたことによって起こるかもしれない負の影響を最小限にする、ということが大切なのです。放置すれば個人だけでなく、生産性の低下という形で社会全体に波及する可能性があります。
出典:大阪大学大学院准教授・小原美紀さん(インタビューより)

教育の格差が問題となっていますが、妊婦の栄養不足、乳幼児期の環境も将来の状況を左右する可能性もあるかもしれない、という事実も残念ながら見えてきているようです。

 

まとめ

栄養環境は格段に良くなっているのに、栄養不足の妊婦さんが増えている、という状況。また産まれてきた赤ちゃんや小さい子どもたちの栄養環境も格差が広がりつつあるのも現実です。

病気になりやすい体質に産まれても、その後の環境次第で病気の発症リスクは変わります。

子作りを考えたらまず、特に女性は、赤ちゃんが小さい低体重児になることを防ぐために、健康であることが重要です。そのためにはどんな生活習慣を送れば良いのかを考える必要があります。

妊婦の栄養不足が病気になりやすい低体重児の出産に、大きく関わっていることをしっかり理解してください。

 

参考

小さくなる赤ちゃん(インタビュー) 朝日新聞2017年3月28日

23年度香川大学瀬戸内圏研究センター学術講演会 平成23年10月19日 香川大学