ピロリ菌と塩分が、胃がんの発症に大きく関わっていることを前回お伝えしました。塩分と言えば高血圧とも深い関わりがあります。高血圧の予防・改善にはまず減塩!薬に頼らないための1日1gからの減塩のコツです。
減塩が血圧を下げるキーポイント
塩分のとりすぎは高血圧を招き、肥満と合わさるとメタボリックシンドロームのハイリスクに。
高血圧の治療では、食事の見直しや適度な運動などの生活習慣の改善が欠かせません。特に重要なのが減塩です。
塩分のとりすぎは血液中の塩分濃度が高くなり、血圧が上がって動脈硬化が進行し、脳梗塞や心筋梗塞などを発症するリスクが高まるのです。
それを防ぐために血圧を下げることが重要であり、減塩がそのキーポイントとなります。
生活習慣の改善で高血圧の改善が思わしくない場合、薬物療法が行われますが、できれば薬に頼らないで改善したいものです。
目標はまず減塩1g
減塩が重要なのはわかるけれど…高血圧は重症になるまでほとんど症状が現れません。そのため放置しがちですし、塩分を減らすと食事が味気なく感じたりするので、なかなか減塩を続けることも難しい。
また、高齢者や腎臓の機能が低下している人などが、急に減塩すると「脱水症状」などで体調が悪化することもあります。
無理なく減塩するために、まず一日1gを目標にして、少しずつ食塩の摂取量を減らしていきましょう。
1日1g減塩の効果
高血圧のある人、65歳以上の人が一日1gの減塩を行うと、収縮期血圧が1.2~1.9mmHg下がるという海外の研究発表もあります。
また、日本全体で収縮期血圧を1mmHg下げられると、年間の脳卒中や循環器疾患が原因の死亡者数が大きく減ると試算されています。
最初は一日1g減らすことを目指して、最終的に6g未満まで減らすことができれば、更に大きな効果を期待することが可能となります。
減塩のコツ
外食や加工食品をなるべく避けるなど、よく言われる減塩のコツは、最後に日本高血圧学会のパンフレットから引用してありますので、参考にしてください。
減塩は手間がかかる、と思われがちですし、現代社会で外食を避けることは難しいでしょう。しかしちょっと工夫することで減塩は可能です。
家庭で調理する際も定番の減塩のコツを、状況に応じて取り入れていきましょう。
体内から塩分を排出させる栄養素を多く含む食品も、積極的に取るようにしましょう。
急に塩分を減らした味付けにすると、物足りなさから減塩が続かなかったり、他の調味料を足したりしてしまうこともあります。
少しずつ薄味にしてくのがポイントで、1食まるごと減塩するのではなく、1~2品だけは少し濃い目に味付けるなど、1食内の味付けにメリハリをつけるのも減塩継続のコツです。
外食での減塩のコツ
一日に取る塩分の70%~80%が外食や加工食品に含まれているとされます。外食時の減塩のポイントは以下の2つに注意してみましょう。
- 食事の一部を残す
- 調味料を減らす
例
醤油ラーメン(食塩7.3g)
- スープを半分残すと約2.2gの減塩
- 醤油ラーメンの塩分の殆どはスープに含まれます
- スープを半分ほど残すだけで、塩分を約3割減らせます
幕の内弁当(食塩2.8g)
- 梅干しや漬物を残すと約0.7gの減塩
- 梅干や漬物などの食品は塩分を多く含みます。
- これらを残すだけで簡単に減塩できます。
握り寿司(食塩4.6g)
- 寿司ネタの箸に少し醤油を付けて食べると約1.9gの減塩
- 超湯をたっぷりつけると食塩量は4.6gになります。
- 寿司ネタの箸に少しつけることで小さじ2杯分の醤油を減らせます。
とんかつ(食塩3.1g)
- 小皿のソースに少しずつ付けて食べるとやく1gの減塩
- とんかつの食塩3.1gの半分は、ソースに含まれます。
- とんかつにかけずに小皿にとりわけ、少しずつ付けて食べると減塩につながります。
加工食品の塩分量
加工食品の食塩量はおもったよりも多いことがあります。栄養成分表示をチェックして塩分量を確認する習慣を付けましょう。
加工食品の成分表示では現在経過措置として「ナトリウム」「食塩相当量」の2種類の表示が混在していますが、2015年4月に施行された食品表示法で、原則として2020年までには食塩相当量で表示されることになります。
推奨値は食塩量となっているのに、ナトリウム表示ではわかりづらいことから変更されました。ちなみにナトリウム表示を食塩相当量に換算するには、以下の計算式を用います。
ナトリウム量(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g)
家庭で調理する際の減塩のコツ
外食や加工食品をなるべくさけ、素材から調理することで塩分を大きく減らすことができます。だしや調味料などの工夫が減塩のポイントとなります。
- だしを濃く取る
- 塩分を含まない調味料を活用する
例
味噌汁(食塩2g)
- だしを濃くとり、味噌の量を半分にすると約1gの減塩
- 味噌汁や煮物などの和食は、だしの風味を楽しむことができるものが多いので、だしを濃い目に摂ると塩分が少なくても美味しく食べられる。
- 又、具だくさんにするのも良い。
塩分を含まない調味料の活用
- サラダにはドレッシングや塩を使わず、酢やレモンなどの酸味を使うと良い。
- 焼き魚にもレモンやスダチなどの柑橘類で香り付けして減塩
- 焼き鳥はトウガラシなどの香辛料を使えば、塩を控えめにしても美味しく食べられる
血圧を下げる天然の薬
以下の成分を多く含む食品は、血圧を下げる天然の薬と言われています。その成分とは血管を拡張させて血圧を下げる働きや、体内の塩分を体外に排出する働きのある
- カルシウム
- マグネシウム
です。
これらを多く含む食品を積極的に摂り、体内の余分な塩分を排出しましょう。
- カルシウムを多く含む食品 牛乳などの乳製品、小松菜など
- マグネシウムを多く含む食品 納豆、ひじき、ごまなど
- カリウムを多く含む食品 りんご、ほうれん草、とまと、バナナなど野菜や果物に多く含まれる。ただし、腎臓病などがある人は、体内にカリウムが溜まりやすいので医師に相談することが大切です。
一日あたりの平均塩分摂取量の目標値と推奨値
日本は世界的にも食塩摂取量の多い国の1つです。厚生労働省「平成25年国民健康・栄養調査結果の概要」によると一日あたりの平均塩分摂取量は
- 男性 11.1g
- 女性 9.4g
です。
日本高血圧学会では、一日6gを推奨値としており、厚生労働省の目標値は男性8g、女性7gです。ちなみにWHOの基準は更に厳しく、一日5gが目標値です。
まとめ
減塩を宣告された方が異口同音におっしゃるのが、「美味しくない」「味気ない」という感想。でもね、多くの場合それは必要以上に人工の味付けをしていたからなんですよ。
薄味は慣れます!辛いのは最初だけです。
少しずつ減塩して薄味に慣れてくると、味覚が敏感になり素材本来の味や食感などをより楽しめるようになります。そういう意味でも和食ってすごい、と思います。
食事を楽しみ、美味しく減塩を続け、高血圧の予防や改善を目指しましょう。
参考: 減塩のコツと塩分の多い食品・料理
- 新鮮な食材を用いる 食材の持ち味で薄味の調理
- 香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用する コショウ・七味・生姜・柑橘類の酸味を組み合わせる
- 低塩の調味料を使う 酢・ケチャップ・マヨネーズ・ドレッシングを上手に使う
- 具沢山の味噌汁にする 同じ味付けでも減塩できる
- 外食や加工食品を控える 目に見えない食塩が隠れている
- 漬物は控える 浅漬けにして、できれば少量に
- むやみに調味料を使わない 味付けを確かめて使う
- 麺類の汁は残す 全部残せば2~3g減塩できる
(学会推奨の減塩のコツ、なんですがもう少し工夫がほしいかなあと思ってしまいました^^;)
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