顎関節症は軽いものも含めると、二人に一人は経験すると言われているポピュラーな病気です。しかし何箇所もの医療機関を回っても改善しないことも多い。最近わかってきた原因の一つがTCHです。TCHとは?
癖も原因!顎関節症の症状と治療
顎関節症は、顎の痛み、開口障害、関節音などが主な症状です。しかし、何箇所もの医療機関を回って、噛みあわせの調整、歯を削るなどの治療を繰り返しても、改善しない患者さんも少なくありません。
- 口を開ける動作に伴って顎の関節や筋肉が痛い
- 途中までしか口が開かない(指2本分位)
- 顎がカクカク音がする
音がするだけの場合は、特に治療の必要がありませんが、痛みや開口障害がある場合は治療が必要です。
治療法の変化
これまでは、顎関節症の要因は、噛み合わせの悪さが主なものと考えられていたので、噛み合わせの調整が中心の治療でした。最近は、
- ストレス
- 歯ぎしり
- 癖(TCH)*詳しい説明は後述
などの要因も重なって、その人の筋肉や関節の耐久力を超えると、顎関節症を発症すると考えられています。治療も要因のうち、大きなものに合わせて行うことが大切です。
噛み合わせが大きな要因である場合は、噛み合わせの調整で改善できますが、そうでない場合には、噛み合わせを調整しても効果は期待できません。
最近はTCHという癖が要因の場合が多いことがわかり、TCHチェックをすることで適切な治療を受け、改善するケースが増えています。
顎関節症治療のガイドライン*では、初期治療として噛み合わせの調整は推奨されていません。一度歯を削ってしまうと、もとに戻すことが出来ないためです。
健康保険が適用される治療
- マウスピース(スプリント)を像着して、正しい噛み合わせをつくり、筋肉の負担を減らす
- 鎮痛薬による痛みの軽減
です。
ストレスに対する、リラクゼーション法の指示や、緊張を緩和する薬がつかわれたりします。
TCHの矯正は健康保険適用外で、治療を受けられる医療機関も限られていますが、自分でも行うことができるので、試してみましょう。
TCH(Tooth Contecting Habit 歯が接触する癖)
最近注目されている顎関節症を起こす要因が、TCHという癖です。
無意識のうちに一日何時間も歯を接触させているので、それだけで咬筋や側頭筋などの筋肉、関節に負担がかかかるため、顎関節症が起こりやすくなると考えられています。
TCHの矯正は保険適用外ですが、臨床心理学で使われる行動療法による治療は、3つのステップで、自分で行うことも出来ます。
TCHの矯正3つのステップ
- 歯が筋肉疲労を起こすことを自覚
- くせに気づくためにメモを活用
- 上下の歯が触れた瞬間に離す
この方法を自分で行っても、症状が悪化することはありません。個人差はありますが、早ければ2~3習慣で効果が見られます。効果がない場合は、医療機関を受診してください。
尚、口を動かさなくても顎の痛みが合ったり痛みが強くなる場合は、顎関節症以外の病気の可能性もあります。早めに受診してください。
歯が筋肉疲労を起こすことを自覚
「上下の歯を軽く接触させて、離す」をおこない、筋肉の変化を感じることで、無意識の行動が自分を傷つけていることを自覚する。
くせに気づくためにメモを活用
- 「力を抜く」、「リラックス」「歯を離す」などとメモ用紙に書く
- 自宅や職場などの目のつく場所にはる
- メモを見たら一回力を抜く
- 徐々にメモを見ただけで脱力できるようになる
- 1.鼻から大きく息を吸い、方に力を入れる
- 2.口から一気に息を吐き、肩の力を抜いて落とす
上下の歯が触れた瞬間に離す
歯が接触すると気づくようになり、だんだん接触すると、条件反射で無意識に離せるようになる。
顎の痛み、対処法
鎮痛薬の利用、リハビリトレーニングを行ないます。
トレーニングのポイントは「痛みを怖がらず、痛みを感じるところまで口を開ける」ことです。
- 繰り返すことで徐々に口が開くようになる
- 関節周囲の血流が改善
- 痛みがやわらぐ
無理のない範囲で行ないましょう。
TCHとは
本来、上下の刃が接触するのは、
- 咀嚼(そしゃく)
- 嚥下(えんげ)
- 会話などを行う時
に限られており、合計しても一日約20分程度でそれ以外は、唇を閉じていても、普通上下の歯は接触していません。TCHがあると、何時間も歯が接触しているのです。
TCHチェック
- 姿勢をただし、正面を向いて軽く目をとじる
- 唇を軽く閉じる
- 上下の歯が接触しないように軽く離す
口の中を観察します。舌や頬に歯が押し付けられて歯の跡が付いていると、TCHがあります。
TCHが必ず顎関節症を発症するわけではないですが、ある調査では、顎関節症の患者さんの約8割にTCHがありました。
顎関節の構造は?
口を開け閉めするときには、いろいろな筋肉と顎関節が複雑に動き、中でも特に重要なのが、咬筋、側頭筋などの筋肉と、関節内部の関節円板の働きです。
緊張や疲労がこれらの筋肉に起こったり、関節円板の変形などで顎関節症の症状が現れます。
まとめ~歯を削る前にTCHチェック!
口が開かない、顎が痛いといった症状がある、顎関節症と診断された場合、手術や歯を削る治療を受ける前に、まずはTCHを疑ってみてください。
顎関節症の治療で、手術が必要なケースは数千例に一例と、ごくまれです。
TCHがある場合は、まず自分で矯正方法を試してみましょう。
効果が現れない場合や、顎関節症以外の病気が疑われる場合(口を動かさなくても痛い、痛みが悪化したなど)は早めに医療機関へ。
参考: 顎関節症患者のための初期治療ガイドラインリーフレット
「Anのひとりごと」~今日も1ページ