血管の老化には、コレステロールや中性脂肪が関わっています。今回は血管の老化を進める糖化、AGE老化や、第3の血管老化成分と言われるホモシステインと葉酸、血管年齢若返りの食材などについてお伝えします。
血管の老化に関わるAGEとホモシステイン
前回お伝えしたように、腸内環境の悪化で腸が老化すると、様々な病気の要因となりますが、血管の老化も動脈硬化や脳梗塞と言った深刻な病気のリスクが高まります。
また、血管の老化によりしわが増えたり肌の艶がなくなったりして、老け顔の原因にも。老け顔の人は早死のリスクが高い、という怖い報告も。
健康と若々しさを保つために、AGE老化の仕組みや予防法、また、ホモシステインとは、血管年齢の老化を防ぐ葉酸について見ていきましょう。
老け顔とAGE老化
同じ年齢でも見た目年齢が全く違うことが多いですが、老け顔と血管年齢には因果関係があることが報告されています。
老け顔の人ほど血管の老化が進んでいる傾向にあることがわかりました。
血管と見た目の老化には、AGEという悪玉物質が深く関わっていることが解明されてきています。更にAGEは、早死のリスクにも深く関わっていることもわかって来ました。
AGE:Advanced Glycation End-product(終末糖化産物)たんぱく質と糖が加熱されてできた物質のこと
早死のリスクを高める糖化、AGEとは?
糖分を摂りすぎると血管中に溢れ出し、体を作るはずのたんぱく質と時間をかけて少しずつ結びつきます。
そして体温で熱せられて糖化(グリケーション)が起きAGEに変性し、たんぱく質本来の機能を奪います。毒性が強く、体の老化を進める原因物質とされています。
血液や栄養分、老廃物を運ぶ血管は、この変化の影響を最も受けやすい。糖分と結合した血管のたんぱく質はAGEに変化し、血管の柔軟性を奪って動脈硬化などの重大な症状を引き起こします。
固くなった血管は伸び縮みできないために高血圧症状を引き起こし、その高血圧がまた血管壁を傷つけたりします。
そこにコレステロールなどが付着して、やがて心筋梗塞などの命にかかわる状況を作り出すことになります。
このようにAGEが体内にたまっている人は、老け顔になるだけでなく、早死のリスクも高いことになります。
老け顔、AGE老化となるポイント
- 目尻のしわ
- 下まぶたのしわ
- ほうれい線
- 口元のゆるみ
- 顔全体のたるみ
コラーゲンがターゲット!
コラーゲンは若さを保つ大切なたんぱく質ですが、AGEに一番狙われやすいたんぱく質です。コラーゲンは体の隅々にあります。
例えば皮膚(真皮)の70%、血管の20%、骨の30%がコラーゲン!
糖分に直接触れる血管が問題なのは当然ですが、血管で運ばれた糖分は、全身にあるコラーゲンと結合してAGEを作ろうとします。
全身に悪玉物質AGEが溜まることが、老化の原因であるとわかってきました。コラーゲンに増えすぎた等が付着すると、アマドリ化合物ができ、これに更に等が結合したものがAGEです。
AGEはしわ、たるみなど肌の老化を進めるだけでなく、動脈硬化、脳卒中、がん、心臓病、糖尿病、骨粗しょう症、白内障、アルツハイマーなど、重大な病気の発症や、症状を悪化させます。
AGE対策
血管年齢が高くなる原因は2つあります。
- 血糖値が高い 糖分のとりすぎでAGEを作る糖分が血液中に多くある状態
- AGEを含む食材を食べる
ほとんどの食材には微量ですがAGEが含まれています。問題は同じ食材でも調理法によりAGEの量が大きく変わること。例えばアメリカの調査ですが鶏肉の調理別AGE量は
- ゆでる 1
- 網焼き 6
- 上げる 10
でした。調理法が高温で時間が長くなるほど、食材中のたんぱく質と糖分が結びつきやすくなり、AGEができやすくなります。
更に脂が加わるとAGEの生成が促進されるとされています。
飲食物に含まれるAGEの一部は消化の段階で分解されますが、約7%が体内にとどまっているとされます。
AGEから体を守り、血管の老化を防ぐポイント
AGEから体を守り、血管の老化を防ぐ一つの対策として、以下の3つのポイントをご紹介。
AGEから体を守るポイント
- とらない 長時間熱を使う料理をなるべくとらない
- ためない 余分な糖分が体に残りにくい食べ方をする
- 作らせない 血糖値を高くしないようにしてAGEをつくらせない
とらない
焼きすぎ、炒め過ぎに注意します。調理時間の短い料理を作り、油もなるべく避けます。焦げ目のある料理はAGEが多く含まれるので注意しましょう。
ためない
良く言われるのは野菜から食べ始めること。野菜を先に取ると、食物繊維が糖分の吸収を遅らせるので、AGEが溜まりにくくなります。
作らせない
血糖値は食事開始から約1時間でピークになります。すぐに体を動かすことで早めに下がります。食後の小休止は、血液中に糖分があふれかえることになるので注意しましょう。(洗い物をするなど、食後10分ほど体を動かします。「運動」ではありません)
※これは一つの例です。食事は食べる順番や調理法だけにこだわらす、バランス良く摂ることが基本です。
葉酸とホモシステイン
葉酸と言うと妊活や妊娠中に良い、と話題になっている栄養素で、厚生労働省も食事だけでなく、サプリメントでの摂取を推奨しています。
葉酸はビタミンB群の一種で、貧血予防や胎児の栄養補給のために利用される栄養素です。血管を守る栄養素として注目されています。
葉酸は血管の老化を進めるホモシステインを、無害なアミノ酸(メチオニン)に戻す働きを持っています。葉酸が不足すると、知らず知らずのうちに動脈硬化が進み、更に血管の老化が進むことになります。
ホモシステインとは
肝臓でアミノ酸からできるホモシステインという悪玉物質があり、血管の老化を進めます。ホモシステインはコレステロールや中性脂肪に次ぐ、第3の血管老化成分とも言われています。
食事で摂ったたんぱく質は、腸でアミノ酸に分解・吸収され必須アミノ酸の一種、メチオニンが作られます。その後メチオニンは肝臓でホモシステインに変化します。
食事から十分な葉酸が摂れていれば、肝臓の中で葉酸がホモステインを無害なメチオニンに戻すのですが、葉酸が不足しているとホモシステインが増えすぎることに。
増えすぎたホモシステインは、血液中に入って活性酸素を発生させ、血管内皮細胞という血管壁内側の表面の細胞を傷つけます。
そこにコレステルールが付着して、血管壁の中にたまり、血管内腔を狭め、血管が硬くなって柔軟性が失われ、動脈硬化につながります。
葉酸不足になりやすい生活
葉酸を多く含む食材は
- 菜の花
- 枝豆
- ほうれん草
- グリーンアスパラガス
などの野菜やのり、きのこ類、お茶、レバーなど
- 肉が中心で野菜(特に緑の野菜)、きのこや海藻ををあまり食べない
- 外食が多い
- 朝食抜きが多い
- 日常的にストレスを感じている
などの生活習慣があると、葉酸不足の危険性があります。
葉酸を多く含む食材とサプリメントが推奨される背景
野菜やきのこ類などに多く含まれていますが、ライフスタイルの変化や食事の欧米化などで葉酸不足の人が多い傾向にあります。
現代の食生活では、かなり意識しないと十分に葉酸をとることは難しいのです。
しかも日本人は約15%が遺伝的に体内で葉酸を活用する能力が低く、高齢になると食材に含まれる葉酸を、十分に吸収できなくなると言われています。
厚生労働省がサプリメントからも葉酸の摂取を進めているのは、このような背景もあります。
葉酸の積極的な摂取で血管年齢若返り
埼玉県坂戸市では平成18年から「坂戸市葉酸プロジェクト」を展開していますが、その効果は目を見張るものがあります。
日本では添加物、というと抵抗がある場合が多いですが、世界約60カ国で葉酸添加が行われています。坂戸市では葉酸添加食品を開発し、学校給食にも取り入れたり、と積極的に葉酸の摂取を工夫しています。
女子栄養大学坂戸葉酸プロジェクトチームのRich葉酸レシピ集では緑色野菜(素材)ガイド&レシピが紹介されています。参考にしてください。
参考: 葉酸Rich レシピ集 坂戸市
米ハーバード大学公衆衛生学のエリック・リム助教授は、葉酸を696μg、ビタミンB6を4.6mg摂取している人は、両ビタミンが少ない人よりも、心筋梗塞などの冠動脈疾患リスクが半分に減っているとの研究結果を発表しました。
出典:ビタミンB6、ビタミンB12のサプリメントは虚血性心疾患の予防に有効という報告
腎不全で蓄積するホモシステインに葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12は無効?
出典:腎薬ニュース第4号(2007年月;2012年1月加筆修正)熊本大学薬学部臨床薬理学分野 平田純生
まとめ~見た目の若返りにも!AGEから体を守る
血管の老化を防ぐことで、見た目の若返りだけでなく健康を維持することにも貢献します。
AGEから体を守る3つのポイントを心がけ、葉酸を含む食材を積極的に摂って健康で長生きしましょう!
「Anのひとりごと」~今日も1ページ