動脈硬化の初期段階である内皮機能障害には、血管の老化を防ぐ物質NOの分泌が関わっています。血管をしなやかに保つNOの働きと、NOを増やす運動についてお伝えします。
NOとは
NOとは一酸化窒素のことで、しなやかな血管を保つ働きをしています。NOは血管の中膜にある平滑筋に作用し、その結果平滑筋の緊張が緩んで血管が広がります。
血管の内皮細胞が血液の流れが早くなると、その刺激を受け産生放出する、血管拡張物質です。
NOは体外から体内に入ると有害ですが、内皮細胞が分泌するNOは
- 血管の平滑筋を緩めて血管を広げる
- 血管壁の傷を修復する
- 血液の凝固を押さえて血栓ができるのを防ぐ
など血管の老化を防ぐ働きをします。
血管の老化で最も怖い動脈硬化の始まりは、動脈硬化の初期段階である内皮機能障害。NOが不足すると血管が固くなり、血管が拡張しにくくなり、血圧が高くなります。
NOは運動で増やすことができ、内皮細胞の機能を改善することが可能です。
運動でNOを増やす
血管の一番内側にある内皮細胞は、血管の拡張に関与する物質NO(一酸化窒素)を産生し放出します。血管のしなやかさを保つNOの分泌が減り、内皮機能障害が生じます。
- 動脈硬化の治療薬として使われる薬スタチン
- 高血圧の治療薬ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素)、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
には、NOが出るように保つ作用があります。
薬を飲まなくてもNOを出すのが、運動です。例えば骨折して動かさない腕と、健康な方の腕のNOを比較すると、骨折した腕ではNOの産生、内皮細胞の機能が低下しています。
運動を行うとNOが放出され、内皮機能の働きを良くすることがわかっています。
動脈硬化の予防、進行を防ぐには、血管の老化を早期に捉え、食事の改善とともに、運動を続け内皮細胞の機能を改善することが大切です。
血管の老化を早期に発見するFMD検査
FMD検査(血流依存性血管拡張反応検査)とは、動脈硬化を起こす血管の老化を早期に発見する検査です。
止まっていた血液を急に流すときに、血管がどれだけ広がるかを測ります。FMD検査は健康保険を使うことができます。
FMDの検査方法
- 安静時の血管の直径を超音波で測る
- 腕にカフを麻紀5分間圧迫してから緩める
- 超音波で血管の直径の変化を測定
健康な血管の内皮細胞は、カフを緩めたあと血流が早くなるとNOを放出し、血管が拡張します。動脈硬化の初期段階である内皮機能障害があるほど拡張しなくなり、血圧が高くなります。
NOを増やす運動の種類と目安
有酸素運動を行うとNOが増えることがわかって今会う。ウオーキングなどの運動を一日30分間以上、できるだけ毎日続けるようにしましょう。
まとめて30分でなく、朝晩15分づつの散歩など、分けてもOKです。
動脈硬化が進み心筋梗塞や脳卒中になる前に、生活の改善を行って血管の老化を予防することが大切です。
運動の例として、誰でも自宅で簡単にできる2つの運動をご紹介します。
立ち上がり運動
大きな筋肉を使うとより効果を得ることができます。身体の中で一番大きい筋肉は大腿部です。日常生活でもよく使う動作、立ち上がり運動で全身の血流を良くしましょう。
- テーブルに手をついた状態で立つ
- 手をついたままゆっくり座る
- ゆっくり立ち上がる
- この動作を繰り返す
テーブルと椅子は安定しているものを使い、周りに障害物がない場所で安全を確保して行いましょう。
ベンチステップ運動
踏み台昇降運動、スローステップ運動などの言葉を聞いたことがあると思いますが、15cm~20cmくらいの台を使用して昇り降り(ステップ)をする運動です。
- ステップ台の正面に両脚を揃えて立つ
- 右足を台に乗せる
- 左足も乗せ、台の上に立つ(背筋、ひざを伸ばす)
- 右足を台から下ろす
- 左足を台からおろす
- 次に左足から同じ動作を繰り返す(5~8)
- これを1セットとして10セット繰り返す
1、2、3、4、とカウントしながらリズミカルに行うとやりやすいです。左右の足を均等に鍛えるため、左足から乗った時は左足からおろします。
台から足がはみ出ないように中央にのり、背筋を伸ばしてひざをまっすぐに伸ばして立ちます。
※右足のサイクル(1~4)を10サイクル繰り返したあと左足のサイクル(5~8)を10サイクル繰り返しても良い。
ステップ台を平で滑らない場所に置いて行います。15~20cmほどの高さの台や家の階段を利用しても大丈夫ですが、転倒に注意して行ってください。
ステップ台は大型のホームセンターやスポーツ用品店、介護用品店などで購入できます。ネット通販でも販売しています。(参考までにAmazonのリンクを貼っておきます)
運動の目安
運動の目安は
- 1分間に20サイクル程度
- ややきついと感じるまで
- 1日に合計で30分間
です。一度のまとめて30分でなくても大丈夫です。無理をせず続けられるペースで行うことが大切です。
心臓への負荷があるので、心臓病のある人は医師と相談してください。腰やひざに痛みを感じた場合はすぐにやめ、医師に相談しましょう。
この他おすすめの運動は
- 速歩
- スロージョギング
- サイクリング
- 水泳
などです。
参考:動脈硬化の病気を防ぐガイドブック 日本動脈硬化学会
まとめ
血管の老化を防ぐためには、食事、運動、生活習慣が大切です。運動は血管の老化を防ぐNO(一酸化窒素)を増やします。
動脈硬化の予防、進行を防ぐためにもFMD検査で早期に血管の老化を捉え、運動でNOを増やしましょう。食事の改善、運動で血管の老化を防ぐ!
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