腎機能低下から人工透析を防ぐには、食事が重要な要素です。腎臓に悪影響を及ぼす主な原因は食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足。今回は「もったいない」とつい食べてしまう危険性をお伝えします。
食べ過ぎと人工透析
内蔵肥満(メタボ)、高血圧、高血糖、は腎機能低下の大きな要因です。腎臓は機能が低下しても頑張って働いてしまうので、気づいたときには人工透析の一歩手前、というケースも少なくありません。
早く気づいて治療を開始すればするほど、体も費用も負担は軽くなります。それには前回お伝えしたクレアチニン検査で腎機能を調べることが有効ですが、今回は食べ過ぎと腎機能低下の関係について少し考えてみましょう。
特に女性に多い「もったいない食べ」。女性は50を過ぎても太り続けると言うデータがありますが、家族の食事の準備をする立場にある場合が多いことが、余り物をついたべてしまうのも大きな原因です。
食べ過ぎは生活習慣病、内蔵肥満(メタボ)、高血糖、高血圧を招く要因にもなります。
食べ過ぎによる糖尿病性腎症患者の急増
もったいないと残り物を食べてしまうのは、逆に大きな家計の負担に繋がる可能性があることを考えてみましょう。
実は近年ちょっとした食べ過ぎが大きな原因の、糖尿病性腎症の患者さんが急増中です。
出典:日本透析医学界「図説 我が国の慢性透析療法の現況2015年12月31日現在」
1998年に糖尿病性腎症が原因で透析療法を受けている人は、慢性糸球体腎炎で透析を受けている人を追い越し第一位となってから、増え続けています。
もったいないは逆効果
料理が余ってしまい、捨てるのはもったいない、と食べてしまうのが女性がいくつになっても太る一つの要因ですが、肥満は生活習慣病のスタートであり、腎機能の低下の大きな要因でもあります。
食べすぎることで血糖値があがり、糖尿病性腎症のリスクが高まります。自分の力で体内の老廃物をろかしてくれる尿を作れなくなると、透析を受けなければ行けません。
透析は週3回、4時間ずつ血液を機械で濾過する作業を死ぬまで受け続けることになります。
その時間のもったいなさを考えてみてください。
また、公的な医療費助成*を受けても毎月1万円から2万円がかかります。今まで自分の体が知らない間にタダで働いていてくれたことに、これだけの時間とお金がかかるようになるのです。
*透析を受けた場合の費用負担は、医療費の公的助成制度が確立しています。助成を受けるには手続きが必要です。
医療保険の長期高額疾病(特定疾病)
高額療養費の特例として(一般の高額療養費とは異なる)により保険給付され、透析治療の自己負担は1か月1万円が上限となります。(一定以上の所得のある人は2万円が上限になります。外来・入院・薬局等、それぞれでの負担となります。また、入院時の食事代は自己負担です。)
食べ過ぎと内臓脂肪と血糖値
食べ過ぎは肥満の元。おそらく誰もが認識していることですね。肥満は生活習慣病のスタート地点でもあり、高血圧などと合わさるとメタボリックシンドロームとなり、重篤な病気のリスクも高まります。
腎機能低下も内臓脂肪が出発点、と言って良いほど食べ過ぎと大きく関わっています。もったいないも積もり積もると逆効果となってしまうことを肝に命じてください。
カロリーを摂りすぎると血糖値が上がります。その結果増えすぎた糖が腎臓を痛めてしまいます。
もったいないから、と食べた物が脂肪に変身し、糖尿病性の腎臓病で透析をまねいてしまうのです。日々の尿を作るためだけに毎月2万円ほどの自己負担金を払い続け、週に2~3かい、4時間ずつの拘束時間が続きます。
腎臓の仕組みを確認
腎臓は体内で生じた老廃物や毒素だけをろ過し、尿として体外に排出する働きをになっています。
一方で、たんぱく質や糖等体に必要なものは血液中に保ち体内のバランスを保っています。ろ過され適齢になった血液は再び全身を循環する仕組みになっています。
腎機能が低下すると、毒素の排出が滞り、体内のバランスが崩れて体に悪影響を及ぼすのですが…
腎臓は機能が衰えても、残った部分でギリギリまで役割を果たそうと頑張ってしまいます。そのため症状もほとんどなく、病気に気づいたときには重症化していることが少なくないのです。
人工透析
腎組織がほとんど壊れてしまい、腎機能が低下した腎臓は有害な老廃物や毒素を排出できなくなると、人工透析が必要になります。
血液を大概の透析器に送り込み、フイルターで老廃物や毒素だけをろ過し、きれいになった血液を再び血管へ戻します。
人工透析を受けるようになると、厳しい食事制限も行われます。
腎臓のろ過フィルターを破壊する血糖
腎臓は糸球体という毛細血管の塊のようなものです。血糖値が高いと血液中に増えた糖が糸球体のろ過フィルターを破壊し、体に必要なたんぱく質が尿に溢れ出てしまいます。
するとこれを防ごうとして、血小板が毛細血管そのものを塞いでしまうため、ろ過できない糸球体が増え、老廃物もろ過できず、腎機能低下につながるのです。
血圧が高いと血管に余分な圧力がかかり腎臓を痛めます。高血糖、高血圧が重なるとより進行が早まってしまいます。
定期的な検査で早期発見早期治療
腎臓病が怖いのは、ろ過機能が透析寸前まで低下しても自覚症状がない場合が多いことです。肥満、高血圧、高血糖など生活習慣病の他、加齢によっても徐々に腎機能は低下していきます。
尿蛋白検査で異常がなくても腎臓病が進んでいることも少なくありません。腎臓病を早い段階で見つけるためには、ろ過機能の検査(クレアチニン検査)が重要です。
まとめ
近年急増中の糖尿病性腎症は、「もったいない」とつい食べ過ぎてしまい肥満になることも、大きな要因です。
人工透析を受けるようになると厳しい食事制限もしなければなりません。時間もお金もかかります。
腎機能低下は早い段階で見つけ、適切な治療を行うことで重症化は避けられます。予防のためにも食べ過ぎはNG!残り物は他の料理に再利用するなどして、もったいないの一口は健康にもお財布にも逆効果であることを確認してください。