床ずれ(じょくそう)とは。床ずれのメカニズムや、在宅介護の介護者の負担が少しでも軽くなることを願い、看護師が仕事として行っている床ずれ(褥瘡)の予防と、ケアの方法をご紹介します。
在宅介護における床ずれ(褥瘡)ケアと予防
寝たきりの方を在宅介護する家族は、床ずれ(褥瘡(じょくそう))の予防やケアに苦労されています。
「寝たきりでは床ずれができるのは当たり前」「床ずれが出来てしまったら、もう治らない。
特に在宅では無理。」と思う方もいらっしゃいますが、キチンとした治療とケアを行えば直せるようになってきました。
床ずれの予防に、知っておきたいポジショニング
寝たきり度*の高い方ほど身体の向きを変える体位交換が重要となります。床ずれが出来やすい仰臥位(あおむき)、頭側挙上時(ベッドの上で身体を起こした状態)、車いす、それぞれにおいて、床ずれの予防のためのポジショニングも以下にまとめました。
床ずれ予防のために、簡単な体位交換スケジュール表を作り、記入するようにすると体位交換忘れを防ぐことができます。
時間 | 時 | 時 | 時 | 時 | 時 | 時 | 時 |
体位 |
あおむき(仰臥位)から横向き(側臥位)に変える
肩、腰の向きを順に変えて体位交換を行ないます。これにより身体がねじれるので背中のコリの改善や、筋肉が縮まるのを抑えたりする効果が期待されます。
あおむき: 体軸を整える
あおむきでは、まず体軸を整えることが重要です。腸骨に手をあててねじれや傾きがないように整えます。
下肢の圧力を分散させるには、枕やクッションで身体の接触面積を広げ、点ではなく面で支えるようにします。
指導、監修:アライブメディケア
30度側臥位
仙骨部、大転子部の床ずれ(褥瘡)予防の体位です。おしりの筋肉で身体を支え、ベッドとの接触面積を広くして圧力を分散できます。
付属の布(フラップ)がついた枕は、フラップを身体の下に敷きこむと、身体からずれにくい。
頭側挙上時: 背上げ(ベッドの背を30度以下になるように上げます)
身体がずり落ちた時に生じるずれや、おしりの部分にかかる力を小さくするために、ベッドの屈曲部と大転子部をあわせます。はじめに足の部分を上げ、次に頭側を上げます。
ポジショニングでは皮膚のずれ、着衣のずれが起きるので、背抜き、足抜きを忘れないことがポイント。
背抜き
片側ずつ、背中とベッドをひき離し、着衣のシワを伸ばします。
足抜き
片足ずつ、ベッドと下肢後ろ側を引き離し、シワを伸ばします。
座位
車いすなどに長時間座る場合は、褥瘡予防のクッションを使用して、15分間隔程度に座り直しを行ないます。
股関節、膝関節、足関節が出来るだけ90度になるように座ります。太ももの裏側の広い面積で身体を支えられます。
ポジショニングとは
動けないことで起こる様々な悪影響に対し、予防対策を立てること。
自然な体軸の流れを整え、安全・安楽に体位を現状維持から改善に役立つよう管理する。体位変換、体位交換。
床ずれを早期に発見するために
床ずれ(褥瘡)が出来やすい部分は、毎日皮膚を観察することが重要です。皮膚が赤くなっていたら、その部分が圧迫されないよう、身体の向きをかえ(体位交換)、30分後に赤みが消えていたら大丈夫。消えない場合は医師や看護師に相談してください。
床ずれ(褥瘡)のケア
- 床ずれ(褥瘡)部分に力が掛からないようにする
- 衣類、おむつ、寝具の圧迫を防止
- 床ずれ(じょくそう)部分を圧迫する体位を避ける
- エアーマットやクッションなどを利用して、圧力を分散させる
- 骨が出ている部分や床ずれの周りのマッサージは行わない
栄養管理が大切
栄養が不足すると床ずれ(褥瘡)を起こしやすく、治りにくくなります。タンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く取ることが重要。
看護師や栄養士、ケアマネージャーなどに相談することも大事です。
排泄物によるスキントラブル
排泄物の処理はスキントラブルの原因となります。
- 科学的刺激
- 皮膚のふやけ
- 機械的刺激
の3つの要因を取り去ることが重要。医師や看護師の指示にしたがっておむつやパッド等適したものを使用します。
科学的刺激
- 皮膚に排泄物が長時間ついたままにしない
- 尿失禁は適切なおむつを選び、あて方を工夫する
- 便失禁は肛門周囲にパウダー状の皮膚保護剤を散布
- 皮膚を清潔にして、撥水性のあるクリームやオイルを塗る
*下痢や水溶便が続く場合は、医師や看護師に報告する
皮膚のふやけ防止
- 排泄物の付着、洗浄、オムツ内の群れなどで皮膚がふやけると、皮膚が刺激に弱くなり、最近や心筋の感染を起こしやすくなる
- 水分吸収力が高く通気性のあるおむつ
- は姿勢のクリームやオイル
- 洗浄はできれば1日1回~2回に
機会的刺激
- ずれや摩擦を繰り返すと皮膚が弱くなる。おむつを無理やり剥ぎ取らない
- 機能性に優れたおむつの使用で、交換回数を少なくする
- オイルや肛門清拭剤などを含ませたペーパータオルなどを使用。軽く抑えるように拭き取り、油分のとりすぎに注意
発汗
汗のついた下着や寝具が皮膚に長く接触していると、皮膚が湿ったり体温が奪われたりします。汗をかいた時はすぐに拭き取り、こまめに下着や寝具を交換することが大切。
下着やパジャマは、着替えやすい大きさや素材を選ぶこともポイントです。
床ずれ(褥瘡)の処置
処置の方法は、症状により様々です。必ず医師や看護師の指示に従って行うことが重要。ここでは、おおまかな流れを記述するにとどめます。
- 必要な物は一箇所にまとめ、準備ができたら手洗いをして手袋をつける。
- 体位を整える
- 洗浄
- 薬剤・被覆材(皮膚を覆って保護するもの)の使用
- 片付け
医師や看護師に連絡すべき6つの状態
次のような状態が見られたら、すぐに医師や看護師に連絡することが必要です。
- 床ずれの周りが赤く腫れ上がり、熱を持っている
- 床ずれから滲出液*が増えた、悪臭がする、海のようなものが出た
- 床ずれの痛みが強くなった
- 全身に発熱がある
- 意識がもうろうとしている、衰弱してきた
- 食事や水分が取れなくなった
*浸出液: 炎症が起こると毛細血管から皮膚の中ににじみ出てくる、血液成分(血しょう)からできている黄色っぽい液
床ずれの原因を知ることが予防の一歩
床ずれ(褥瘡)はある要件が揃うと出来てしまうものです。その要件が起こらないようにすることが、床ずれ(褥瘡)の予防に繋がります。
床ずれ(褥瘡)とは
床ずれは褥瘡(じょくそう)といいます。寝たきりで常に同じ位置が圧迫されたり、ずれ力が働いた時に皮下組織が壊死し、拡大化して発赤(皮膚の表面が赤くなる)、そのまま放置すると壊死が進行して皮下組織がむき出しになります。
壊死した部分を取り除くと、深い裂傷とおなじになります。形や大きさ、深さは状態によって様々です。
床ずれ(褥瘡)ができる条件とは
床ずれ(褥瘡)ができる最大の原因は、同じ部分(特に骨が出ている部分)が継続して圧迫されることです。皮膚の局所液な要因なども関係しています。
褥瘡ができる3つの要因は
- 局所的
- 全身的
- 社会的
です。
局所的な要因
- 姿勢が保持できないために、状態を起こす時などに身体がずり落ち、皮膚のずれや摩擦で弱くなっている
- 排泄物が皮膚に常に付着、入浴ができないなどで皮膚が汚染された状態が続く
- 皮膚の乾燥で刺激に弱くなっている
- 汗や尿、便などで、皮膚が湿っていたり、ふやけたりしている
- シーツや着衣のしわ
全身的な要因
- 食事を十分に摂れず、栄養状態が悪い
- 持病(糖尿病、骨粗しょう症、心不全など)がある
- 痩せて皮下脂肪が減少し、骨が出ている
- 抗がん剤、ステロイド剤(内服。注射)などの薬剤の使用
社会的な要因
- 看護力(人の力)が不足
- サービスや制度などの情報不足
床ずれ(褥瘡)が出来やすい場所
骨が出ていて、ベッドや車いすなどで圧迫されているところに床ずれは出来やすい。
仰向け 仙骨部、後頭部、かかとなど
横向き 耳、方、肘、腰骨の飛び出した部分(腸骨部)、太ももの骨が飛び出した部分(大転子部)、ひざ、くるぶしなど
車いす おしりの骨(坐骨部、尾骨部)、背部、ひじなど
寝たきり度が高いほど床ずれ(褥瘡)は出来やすい。
寝たきり度: 障害高齢者の日常生活自立度)の判定基準
J | 自立 | J1 | 交通機関等を利用して外出できる | |
J2 | 隣近所へなら外出できる | |||
A | 準寝たきり | 屋内での生活は概ね自立している。 介助なしには外出できない。 | A1 | 介助により外出できる 日中はほとんどベッドから離れて生活 |
A2 | 外出の頻度が少ない 日中も寝たり起きたりの生活をしている | |||
B | 寝たきり | 屋内での生活も何らかの介助を要する 日中もベッド上での生活が主体 座位を保つことが出来る | B1 | 車いすに以上出来る 食事・排泄はベッドから離れて行える |
B2 | 介助によって車いすに移乗することが必要 | |||
C | 寝たきり (重度) | 一日中ベッドの上で過ごす 排泄・食事・着替えにおいて介助を要する | C1 | 自分で寝返りを打つことが出来る |
C2 | 自分では寝返りができない |
まとめ~床ずれの予防とケアにポジショニング
床ずれ(褥瘡)は予防することが可能です。なぜ床ずれが出来るのか、その要因を知っていれば、回避することができますね。そのためにポジショニンングの知識が必要。
入浴などで皮膚を清潔にたもち、血行を促進。皮膚を乾燥させないことも重要です。
床ずれを予防できれば、介護者の負担も大幅に軽くなります。医療機関との連携、福祉サービスや福祉用具の効果的な導入など、情報を積極的に集めて上手にましょう。
参考:
予防や治し方について詳しく載っています。(患部の実際の写真も載っていますのでご注意を)
「Anのひとりごと」~今日も1ページ