健康と日々の徒然~Anのひとりごと

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乳がんの薬物治療は個別化治療が進む~がん治療最新の薬の使い方

日本人の女性に最も多いがんが乳がんで、近年大幅に増えています。乳がんの主な治療法と、初期治療の方針を決める段階から検討されるようになってきた、薬物治療で使われる薬の種類と特徴をお伝えします。

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乳がんの主な治療法と進むがん治療の個別化

乳がんの主な治療法は、手術、放射線療法、薬物療法の3つです。乳がんは、母乳を作る小葉と母乳を乳頭まで運ぶ乳管にできる悪性腫瘍です。

完治を目指す初期治療*では、手術が基本となりますが、がんの特徴や進行度などにより、放射線療法や薬物による治療が組み合わせて行われます。

近年遺伝子研究が進み、がん細胞の薬に対する反応性の違いがかなり解明されてきました。これにより、個々の患者さんの乳がんのタイプに応じ、効果が期待できる薬を選んで使う個別化治療が進んでいます。

*初期治療とは、他の臓器への転移(遠隔転移)が無い患者さんが最初に受ける治療の事。遠隔転移があったり、手術ができない乳がんがある場合の治療とは区別して考える。

 

がんのタイプに応じて薬の種類や使い方を選ぶ

乳がんの薬物療法には、従来のホルモン剤(ホルモン療法)、抗がん剤(化学療法)に加え、最近では分子標的薬(分子標的療法)が用いられています。

また、再発予防のための薬を手術前に使う、術前薬物療法も検討されるようになってきました。

再発予防のために薬物療法が、手術後、がんの転移が起こらないことが確実な場合を除き行われることが多いです。

最初から他の臓器に転移がある場合、初期治療後再発した場合*の治療でも薬物療法が治療の中心となります。

乳がんの薬物療法に使う薬がどんなものなのか、使い方はどうなのかについてお伝えします。

*温存した乳房内での局所再発を除く

 

ホルモン剤とは

乳がんの約7割は、女性ホルモンのエストロゲンを取り込んで増殖します。そのようながんには、女性ホルモンの働きを抑えるホルモン剤を用いたホルモン療法が、がんの増殖を抑えるのに有効です。

初期治療では再発のリスクが半減し、進行・再発した乳がんでも進行を抑える効果があります。ホルモン剤が効くタイプのがんかどうかは、ホルモン受容体があるか、ないかで判断されます。

 

使われる薬

抗エストロゲン薬、LH・RHアゴニスト製剤、アロマターゼ阻害薬などがあります。閉経の前と後では女性ホルモンの分泌の仕組みが異なるので、薬も使い分けられます。

 

閉経前 

女性ホルモンは主に卵巣で作られます。その指令を出すホルモン(LH・RH)の働きを妨げ、卵巣からホルモン分泌を起こらせなくなる、LH・RHアゴニスト製剤を用います。

 

閉経後 

卵巣の機能が低下、副腎から出る男性ホルモンがアロマターゼという酵素により、エストロゲンに変換されています。それを妨げるアロマターゼ阻害薬が用いられます。

 

どちらにも使える 

抗エストロゲン薬は、がん細胞がエストロゲンを取り込むのを妨げ増す。タモキシフェンは乳がんのホルモン療法に最も広く使われています。

 

副作用

ホルモン剤は抗がん剤に比べ、一般に副作用は少ないのですが、女性ホルモンの働きを抑えるので、更年期のような症状が現れることがあります。

特にLH・RHアゴニスト製剤は、人工的に閉経状態にする薬と言えます。そのため若い女性が使うと症状が強く出る傾向があります。

一方、閉経後に使われるアロマターゼ阻害薬は、関節痛が現れることも。

 

化学療法、抗がん剤の効果と副作用

抗がん剤は多くの種類があり、作用の仕組みによって分類されています。活発に細胞分裂して増殖するがん細胞を攻撃する薬です。手術前後の再発予防、転移・再発した際の治療として使われています。

初期治療では、再発率、死亡率を下げる効果があり、特に増殖が活発なタイプのがんに有効です。転移・再発ガンでは、どのタイプのがんにも用いられます。

 

副作用

がん細胞だけでなく、細胞分裂が活発な正常細胞もダメージを受けます。そのため全身に脱毛、吐き気、骨髄抑制、手のしびれなど様々な副作用が現れます。

最近は副作用を軽減する薬も進歩しており、吐き気などはかなり抑えられるようになっています。

髪が抜けることを気にする人も多いですが、治療が終わればまた生えてきます。自然に見えるかつらも種類が豊富になってきており、帽子の利用など工夫しましょう。

先日、小林麻央さんがブログで、過去のかつら試着写真を公開、1つ目は「キンパツ」2つ目は「アグネス・チャン?」と話題になっていました。

 

分子標的薬

近年がんの薬物治療で重要な存在になってきているのが、分子標的治療です。分子標的薬はがん細胞の増殖に重要な特定のタンパクなどを標的とし「狙い撃ち」にしようという薬です。

乳がんに使われる分子標的薬の中心は、HER2タンパクの働きを抑える抗HER2薬で、トラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブと抗癌剤を結合させたT.DMI(トラスツズマブエムタンシン)があります。

 

HER2 タンパクとは

HER2タンパクはがん細胞の増殖を促す物質を受け取る受容体です。この受容体があるタイプ(HER2陽性)のがんに有効ですが、現在初期治療の手術前後に使えるのはトラスツズマブだけです。それ以外の薬は手術ができないがん、再発乳がんが対象とされています。

 

副作用

抗癌剤に比べると、正常細胞へのダメージは少ないです。しかし特有の副作用が起こることがあります。

 

トラスツズマブ 

頻度が高いのは初回点滴後の発熱や震え、時に心機能に悪影響が出ることがあるので、定期的な心機能検査が必要です。

 

抗HER2 以外の分子標的薬

ベバシズマブやエベロリムスと言った分子標的薬があり、手術ができないがん、再発乳がんの治療に使えます。

この薬を使う対象はHER2 陽性に限りませんが、ベバシズマブは抗癌剤のパクリタキセルと、またエベロリムスはホルモン剤のアロマターゼ阻害薬と併用するため、これらの併用薬の対象となる人が使います。

また、抗HER2薬よりも副作用が強く出がちな傾向があります。

 

期待される新薬

CDK阻害薬(ホルモン剤と併用) 

ホルモン受容体があるタイプ(ホルモン陽性)の再発乳がんに用いる

 

PARP阻害薬 

遺伝性乳がん再発に用いる

進行中の治験でかなり良い治療成績がでており、これらを手術後の再発予防に用いる治験も始まっています。

 

まとめ~進化するがん治療

がんの治療は様々な研究などにより、治療法や使われる薬なども進化しています。

乳がんの手術法にしても、アンジェリーナ・ジョリーさんの告白で話題となった、将来の乳がん予防のための乳房切除の考え方もあります。

今後登場が期待される新薬もあります。医学の進歩は本当に早く看護師も常に勉強をして成長しなければ行けませんが、それだけやりがいがある仕事だともいえます。

日々の業務に追われるだけの毎日ではなく、キャリアアップ、自己研鑚のために十分な時間が取れるような働き方ができる環境が望まれます。

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