耳が詰まった感じや耳鳴りが起こったり、ある日突然片方の耳が聴こえなくなる突発性難聴は、一刻も早い受診が必要です。耳の聞こえが悪い原因のひとつ、突発性難聴の特徴、症状についてお伝えします。
突発性難聴とは
突発性難聴は内耳に起こる病気で、蝸牛内の有毛細胞が障害され、正しい電気信号を脳に送れなくなるため、聞こえなくなります。内耳が障害されて起こるので、感音難聴に分類されます。
- 音は外耳から入り、中耳をへて内耳の蝸牛に伝わる
- 蝸牛にある音の受容器「有毛細胞」が音の刺激を受けて脳に電気信号を送る
- 電気信号が脳に伝わり音を聞き取る
突発性難聴を改善するためには、一刻も早い治療が大切です。疑いがある場合はすぐに医療機関を受診してください。
突発性難聴の特徴と症状
突発性難聴では、突然片側の耳が聴こえなくなる他にも、耳が詰まる感じがしたり難聴の前後に耳鳴りが起こる場合があります。
めまいや吐気を伴うこともありますが、めまいは1回限り、繰り返す場合はメニエール病など他の病気も考えられます。
発症の前触れなどは無いのですが、いつ、どんなときに聞こえなくなったのかがはっきりとわかるのが特徴です。
また、通常同じ側の耳に再発することは無いとされています。
主な症状と特徴
症状
- 突然片側の耳が聞こえなくなる
- 耳が詰まった感じがする
- 耳鳴り
- めまい
- 吐き気
特徴
- 発症日時がはっきりわかる
- 同じ側の耳は再発しない
厚生労働省が10年毎に行っている調査によると、最近の10年間で患者数は約1.5倍に増えたとされています。また、性別、年令に関係なく子供から高齢者まで幅広い年代の人に起こるとされています。
他の病気の可能性
難聴を繰り返す場合は、次のような病気を疑います。
症状 | 特徴 | |
---|---|---|
メニエール病 |
低い音の聞こえが悪い |
内耳の「内リンパ」という液体が増えすぎて内リンパ腫が生じると、低音部の聞こえが傷害されたり、激しいめまいが起こる |
聴神経腫瘍 | 良性腫瘍が原因で難聴や耳鳴りが起こる | 主にめまいに関係する聴神経に発生する良性腫瘍で、腫瘍が大きくなると難聴や耳鳴りを引き起こす |
外リンパ腫 | 圧力の急激な変化により難聴が起こる | 中耳と内耳の間には2つの膜があり、トイレでいきんだリ、鼻を強く噛んだ後などにその膜が破れ、内耳から「外リンパ」という液体が中耳に漏れて起こる |
急性音響性感音難聴 | 耳元での大音響が原因で起こる難聴 | 耳元で大きな音を聞いたり、爆発音のような激しい音を聞くことで起こる。 いわゆる「ロック難聴」に代表される |
急性低音障害型感音難聴 | ストレス等が原因で起こる難聴 | 最近注目されている難聴の1つ。ストレスなどの原因で低音部の聞こえが悪くなる。 20代~30歳代の女性に多く見られる。 |
原因
突発性難聴の遠因ははっきりしていませんが、現在考えられているのは、血流障害とウイルス感染の2つの説です。
血流障害 | ウイルス感染 | |
---|---|---|
原因 |
|
免疫の働きの低下などによるウイルス感染 |
上記の病気がある人に多く見られるため、生活習慣病としての側面があると考えられている | 免疫の働きが低下しているときにウイルスに感染して内耳に障害が起こる。その結果発症すると考えられている。 |
治療
安静を保つこと、薬物療法の2つの治療法があります。
突発性難聴発症の前後に、風邪を引いていたり体力が落ちている場合があるので、体の安静を保ちます。又、聴覚に障害を受けると「被受傷性」が強まって、普段なら問題の無い大きさの音でも、障害が進行する恐れがあります。
耳の安静も大切で、症状の程度や患者さんの生活環境などによっては、入院治療となる場合もあります。
治療のポイント
安静を保つ
- 体を休める
- 大きな音を避け、耳を休める
薬物療法
- ステロイド薬の内服
- 血管拡張薬
- 抗凝固薬代謝改善薬
- ビタミン剤
薬物療法
最もよく使われているのが、ステロイド薬の内服です。作用が強く有効な薬ですが、胃潰瘍や糖尿病、高血圧等がある場合にステロイド薬を内服すると、これらの病状が悪化することもあり、副作用にも注意が必要です。
「鼓室内投与」
ステロイド薬を直接中耳に注入する治療です。飲み薬や点滴で全身に影響を与えるよりも、ダメージを受けている部分に近い場所から、直接ステロイド薬を届かせ効率よい治療を目指します。通常の治療で効果が見られない場合、検討されます。
血管を拡張させたり、血液が固まるのを防ぐ必要がある場合は、「血管拡張薬」や「抗凝固薬」を併用します。
その他患者さんの状態に合わせ、「代謝改善薬」や「ビタミン剤」などが用いられることもあります。
治療期間の目安
突発性難聴は、発症したときの聴力が一番悪い状態です。治療で改善するかあまり変わらないかのどちらか。
治療開始から改善が見られるまでの期間の目安は約2週間、1か月たっても改善が見られない場合は、よくなる見込みは低いとされます。
また、発症時に聴力が全く無い場合、めまいを伴う場合は一般に回復は難しいとされています。が、基本的に片側の耳にだけ発症するので、両耳の聞こえが悪くなることは殆どありません。
片方の耳の聞こえが良ければ、生活上の問題はほぼ無いと考えられますし、もし別の原因でもう片方の耳の聞こえが悪くなったとしても、補聴器でその耳の聴力を補うことは可能でしょう。
早期治療が重要な理由
有毛細胞は一度壊れると再生しないので、傷害されている状態が長いほど聴力の回復は難しくなります。突発性難聴が疑われる場合は、一刻も早く耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
突発性難聴を改善するためには、一刻も早く治療を受けることが重要で、発症後数日以内、遅くとも1週間以内には受診して治療を受ける必要があります。聴力の回復には、早期の受診・治療が重要です。
まとめ
突発性難聴の治療は、開始が早いほど回復の可能性も高まります。他の病気でも原因がわかれば適切な治療を受けることが出来ます。
聞こえが悪い、耳が詰まった感じや耳鳴りなどおかしいと思ったら、一刻も早く医療機関を受診しましょう。
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