COPDとは耳慣れない病気ですが、自覚症状がないうちに進行し、呼吸が十分に行えなくなる病気です。息切れが多く、咳やたんが続く場合で特に40歳以上の喫煙者は検査が必要です。COPDの症状や治療、診断についてお伝えします。
COPDとは
COPDとは、慢性閉塞性肺疾患という病気で、長い間(20年以上)の喫煙などが原因となり、呼吸に欠かせない肺の組織が壊れていく病気です。概ね40歳以降に症状が現れ始めます。
一旦COPDを起こすと、壊れた肺胞はもとに戻らないので、COPDの進行を遅らせたり、症状を軽くしたりする治療が行われます。以下のような症状がある場合、COPDが疑われます。思い当たる方は、早めに検査をして診断を受けてください。
- 風邪ではないのに咳がでたり、痰がからんだりする
- 階段や坂道でよく息切れがする
- 40歳以上
- 喫煙
原因、症状と治療
COPDは自覚症状が無いうちに進行しますが、階段や坂道を登ると息切れしたり、同年代の人と歩いているときに、自分だけ遅れてしまうような場合は、COPDが疑われます。
進行すると、安静時にも息切れを起こすようになり、肺だけでなく、全身に悪影響が生じる危険があるので、慢性の咳やたん、息切れがある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
COPDの原因の殆どは喫煙です。たばこの中には多くの有害物質が含まれていて、それらが気管支の壁に炎症を起こすだけでなく、気管支の末端にある肺胞にまで侵入して、組織を壊す物質もあります。PM2.5 もその一つで、たばこにも多く含まれています。
症状
有害物質により気管支に炎症が起きると、咳、痰が出るようになり、更に炎症が進むと気管支の内宮が狭くなり空気が通りにくくなります。
更に肺胞の壁が壊れ肺胞同士が融合するなど、肺全体が弾力を失い、膨らんだままになってしまいます。
その結果吸い込んだ空気が肺に溜まって吐き出せなくなり、新しい空気を吸い込むことが難しくなるので、息苦しさを感じます。
更に、ガス交換(酸素を取り入れて二酸化炭素を排出する働き)が十分に行えなくなるために、息切れが生じます。
全身への影響
COPDを起こすと、肺だけでなく、全身に悪影響が生じる危険があります。
炎症で期間や気管支などの粘膜が傷ついているので、病原体に感染しやすく、かぜやインフルエンザ、肺炎などの感染症を起こしやすいことが知られています。
咳や痰、息切れなどの症状が急激に悪化する「増悪」が起こることがあります。
また、他の病気を合併するケースが多いこともわかってきました。例えば
- 骨粗鬆症
- 筋力低下
- 心筋梗塞
- 消化器疾患
- 抑うつ
- 糖尿病
などです。
肺の病気が全身に影響をおよぼすのは、肺に炎症が起きる前後にでる物質(サイトカイン)が血液を介して全身に巡り、炎症性の疾患を起こすためです。
そのほか、息切れを起こすので運動を避けるようになりがちのため、運動不足で筋力低下も起きやすくなります。更に外出を避け、引きこもるようになると、抑うつを起こすことも。
診断と検査方法
COPDはじわじわと進行します。気づいたときには症状が重くなっていることが多い。NICE study 2001*によると、40歳以上のCOPD有病率8.6%、患者数530万人(現在は約700万人)と推定されています。
一方、2014年の厚生労働省患者調査によると、病院で診断された患者数は約26万人、未受診者が500万人以上(現在は更に多い)いると推定されるのです。
多くの患者がCOPDであることに気づいていない、あるいは正しく診断されていないと言うのが現実です。
*NICE study: 2001年に発表された、順天堂大学医学部の福地氏らによる大規模な疫学調査研究
呼吸機能検査
COPDの初期には、自覚症状がほとんどありません。咳や痰も「歳のせい」「タバコのせい」と思い込み、病気に気づかない人が多いのです。COPDはじわじわと進行するので、気づいたときには症状が重くなっています。
検査方法
- 鼻をクリップで挟む
- 大きく吸った息を最後まで吐く
- 肺活量→息をすべて吐ききった量(努力性肺活量)に対し、最初の1秒間に吐いた量(1秒量)がどのくらいかの割合(1秒量)を見る
- 1秒量が70%未満の場合、COPDと診断される
1秒量が少ないほど、COPDは進行していると考えられます。
COPDの治療
一旦COPDを起こすと、壊れた肺胞はもとに戻りません。COPDの進行を遅らせたり、症状を軽くしたりすることが治療の目的となります。軽症から重症までの進行度に応じ、様々な治療が行われます。
禁煙とインフルエンザワクチンの接種は、病気の程度に関わらず、すべての患者さんが行います。症状に応じて、呼吸リハビリテーション、薬物、酸素療法なども行います。
禁煙が最重要
喫煙者の有病率 出典:NICE study
最も重要な治療は、COPDの原因となるたばこを辞めること。たばこを吸い続けると肺の機能や低下し続け、止めればその時点から喫煙による機能の低下は止まり、年齢に応じた穏やかな低下に近くなります。
今更禁煙したって、と思わず、気づいた時点でたばこを辞めることが大切です。
インフルエンザワクチンの接種
COPD患者さんは増悪を起こしやすく、しかも1回起こすと繰り返しやすく、命に係わる危険もあります。そのためかぜやインフルエンザ、肺炎などの感染症にかからないように注意することが大切です。
インフルエンザワクチンと肺炎の原因になることが多い肺炎球菌に対する、肺炎球菌ワクチンの両方を摂取することが勧められます。
運動療法と呼吸リハビリテーション
息切れをしないようにしようとして、活動量をが低下し、生活の質が落ちる傾向があります。そこで運動療法を中心とした呼吸リハビリテーションを、医師や理学療法士の指導を受けて行います。
- ウオーキング 持久力を上げる
- 筋力トレーニング 筋力を上げる
が有効です。
筋力がつくと、少ない酸素量で体を動かす能力が高まり、体を楽に動かせるようになります。
ただし、脈が速くならないように注意する必要があり、自己判断では行わないことが大切。医師や理学療法士と相談ながら行います。
呼吸リハビリテーション
普段の生活でもできるだけ息切れを起こさないための呼吸法、息苦しくなった時の呼吸の整え方を習得します。その一つが口すぼめ呼吸です。
- お腹に手を当て、おなかを膨らませながら、鼻から息を吸い込む
- 口をすぼめ、ゆっくり息をはき、最後まで吐ききる
- この時、おへそが背中につくような感じでお腹をへこませる
口をすぼめることにより、炎症で狭くなった気道の圧を上げることができるので、気管支の中がひろがり、息が履き易くなります。
この呼吸法の感覚をつかむまで、あおむけに寝た状態で行ってもよいでしょう。
薬
気管支を拡張する、気管支拡張薬がおもに使われます。吸入するタイプが多く、短時間作用型と長時間作用型があります。使い方は、例えば
- 軽症 短時間作用型を必要なとき
- 中等症以上 長時間作用型を定期的
- 重症 増悪を抑制するために吸入ステロイド薬を併用
これらを症状や重症度に合わせて使い分けます。最近では、長時間作用型の移管し拡張薬と吸入ステロイド薬の合剤も使われています。
酸素療法
重症になると肺から空気中の酸素を十分に取り込めません。そのため、機械を使って高濃度の酸素を供給し、呼吸を補助します。自宅に酸素濃縮器を置き、鼻からチューブで酸素を送り込みます。
最近では、カートで持ち運ぶ、肩にかけたり背負ったりする携帯タイプがあり、重症の患者さんでも外出が可能となっています。
参考
順位 | 全体 | 男性 | 女性 |
---|---|---|---|
1位 |
悪性新生物 (370,346人) |
悪性新生物 (219,508人) |
悪性新生物 (150,838人) |
2位 |
心疾患 (196,113人) |
心疾患 (92,142人) |
心疾患 (103,971人) |
3位 |
肺炎 (120,953人) |
肺炎 (65,609人) |
老衰 (63,916人) |
4位 |
脳血管疾患 (111,973人) |
脳血管疾患 (53,576人) |
脳血管疾患 (58,397人) |
5位 |
老衰 (84,810人) |
不慮の事故 (22,121人) |
肺炎 (55,344人) |
6位 |
不慮の事故 (38,306人) |
老衰 (20,894人) |
不慮の事故 (16,185人) |
7位 |
腎不全 (24,560人) |
自殺 (16,202人) |
腎不全 (12,652人) |
8位 |
自殺 (23,152人) |
COPD (12,642人) |
大動脈瘤及び解離 (8,271人) |
9位 |
大動脈瘤及び解離 (16,887人) |
腎不全 (11,908人) |
血管性などの認知症 (7,968人) |
10位 |
COPD (15,756人) |
肝疾患 (10,016人) |
アルツハイマー病 (7229人) |
出典: 性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・構成割合 pdf p13
//www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei15/dl/00_all.pdf
厚生労働省 人口動態統計 2015年
日本ではいまだに喫煙率が高く、特に喫煙し始める年齢が若年化、女性の喫煙者も増えているので、今後は更に患者数が増えることが懸念されています。COPDによる死亡率は現在は男性のほうが多いですが、今後は女性の死亡率が増加すると考えられます。
また、大気汚染で知られるPM2.5のように粒子が非常に小さい物質も組織を壊します。PM2.5は呼吸が十分に行えなくなるCOPDは自覚症状がないうちに進行します。
40歳以上で喫煙者が咳やたん、息切れが続いているときは検査を受けてください。禁煙が一番の治療法です。たばこにも多く含まれています。
まとめ~慢性的な咳や痰、息切れが続く場合は検査を
慢性的に咳や痰、息切れが続く場合、特に40歳以上の喫煙者はCOPDの疑いがあります。呼吸が十分に行われ無くなる可能性もあるので検査、診断を受けてください。
COPDと診断された場合の一番の治療法は喫煙です。近年喫煙開始年齢の低下や女性の喫煙も増えており、今後もCOPDのリスクを避けるためにも、喫煙は避けることをおすすめします。
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