健康と日々の徒然~Anのひとりごと

心と体の健康を大切にしたい方へ贈るひとりごと

心配停止と死亡の相関関係~救急救命の現場、知られざる裏側

新聞やテレビなどメディアのニュースで、「心肺停止」という表現を良く見たり聞いたりするようになりました。一方で「死亡」「遺体」と言う報道は少なくなっています。コレには、こんな理由がありました。心肺停止の方に行う心肺蘇生術との関連にも注目!

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心肺停止(CPA)とは

病気やケガ等、様々な原因によって引き起こされる、切羽詰まった危機的な瀕死状態のこと。心臓の鼓動が止まって脈が触れず、呼吸もしていない、意識もないという状態です。

そこに居合わせた人たちによって、気道確保や人口呼吸などを中心に、救急隊が到着するまで一次救命措置が試みられると、延命率が高まります。

しかし、明らかに心肺蘇生は行えないような、実際は死亡であると断じられても良い場合でも、心肺停止(心肺停止状態)と報道されています。

 

形ばかりの心肺蘇生

事件・事故で被害に会われた方について、「心肺停止」「搬送先の病院で死亡が確認されました」と言う報道が多いことの裏には、こんな事情がある場合も少なくありません。

現実には死亡であるとも判断できる傷病者が、心肺蘇生術(CPR)を施されながら(形ばかりです)、高次救急医療機関に運び込まれてくるのには、次の2つの理由が考えられます。

  • 死亡確認・宣言は医師にのみ認められている
  • 救急車は死体(遺体)を搬送できない

もう少し詳しく見てみましょう。

 

心肺停止が目につくのは…考えられる2つの理由

明らかに、誰が見ても死亡と認められる(社会死状態)である場合もありますが、傷病者の死亡確認・宣言は医師法により、医師のみが行える行為とされています。

救急隊や警察官などが、死亡を宣言することはできません。

また、傷病者(この場合は遺体)を野次馬の好奇の目から隠すため等、現場から運び出すのに救急車を使用するのには問題が生じます。

 

救急車の用途 傷病者(生きている人間)を医療機関に救急搬送する

ことに使用されるのであり、死亡した人間(遺体)を警察署内の霊安室などへ搬送することは認められていません。

死体(遺体)を現場から迅速に搬送するためには「心肺停止状態」であること、つまり、まだ生きている人間として扱う必要があることになります。

救急隊は無意味だと承知しながらも、形ばかりの心肺蘇生術を行いながら、どこかの医療機関に搬送せざるを得ないのが現状です。

  • 心肺停止 CPA、もしくは心肺停止状態(Cardiopulmonary Arrest)
  • 心肺蘇生術 CPR (Cardiopulmonary Resuscitation)
    CPAの状態の人に対して、まず最初に行うべき、医学的根拠に基づいた一連の処置や手技のこと

 

心肺蘇生術(CPR)の2つのステージ

一次救命処置(BLS)と二時救命処置(ALS)という大きな2つのステージに分かれていて、日本も含め、国際的にほぼ統一されたものが広く普及しています。学校や自治体などで「救急救命講習」などBLSの講習を受けた方も多いと思います。

一度受けたからと言って、実際に現場に居合わせたときに胸骨圧迫や人工呼吸が施せるか、というと心許ありませんが、知っておくことはムダにはなりません。

更に内容は年々バージョン・アップが図られており、最近ではAEDを用いることが一般的になっています。

 

一時救命処置(BLS)(Basic Life Support)

CPA状態で倒れている人に対し、その場で薬剤や特別な器具などを用いず、原則として、共助する側の人間の5体だけで行われるステップです。

多くの場合、救急隊が到着するまでの間、居合わせた一般の人たちの手によって実施、継続されるべき手技で、

  • 気道確保
  • 肋骨圧迫(心臓マッサージのこと)
  • 人工呼吸(マウス・ツー・マウス)

がその中心となっていました。

現在は、AEDを用いる方法が一般的です。かつては、「胸骨圧迫5回に対して人工呼吸1回」とされていましたが、今では「胸骨圧迫30回に対して人工呼吸1回」がベストな組み合わせとされています。

さらに、場合によっては人工呼吸はせずに胸骨圧迫だけでも効果があると言うことになっています。

 

二時救命処置 (ALS)(Advanced Life Support)

救急車の中や搬送された救急センターなどの医療機関で、医師や救急救命師などの資格を持った人間が、酸素や各種薬剤、あるいは気管挿管など様々な医療資機材や手技を駆使して行うステップです。

医療技術の進歩により、ALSもその内容が大きく変化してきています。例えば経皮的心肺補助法 PCPS (新しい人工心肺装置)の導入、脳低温療法(新しいコンセプトの治療法)が標準化されるなどです。

 

看護師は常に自己研鑽

一般の人が心肺蘇生の現場に居合わせることは、一生に1度あるかないか、が現実です。講習を受けても使う機会がなければ忘れてしまいます。再度講習を受ける、ということも試みてほしいですね。

一方看護師など医療従事者にとって、部署によれば毎日が戦争、一般のかたより心肺蘇生を施すことは多いでしょう。とは言え、多くの場合、毎日心肺蘇生の場面に居合わすということはありません。

心肺蘇生(CPR)に関する最新の知見を捉えたり、学んだ知識や手技を忘れる前に、ブラッシュアップ講習を受講することを定期的に続けることで、一定の水準を保つことができ、いざという時に慌てずに済みます。

多くの医療機関では、医師や看護師はもちろん、勤務するスタッフに対してCPRについての研修が広く行われています。月に1度のペースで一次救命、二次救命の講習会を開催している医療機関もあります。

 

心肺停止状態における心肺蘇生術の必要性

心肺蘇生術(CPR)はどんな状態のときに行うか、またなぜ必要なのか。看護師の皆さんはその理由を堪えられますか。心肺停止状態とされても、いつからその状態が続いているのかが重要です。

心臓が止まってしまうと、血液が酸素を供給できなくなり、体の中は低酸素状態になります。最も影響をうけるところ、つまり酸欠に弱いのは脳です。その中でもたとえ数分でも酸素の供給が止まると、致命的なダメージを被ると言われているのが大脳皮質です。

間髪をいれず心肺蘇生を開始して、救急隊に引き継げると、延命率は格段に高まり、心肺停止による脳障害も少なくなる可能性が高いです。

 

大脳皮質を酸欠から守る

大脳皮質は、心臓が動き呼吸をしている状態、つまり酸素が供給し続けられることが重要で、その状態を作り出すために胸骨圧迫や人工呼吸で作り出すことが、心肺蘇生です。

心肺蘇生術を行うのは、脳を酸欠状態から守るためです。心肺停止によってもたらされる低酸素状態から、大脳皮質を守ること、それが心肺蘇生術の目的です。

ということは、心肺蘇生術を行うのは、

「意識、脈、呼吸がなく、かつ、今、目の前でそういう状態になってしまった人」

ということになります。

救急車で搬送される「心肺停止」の傷病者も、事故直後からそばに居合わせた人間が、心肺蘇生を開始している状態を指すので有れば良いのですが…

 

まとめ~心肺停止の裏側

最近多くなった「心肺停止状態」「病院で死亡が確認された」と言う報道。以前に比べ「死亡」という言葉が報じられるのが少なくなってきたことに、一種の時代の流れを感じます。

災害現場などで何日も経ってから発見された被災者の方を、「心肺停止状態」で発見「病院で死亡が確認」、という報道に違和感を感じる方も少なくないのではないでしょうか。

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