排尿時の痛み、頻尿などが起こる膀胱炎、近年治りづらい間質性膀胱炎も知られるようになりました。膀胱炎が起こる仕組み、症状や治療について、また気になるアレや日常生活の注意点についてお伝えします。
膀胱炎とは
尿を貯める袋である膀胱に炎症が起こる病気で、大きく分けて急性膀胱炎と慢性膀胱炎があります。
殆どの膀胱炎は細菌感染によって起こり、抗菌薬で治ります。しかし、抗菌薬では治りづらいタイプの膀胱炎も、少なくないことがわかってきました。
膀胱炎が治らないのは、急性膀胱炎を繰り返している場合も多いのですが、間質性膀胱炎の疑いもあります。
膀胱炎は排尿時の痛みや頻尿が起こり、仕事や日常生活に支障が起こることも少なくありません。また、特に女性は「アレは大丈夫なの?」と不安に思うことも多いので、パートナーへの心配りも大切です。
日常生活で注意すること
膀胱炎になった時や、膀胱炎を繰り返すことが無いようにするために、日常生活で注意する事を幾つかご紹介しておきます。
治療は膀胱炎の種類によって変わってきますが、基本的な注意点は変わりません。膀胱炎を繰り返す人は、どんなときに起こりやすいかを振り返って見ましょう。
膀胱炎を起こしやすい習慣に思い当たることが有れば、それを改善することで再発を予防することが可能となります。
急性膀胱炎を繰り返さないためのポイント
急性膀胱炎を繰り返さないようにするためには、
チェックポイント
- 処方された抗菌薬は使い切る
- 排便後は前から後ろへ拭く
- 便秘に注意する
- 「アレ」の前にシャワー、後は早めに排尿する
- 生理パッド、尿もれパッドはまめに交換する
などに気を付けてください。
アレはOKですが、before、afterに注意を
気になる「アレ」ですが、膀胱炎だからといって取り立てて避ける必要はありません。ただし清潔には十分注意することが大切です。コトの前にシャワーを浴び、終わった後はなるべく早く排尿するようにしてください。
女性は膀胱炎であることを恥ずかしく感じたり、細菌感染など不安に思うことも少なくありません。無理は禁物。パートナーをいたわる気持ちを忘れないようにしてくださいね。
清潔にも程度あり
清潔が大事、とは言え度が過ぎるのも考えものです。常識的な範囲で。
シャワーや入浴中に、尿道口付近を石鹸やボディシャンプーなどでゴシゴシ洗いすぎると、体が持っている防御機構まで壊してしまう場合もあります。
もちろん皮膚にもダメージを与えやすいので、洗いすぎには注意してください。
しみると痛みを感じる食品を避ける
尿には食べたものの成分がとけだしますので、炎症のある部分にしみると痛みを感じる食品は、とるのを避けるようにします。
柑橘類やそのジュース、いちご、トマト、アルコール、コーヒー、しょうが、わさび、シナモン、唐辛子などの香辛料などはしみると言われています。後述の間質性膀胱炎がある場合は注意してください。
膀胱炎の種類、原因と治療
細菌性の急性膀胱炎と、様々な原因で起こる慢性膀胱炎があることは前述しましたが、それぞれの原因や特徴、また抗菌薬が効かない間質性膀胱炎についてもご紹介します。
治療は膀胱炎の種類により治療が変わりますので、種類を明らかに診断することも重要です。
膀胱炎の主な種類
急性膀胱炎 | 慢性膀胱炎 |
---|---|
細菌による膀胱炎 |
など |
急性膀胱炎
原因となる細菌の約8割は、大腸をすみかとする常在菌である大腸菌です。便の中にも多く見られ、肛門の周りや膣付近にも常に常在しています。原因の殆どが大腸菌だと考えられるので、適切な抗菌薬を使えば直せます。
女性は肛門と尿道口の位置が近いので、細菌が尿道口から侵入しやすく、急性膀胱炎になりやすいと考えられています。
- 異界の排尿量が少なく、頻尿となる
- 排尿の最中や終わりにジーンとしみるように痛む
- 残尿感がある
- 尿が白く濁る
- 出血があり、トイレットペーパーに血液がつく
などの症状が見られる
慢性膀胱炎
原因は様々です。
- 尿路結石
- 病気治療のために膀胱にカテーテルを長期間留置したため
- 薬剤性膀胱炎(抗がん剤などにによっておこる)
- 放射線性膀胱炎(がんの放射線治療から10年前後以降に副作用として起こる)
などがあります。
この他にも、原因がまだ解明されていない慢性膀胱炎、間質性膀胱炎があります。10年ほど前から少しずつ知られてきました。
急性膀胱炎と間質性膀胱炎の症状と治療
種類 | 急性膀胱炎 | 間質性膀胱炎 |
---|---|---|
症状 |
|
|
治療 |
|
〈薬〉
|
〈手術〉
|
診断
膀胱炎の種類は問診でおおよそ推測できます。さらに
- 「尿検査」尿の中の白血球の有無を調べる
- 「尿培養検査」尿の中の最近の種類を調べる
を行うことがあります。細菌が見つかれば急性膀胱炎と明らかになり、細菌が見つからず、症状から間質性膀胱炎が疑われる場合には、
- 「排尿日誌」患者さんが1日の水分摂取量や1回ごとの尿量などを記入する
- 「尿流量測定」尿の勢いを見る
- 「残尿測定」排尿後に膀胱の中に残っている尿の量を調べる
などの検査を行います。更に
- 「膀胱鏡検査」尿道から内視鏡を入れて膀胱の中を直接見る
赤いビロード状の潰瘍が有れば、間質性膀胱炎と診断されます。潰瘍がなくても、膀胱を広げたときに赤い点状の出血が有れば、間質性膀胱炎が疑われます。
間質性膀胱炎
近年少しずつ知られてきている病気ですが、原因がまだ解明されていない慢性膀胱炎です。抗菌薬は効きません。診断されにくい病気なので、診断も治療も受けていない患者さんが相当数いると推測されています。
間質性膀胱炎の症状は、急性のように排尿の最中や終わりにジーンとしみるような痛みがあるのではなく
- 尿が貯まるにつれてだんだん痛くなる
- 不快感や圧迫感がある
- 排尿すると楽になる
などの特徴があります。
激しい頻尿が起こり、一日に十数回、重症だと昼夜を問わず数十回に及ぶことも。
1日の尿量が増えているわけではなく、1回ごとの尿量が減ります。排尿で痛みが軽減されるため楽になりたくて何度もトイレに行くことで、さらに頻尿になることもあります。
間質性膀胱炎の特徴
膀胱の内側にある粘膜層は、細菌から膀胱を守ったり、尿が膀胱に染み込まないようにしたりする、防護壁の役割をしているのですが、間質性膀胱炎では、粘膜層が傷つき欠損部分のあることが確認されています。
粘膜がなぜ欠損するのかは不明ですが、欠損で粘膜下層(間質)に炎症が起こると神経に尿が触れ、尿の成分がしみて痛みが生じると考えられています。膀胱内に潰瘍のあるタイプとないタイプがあることもわかっています。
治療
間質性膀胱炎の原因はわかっていないので、症状を軽減する対処療法が行われます。
薬物療法
- 三環系抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬などを使うことにより、痛みや頻尿が軽減することがあります。
手術療法
- 膀胱が縮んでいるので、「膀胱水圧拡張術」を行うことがあります。膀胱の中に生理食塩水を注入する手術ですが、なぜ効果があるのかその理由は不明です。
- 縮んだ膀胱が水圧で膨らむ際に、粘膜に張り付いて病気を起こす因子も剥がれ落ち、新しい組織が再生されやすくなるのでは、と推測されています。
- 間質性膀胱炎は繰り返しやすい病気で、この手術を行っても半年後に再発することも。しかし、膀胱水圧拡張術は繰り返し行うことが出来ます。
潰瘍がある場合の手術
- 経尿道的潰瘍切除、あるいは経尿道的潰瘍凝固術を併用します。
- 潰瘍の部分を電気屋レーザーで切除したり凝固させたりすると、周囲の正常な粘膜細胞が潰瘍の後を覆って再生を促します。
まとめ
細菌による急性膀胱炎は適切な薬で治りますが、繰り返す場合はどんなときに起こりやすいのかを振り返り、思い当たる習慣を改めれば再発を予防できます。
治療を受けているのに改善しない、激しい頻尿が続く場合は、診断の難しい間質性膀胱炎の可能性もあります。泌尿器科の専門医に相談してみましょう。
女性が膀胱炎の時、アレは問題はありませんが、精神的なハードルが起こりやすいものです。パートナーの気持ちを思いやることも大切です。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ