自覚症状がないので放置しがちな脂質異常症は、進行すると様々な合併症を引き起こします。どんな病気なのか、どのようなリスクがあるのかをきちんと理解して、改善、予防を心がけましょう
進行すると怖い脂質異常症
多くの生活習慣病を引き起こす脂質異常症。他の生活習慣病と同じく、初期の自覚症状がありません*。血液検査でコレステロールや中性脂肪の値が異常と診断されても、痛くも痒くもないので治療せず放置しがちです。
しかし、進行すると心臓や肝臓、すい臓といった多くの病気の引き金になるので、きちんと治療をすること、脂質異常症にならないように、予防をすることが大切です。
*遺伝性の「家族性高コレステロール血症」は自覚症状があります。
病気の発見、治療
早期発見には血液検査が大切です。初期の自覚症状があまりない脂質異常症は、血液検査の数値でしか異常を見つけられません。
特別な検査はなく、定期的に健康診断を受け、動脈硬化が進んでいないかに注意し、症状が悪化する前に発見することが必要です。
血液を検査し、基準値よりも高い数値が一つでも出ると、脂質異常症と診断されます。
診断基準
LDLコレステロール (LDL-C) |
140mg/dl以上 | 高LDLコレステロール血症 |
---|---|---|
120mg/139mg/dl以上 | 境界域高LDLコレステロール血症 | |
HDLコレステロール (HDL-C) |
40mg/dl未満 | 低HDLコレステロール血症 |
トリグリセライド (TG) |
150mg/dl以上 | 高トリグリセライド血症 |
参考:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版 脂質異常症の診断基準
(空腹時の血液中の脂質) LDLコレステロール値は直接測定法を用いるか計算式で算出
*血液検査を受けるときは、正しい診断をするための注意事項がいくつかあります。
脂質異常症と診断されたら
血液中の脂質を下げ、動脈硬化の進行を防ぐことが治療の要。基本的には、食生活や喫煙など生活習慣の改善と、適度な運動です。場合によっては薬を使って治療を行います。
脂質異常症は食べ物が深く関係しているので、食生活の改善は特に大切です。高エネルギー、高脂肪の食品を控え、体内の余分なコレステロールを押さえて、中性脂肪が増えることを防ぎます。
運動も余分な脂肪の燃焼を助けるので、無理のない範囲で行いましょう。生活習慣改善の効果がなく動脈硬化が進む場合や、どうしても生活習慣を変えられない場合は、医師の指示に従って薬による治療も行います。
喫煙は動脈硬化にも悪影響を与えるばかりか、がんや呼吸器疾患にもつながります。禁煙するだけで、それらのリスクを1歩減らすことが出来ます。
脂質異常症の症状とは
脂質異常症は血液中の脂質が異常に増える病気で、高脂血症とも呼ばれます。
血液中にはコレステロールや中性脂肪など、生きていくうえで欠かせない脂質が含まれていますが、これらが多すぎても少なすぎても、脂質異常症と診断されます。
しかし、身体の痛みなどの自覚症状は、遺伝性の物以外、あまり感じられ無いので、病気に気付かず放置されてしまうのがほとんど。
血管に脂質が溜まって詰まり、悪化してから様々な症状が現れます。
脂質異常症は3つのタイプに分類
コレステロールは体中に運ばれて細胞やホルモンを作りますが、血液には溶けません。たんぱく質と結びつき、リポタンパクの一部となって血液中に溶け込みます。
コレステロールが悪玉になるか善玉になるかは、リポタンパクの中の密度が関係しています。
悪玉(LDL)コレステロールが多いタイプ
脂肪が血管にこびりつきやすく、血の流れが悪くなり、動脈硬化の要因になる。LDLコレスレトールは、酸化しやすく血管に張り付いて詰まらせます。リポタンパクの中の密度は低い。
善玉(HDL)コレステローが少ない
血の流れをスムーズにする働きがあります。少なくなるとその働きが弱まり、血管が詰まりやすくなります。HDLコレステロールはコレステロールの掃除役で血液の流れをスムーズにします。リポタンパクの中の密度は高い。
中性脂肪(トリグリセライド)が多い
身体のエネルギー源となる物質ですが、多すぎると体内に悪影響を及ぼします。お腹の肉が目立ってきます。
リポタンパク
人間の血液には通常、コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4種類の脂質が含まれています。これらはリポタンパクによって血液に取り込まれます。
悪玉コレステルールのLDLが組織にコレステロールを運び、善玉のHDLが余分なコレステロールを掃除する役割を果たしています。
両方のバランスが大事ですが、悪玉だけが増えたり、善玉が少なくなったりすると、血の流れが悪くなり動脈硬化を引き起こします。
リポタンパクは、上記4種類の脂質の他に。アポタンパクなどのたんぱく質、ビタミンEなども一緒に運んでいます。
病気になるメカニズム
- 肝臓 コレステロールを生産し、エネルギーを貯蔵する
- 悪玉コレステロール 肝臓で合成され、LDLという入れ物に乗って体内に運ばれる
- 動脈 血管に中性脂肪が増えると、LDLコレステロールを増やし、HDLを減らす
- 善玉コレステロール 体内で余ったコレステロールはHDLに乗り肝臓にためられる
食べ過ぎ・運動不足を放っておくと
血液を全身に届ける動脈脂質が増え、血管詰まりの原因となり、動脈硬化を起こす。
コレステロールや中性脂肪は、身体にとってある程度は必要です。これらを増やしすぎる原因は、食べ過ぎや運動不足などの悪い生活習慣にあります。
特に肉類や乳製品など動物性脂肪の多い食品、鶏卵や魚卵などコレステロールを多く含む食品が好きな人は、悪玉を増やしがちです。過度な飲酒も中性脂肪を増やしやすい。
善玉が少なくなる理由は、運動不足や喫煙など。まれに遺伝的な要因もあります。近親者に同じ症状を持つ人がいる場合は、要注意です。
脂質異常症が招く合併症
初期のうちは痛みなど自覚症状が全く無く、気づかないうちに進行しているのが生活習慣病の特徴ですが、脂質異常症も同じ。
症状が進行すると、脂肪が血管に付着して血液のながれが悪くなり、動脈硬化になります。動脈硬化も特に自覚症状はなく、異常に気づかないままでいることが多い。
脂質異常症が他の病気をまねく仕組み
脂質異常症の怖さは、脳卒中や心筋梗塞をはじめ、多くの生活習慣病を引き起こす点です。また、胆石症や脂肪肝などにも関わっているとされます。
早期に見つけて適切な治療を受けることが大切です。最悪の場合、死の危険もあります。
初期
血中コレステロールや中性脂肪の割合が多い。血液検査で脂質異常症と診断される
動脈硬化
食生活の乱れから、血中の脂肪もバランスが崩れる。だんだん動脈の内側が狭くなり、血の流れが悪くなる
合併症の発症
動脈硬化は脳卒中や心臓病を引き起こす。この段階では様々な自覚症状が現れる
脂質異常症の合併症
- 脳卒中(脳梗塞、脳出血)
- 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
- 高血圧
- 腎臓病
- 脂肪肝
- 胆石症
- 急性膵炎
- 痛風
まとめ~血液検査の結果をきちんと見直そう
40歳をすぎれば、身体のどこかに良くないところがあるのは当たり前。特に肥満がめだって生活習慣病のリスクが増えてくる年代です。
血液検査の結果をきちんと見直し、異常が有れば放置しないことが重要です。
生活習慣病は、様々な病気がお互いに関わりあっています。一つの病気を治療しても、他の症状も治るわけではなく、一つ一つの原因について、きちんと治療していくことが大切。日々の生活習慣が健康に大きく関わっているのです。
自覚症状が出る前に、一度あなたの生活習慣を見なおしてみてください。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ