中耳炎は高齢者に起こりやすい種類もあり注意が必要です。聞こえが悪いなどの症状を加齢のため、と放置して重篤な症状をもたらす場合もあり、適切な治療を受けるためにも、中耳炎についての知識をお伝えします。
中耳炎の治療、対処のポイント
中耳炎は適切な治療を受ければ完治が可能な病気です。聞こえが悪いなどの症状があり気になる場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。
中耳炎はときとして顔面神経麻痺、髄膜炎等重篤な症状をもたらすこともあるので、一日も早い治療が重要です。
早期発見と、日常の生活の注意点
小さな子供ではうまく症状を伝えられないので、発見が遅れてしまうこともあり、また、高齢者も自分では気づかなかったり、加齢が原因の難聴と思って放置していることもあります。
周りの大人や家族が日常生活での変化から、いつもと違う様子などを見逃さないようにして、早期に発見することが大切です。
話す声が大きくなったときも、耳の聞こえが悪くなっている場合があります。以前より大きな声で話すようになったら、聞こえのチェックを。
- 呼びかけても返事をしない
- 良く聞き返す
- 言葉が少ない
- テレビの音が大きい
- 落ち着きが無い
など
日常生活の注意点
中耳炎は後述のように、種類によって治療方法が異なってきますが、普段の生活では以下のようなことにも注意しましょう。
- 痛みや熱がある間は安静にする
- 洗髪や入浴は医師の許可が出るまで控える
- 鼻を強くかまない
- 鼻水をすすらない
- 自己判断で治療を中止しない
種類別の症状と特徴
中耳炎の種類 | 症状 | 特徴 |
---|---|---|
滲出性中耳炎 |
|
聞こえに関する症状はあるが、痛みや発熱は起こらない。 そのため他の種類に比べて、発症に気づきにくい。 |
急性中耳炎 |
|
耳の痛みが最も多い |
慢性中耳炎 |
など |
耳だれを繰り返したり、難聴が継続する |
真珠腫性中耳炎 |
など |
鼓膜の周りの骨が壊されるので、耳の機能が傷害されたり、顔面神経麻痺や髄膜炎などの重篤な症状を引き起こすこともある。 |
中耳炎の種類と特徴
耳の「中耳」と呼ばれる部分に異常が起こる病気で、聞こえが悪い原因になります。
一般に中耳炎は子供に起きる病気と思われがちですが、高齢者に多く見られるのは、滲出性中耳炎です。
中耳炎は以上が起こる原因により、大きく以下の4つの種類に分類されます。
中耳炎の種類
- 滲出性中耳炎
- 急性中耳炎
- 慢性中耳炎
- 真珠腫性中耳炎
中耳炎の4つの種類
中耳炎の種類 | 原因・症状 | 特徴 |
---|---|---|
滲出性中耳炎 | 鼓膜の奥に液体がたまる |
|
急性中耳炎 | 細菌やウイルスに感染する |
|
慢性中耳炎 |
|
|
真珠腫性中耳炎 | 鼓膜の上皮が中耳に入り込む |
|
滲出性中耳炎
鼓膜の奥に液体がたまるタイプです。子供や高齢者に多く見られます。
中耳は耳管と呼ばれる管により、鼻の奥に当たる上咽頭とつながっています。
耳管には中耳内の圧を調整したり、中耳にたまった分泌物を上咽頭に排出する機能があり、これらの機能が傷害され、中耳に液体がたまることで滲出性中耳炎が起こります。原因としては
- 鼻や喉の炎症が耳管に波及
- 通常閉じている耳管が、あくびなどで筋肉が動いて開くが、高齢者の場合その筋力の低下
- 上咽頭ガンの症状(非常にまれなケース)
などがあります。
鼓膜の奥に液体が溜まることで聞こえが悪い、耳が詰まった感じがするなどの症状があります。痛みや発熱は無いので、気づきにくい病気です。
急性中耳炎と慢性中耳炎
急性中耳炎
鼻や喉の細菌やウイルスが、耳管を通り中耳に感染して炎症を起こします。子供に起こりやすい種類で、最も多い症状は耳の痛みです。
鼓膜の奥に膿がたまるので、聞こえが悪くなったり耳が詰まる感じがします。膿が更にたまると鼓膜が破れて外に漏れる「耳だれ」がおこり、小さな子供では発熱や頭痛も見られます。
慢性中耳炎
急性中耳炎が3か月以上続く状態を、慢性中耳炎と言います。鼓膜が破れて孔が開いているため、耳だれを繰り返し、聞こえが悪い状態が続きます。
真珠腫性中耳炎
詳しい原因は不明ですが、鼓膜の上皮が中耳に侵入して袋状になり、そこにできた「真珠腫」(耳垢などがたまってできた塊)が周りの骨を破壊していきます。広い意味では慢性中耳炎に含まれます。
聞こえが悪くなる原因は、耳小骨が破壊されることです。
- 難聴が更に悪化 ←内耳側に進行して蝸牛が壊される
- めまいが起こる ←平衡感覚を司る三半規管が壊される
- 顔面神経麻痺 ←顔面神経が通る骨の管が壊される
- 髄膜炎 ←中耳の上方に進行
重篤な症状をもたらすこともあるので、一日も早く治療を受けることが必要です。
診断の確定
中耳炎かどうかは、顕微鏡で鼓膜の状態を確認する「耳鏡検査」などが行われます。
- ティンパノメトリー検査 滲出性中耳炎が疑われる場合に鼓膜の動きを見る
- CT検査 真珠腫性中耳炎の場合最終的に行われる
これらの検査で診断が確定します。
<2>治療
中耳炎の治療は薬物療法や手術となります。中耳炎の種類や患者さんの状態に応じて適切な治療法が行われます。
医師の指示に従って治療を続けること、前述した日常生活の注意などを守ることが大切です。
中耳炎の種類 | 治療法 | 補足 |
---|---|---|
滲出性中耳炎 |
|
鼻や喉の炎症を抑える薬や、マクロライド系の抗菌薬を服用 効果が得られない場合は、中耳にたまった液体を手術で排出する |
急性中耳炎 |
|
解熱鎮痛薬や抗菌薬を内服するが、痛みが強い場合などには手術が必要になることもある |
慢性中耳炎 |
|
解熱鎮痛薬や抗菌薬の内服、抗菌薬の点耳が中心。 場合によっては手術が行われることもある |
真珠腫性中耳炎 |
|
手術が必須。 鼓室形成術では、真珠腫を取り除き耳小骨などの壊れた組織を再建する |
滲出性中耳炎の治療
基本となるのは、耳管の機能が傷害された原因を取り除く治療です。鼻や喉に炎症がある場合は、それを抑えるための薬物療法が行われます。
また、少量の「マクロライド系抗菌薬」を長期服用する治療も主流となってきています。この治療法は、免疫や耳管にある繊毛の働きを高める目的で行います。
これらの治療で鼓膜の奥にたまった液体が排出されない場合は、「鼓膜切開術」や「鼓室内チューブ留置術」などの手術が行われます。
鼓室内チューブ留置術
鼓膜を小さく切開して、直径2~3mm程度のチューブを留置する治療法です。チューブを通して鼓膜の奥にたまった液体の排出を促します。
チューブは6ヵ月以内の短期間留置するものと、1~2年の長期間留置するものがあります。
入浴や洗髪は通常通り行えます。
高齢者などで耳管の機能の改善が期待できない場合は、チューブは常時必要になります。
急性・慢性中耳炎の治療
急性中耳炎
解熱鎮痛薬、抗菌薬の内服が中心です。痛みが強い場合などには鼓膜切開術が行われることもあります。
最近抗菌薬を内服しても治療困難な「多剤耐性菌」(様々な種類の抗菌薬が効かない)の出現で、治療困難なケースが増えていることが、急性中耳炎で問題となっています。
多剤耐性菌が出現する原因の1つに、自己判断で薬の服用をやめてしまうことが上げられ、急性中耳炎を完治させるためにも、医師の指示を守り治療を続けることが大切です。
慢性中耳炎
一般に解熱鎮痛薬や抗菌薬の内服、抗菌薬を含んだ点耳薬を耳の中に滴下する治療が行われます。
耳だれを頻繁に繰り返す、鼓膜に開いた孔が大きくて重い難聴がある、などの場合は、鼓膜を再生する「鼓膜形成術」などの手術も検討されます。
真珠腫性中耳炎の治療
鼓室形成術が行われます。これは耳垢などがたまってできた真珠腫を取り除くとともに、破壊された組織を再建して症状の改善を目指す手術です。
鼓膜形成術や、耳たぶの後方にある「乳様突起」と呼ばれる骨の出っ張りを取る「乳様突起削開術」などが含まれます。
耳小骨を再建する場合は、損傷した耳小骨を加工したり、耳の軟骨や人工耳小骨を使用します。
まとめ~耳の聞こえが悪い場合は受診をおすすめ
耳の聞こえが悪いのは加齢のせい、と放置していると聴力の低下につながりますが、痛みや発熱がなくても中耳炎を発症しているかもしれません。
中には重篤な病気に進行する場合もありますので、高齢者の難聴は周りの人も日常の変化などに注意することが必要です。
中耳炎は適切な治療を受ければ完治が可能です。早いほど良いので、早期発見に勤め、気になる症状がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。
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