自宅で家族の介護をする人の日常は、健康状態を悪化させる要因が多く、高血圧になりやすいことがわかってきました。高齢者の介護をする家族の健康を守り、高血圧を予防するポイントをお伝えします。
高齢者の介護を自宅でしている家族の生活環境と高血圧
介護保険制度が2000年にスタートし、介護される人への支援は整備されてきています。一方、自宅で介護をしている家族介護者への支援は、非常に手薄なのが現状です。そのため心身の健康に様々な課題があるという実態が徐々にわかってきました。
高齢化、核家族化が加速する中、老老介護も増加しています。自宅で介護をする介護者の身体的、精神的負担を知ることで、介護者の健康をどのように守っていけば良いかを考えましょう。
在宅介護の現状
2009年の調査報告ですが、自宅で家族の介護をしている女性の健康状態を調べたところ、46%の人に高血圧があると言う結果になりました。
介護をしていない同じ世代の女性で高血圧の人は34%ですので、高い割合です。更にその人達の約半数は、自分が高血圧であることを自覚していなかったこともわかりました。
I緒言
現在、我が国において急増している家族介護者においてもあらゆる健康問題が報告されつつあるが、高血圧を含む循環器疾患についても問題とされている。女性の家族介護者約150名を対象とし質問紙調査を行った我々の先行研究からは、非介護者との比較から介護者において高血圧の有病率が高いことが明らかになっている。(p1)
V考察
本研究では在宅で要介護者を介護している家族介護者と、一般住民健診参加者で介護をしていない者との比較から「脳卒中発症予測プログラム」を用いて脳卒中発症リスクを検討した。その結果、家族介護者においては非介護者群よりも有意に高いことが明らかになった。(p7)
出典:重度要介護者の在宅介護を行う家族介護者における脳卒中発症リスクの検証及びプログラムの提案 第1章より 平成26年3月(後述)
自宅介護の家族の高齢化と高血圧
日本は社会の高齢化が進み、介護される人だけでなく、介護する人の高齢化も進んでいるのが現状です。
血圧は一般に加齢とともに上昇する傾向があるので、高齢になるほど高血圧に注意する必要があります。
自宅で高齢者の介護をしている家族の生活には、
- 睡眠不足・不眠
- 精神的ストレス
- 過労
- 食生活の乱れ
と言った、高血圧になりやすい危険因子が見られます。高血圧は脳卒中の要因ともなるので、自宅で介護をする家族の脳卒中も増加傾向にあります。
睡眠不足・不眠
一般に睡眠中は日中よりも血圧が低下して、体が休息モードになります。睡眠は血圧を正常に保つために重要な働きをしているので、これまでの研究でも、睡眠不足や不眠が高血圧と深い関連があるという報告があります。
自宅で介護をしている家族は、夜中に体位交換やおむつ交換など、患者さんの介護で何度も起きなければならないことが多く、夜間でも血圧があまり低下しない傾向にあることがわかりました。
家族介護者の夜間介護による血圧日内変動への影響に関する研究
- 精神的ストレス
- 自宅で介護していると
- 先が見えない介護生活
- 誰もねぎらいの言葉をかけてくれない
などの不安や精神的疲労などを感じている家族が少なくありません。精神的ストレスの大きい生活が続くと、高血圧の危険因子の1つとなります。
過労
過労も高血圧の危険因子となります。自宅柄の介護は、断続的に24時間、休みがありません。体の疲れが積み重なり過労になる傾向があります。
食生活の乱れ
自宅で介護していると、買い物や調理、食事など自分のための時間がなかなか取れない状態になりやすく、栄養バランスが偏りがちになりがちです。
また、塩分の摂りすぎは高血圧の要因となりますが、自宅介護者は、指定内皮通り塩分摂取量が約30%多い、と言う調査報告もあります。
自宅介護者の食生活の傾向
肉屋魚介類を中心とした主催や、ご飯、パンなどの主食の摂取量が多め、野菜、海藻、豆類などの副菜が不足しがちな傾向があります。
介護者の健康管理
自宅で介護している家族の血圧は、健康診断や病院で測定したときは正常範囲内でも、夜間や早朝などに高血圧になる人が少なくないこともわかってきました。
血圧の状態を性格に知るためには、自宅で血圧を測ることも大切です。
家庭用の簡単な血圧測定器も色々あります。1日2回、決まった時間(よる寝る前と朝起きた時)に測定して健康管理に役立てましょう。
血圧が高い場合の治療と対策
高血圧の危険因子が高い傾向にある自宅の介護では、家族の健康管理をしっかりすることが大切です。血圧を測定した結果血圧が基準値に該当した場合の対処は
- 医療機関を受診
- 夜間の介護リズムをつくる
- 食生活を改善
- 早めに支援をもとめる
などをしてください。
医療機関を受診
介護のために夜間頻繁に起きなければならない、などの介護生活を詳しく伝えます。その上で、生活習慣の改善や、降圧薬の服用などの治療が行われます。
夜間の介護リズム
夜間も起きる必要がある場合、突然起こされるよりも定期的に起きるほうが、血圧の急激な上昇が抑えられることが調査でわかってきました。
例えば、トイレの時間を見極めておむつ交換を行う時間を定期的にしたり、夜間の介護サービスを利用するなど、介護者自身の夜間の介護リズムを作るようにします。
食生活を改善
ファストフードや出来合いのお惣菜などは避け、塩分のとりすぎや栄養バランスが悪い食事など、高血圧につながりやすい食生活を改めます。
早めの支援
介護している人が疲れる前に、早め、早めに介護サービスなど周囲からの支援を受けることも大切です。毛甘メージャーや訪問看護師などに相談する、など第三者を交えて対策を立て、介護者の負担をできるだけ軽くする工夫をします。
参考
重度要介護者の在宅介護を行う家族介護者における脳卒中発症リスクの検証及びプログラムの提案 第1章より 平成26年3月(//www.nrs.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/09/6ef36bae888f4cb7944d6f6c828234e8.pdf)研究代表者:森祥子(名古屋大学大学院医学系研究科)
名古屋市療養サービス事業団
まとめ~家族の健康も考える
超高齢化社会となりつつある日本、高齢者の介護を自宅でする家族の健康も、考える必要があります。
実際に介護する家族の高血圧のリスクは高く、脳出血にもつながります。睡眠時間の確保、塩分控えめのバランスの良い食事、外部支援を利用するなど負担の軽減を考えましょう。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ