バーンアウトして「看護師を辞めたい」と深刻に悩んだ場合、多くの看護師が転職か離職を選択します。辞めて他の仕事についた人、子育てや介護など家事に専念している人など、看護師の仕事自体をやめてしまった潜在看護師は、60万人前後いるとも。
潜在看護師の掘り起こしに有用と思われる5つのこと
辞めた理由となった問題が解消すれば、復職したい、と思っている看護師も少なくありません。このような潜在看護師の掘り起こしをすることで、看護師不足を解消するためには、復職を妨げる問題点をクリアする必要があります。
- 夜勤免除
- 短時間勤務
- シフト作成の工夫
- 職場復帰前の訓練
- 情報提供
あちらを立てればこちらがたたず、でどこかにしわ寄せが言ってしまうこともあり、どれが良い、と言えないのが現状ですが、誰もが看護師の仕事が好きなのには変わりはありません。
いろいろな知恵を出し合ってお互い様、と笑顔で働ける環境が理想ですが…
辞めた理由、復職を妨げている問題
ひとりひとり違いはありますが、多くの場合、夜勤が主なきっかけとなっています。
「また働いても良い、これなら働ける」と思える労働環境があれば、潜在看護師の多くは働きたいのです。
- 結婚を機に辞めたけれど、子育ても一段落したので復職したい。でもブランクが不安
- 仕事はしたいけれど、家庭も大事にしたいので、時間に余裕が欲しい
- 勤務シフトがきつくなければ働ける
などです。これらに有用と思われるのが上で挙げた5つ。病院の工夫で対応できることもありますが、制度自体を整える必要があることもあり、難しい問題です。
離職の裏事情
役所に提出されている看護師の「退職理由」の項目で多いのが
- 本人の健康問題
- その他(他施設への転職、定年退職など)
- 人間関係
なのですが、各施設の看護担当責任者が回答、施設長の了承をえて提出しています。ここで気になるのが
- 「勤務時間が長い」
- 「超過勤務が多い」
- 「休暇が取れない」
- 「夜勤の負担が大きい」
の回答件数が先の3つの5分の1~6分の1と極めて低いことです。経営者にとって都合の悪い理由は役所に提出できない、という心理が無いとは言えません。
このように管理職側と労働者側では、離職の理由についての認識に大きな開きがあるのです。離職の原因が労働条件であると認識していない事は、潜在看護師が復職をためらう原因ともなります。
夜勤免除
看護の仕事が「24時間休みなし」である以上夜勤は切り離せない業務です。2交代、3交代、夜勤専従看護師などで対応しています。
病院によっては、子育てや介護など特別な事情がある期間、夜勤免除の制度がある場合もあるのですが…
しわ寄せが…
夜勤免除者がいると、その分独身者に夜勤のしわ寄せがいき、月に2交代夜勤が7~8回もあって、ほぼ夜勤専従看護師状態になってしまうことも。
「いずれ自分も助けて貰う立場になるから、大丈夫がんばる」、「結婚したら続けられないから辞める」
どちらが良いとはとても言えません。
短時間勤務
潜在看護師の多くが短時間勤務を望んでいることが、日本医師会の再就業アンケートの回答で報告されています。家庭で育児に追われているので、「復職はしたいのだけれど、短時間勤務でないと無理」という状況。
短時間正職員制度を取り入れている病院は、多くはありませんが、導入後の離職率が制度のない病院と比較して低いという報告があります。
短時間正職員制度
正職員のまま週の労働時間をパート並みにして、月給やボーナスは労働時間によって比例再配分する仕組み。
使用者側にも、単純計算だが、正職員から短時間正職員にした場合、その給料の差額で短時間正職員をもう一人雇用する、あるいは夜勤人員確保の原資にあてられるというメリットがある。
改正育児介護休業法
平成10年に施行された改正育児介護休業法で3歳未満の子を持つ労働者に対し、1日6時間の短時間勤務制度を儲けることが使用者側に義務付けられました。
労働者から申請があった場合、使用者は所定外労働の免除を制度化しなければ行けません。
実現は困難
しかし病院では、未就学児がいる看護師の6割ほどが、夜勤をこなしていること、制度の利用対象者が多い事から、実現は極めて困難なのが現実です。
長時間勤務の大きな原因が「長年の慣習・習慣」と挙げられ、看護師の仕事が「聖職」とされてきたことから、経営者側の労働管理意識の多少に左右されることが、無いとも言い切れません。
シフト作成の工夫
「日勤・深夜」「準夜・日勤」というシフトで「ほとんど休みがない」「休みは寝ているだけ」でバーンアウト。看護師を辞めたケースも多い。
看護師のシフト、工夫次第では「準夜・やすみ」として2連休を組み込むことも可能になります。管理者側が休みを出来るだけ入れようとすれば、重夜勤明けを休みにすることを基本にシフトを組めるはずです。
この発想が有れば、2交代でも3交代でも夜勤の勤務間隔は空きます。
夜勤に振り回されないためには
病院側の事情、個人の希望なども有り、難しい問題では有りますが、準夜勤明けの日は休みとし、有給休暇を1日入れて2連休を4回。「日勤・深夜・準夜・休み・休み」とするとかなり気持ちが楽。
「日勤・深夜」のシフトでは、日勤では早く帰宅できるように、就業時間を早めることで対応できます。
職場復帰前の訓練
復職したい、と思う潜在看護師の多くは、結婚、出産、介護などを理由に離職しています。離職理由が解消すると「やっぱり看護師として働きたい」と思うのですが。医療の世界は日進月歩。職場復帰をしたくても、「ついていけるか自信がない」という場合も多いです。そのような潜在看護師には、職場復帰前に訓練、再就職支援が重要。
就労支援
職場復帰の不安を解消するための、研修カリキュラムを日本医師会などで行っています。1日3~4時間、5日程、最新の医療や看護の動向、看護技術演習などの講習が受けられます。
07年度から講習を行っている大阪府医師会では、講習修了者の約5割が早期に再就業しているとのこと。
情報提供の必要性
前述の講習のように、就労支援は色いろあるのですが、潜在看護師にその情報が提供されていなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。
しばらく現職から遠ざかっていると、情報に枯渇して、復職を断念してしまうケースも少なくありません。検索すればある程度の情報は探せます。
より多くの潜在看護師の掘り起こしのために
しかし、的確な情報を探せる看護師ばかりとは限りません。気軽に就労相談ができる窓口や、情報が潜在看護師に行き渡る手段の構築など、考えるべきことはたくさんあります。
まとめ~看護師不足に就労環境を整える
潜在看護師は約60万人ほどもいると言われています。離職した時の理由が既に解消し、復職したい、再就労したいと思っているケースも多い。
そのような潜在看護師が、就労しやすい労働環境、研修制度を整え、情報提供をすることが看護師不足の解消に有用です。
またそれが、看護師の離職率をさげることにもなり、看護師不足の原因の一つを取り除くことにもなるでしょう。
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