骨粗しょう症の人が転倒すると、大腿骨のつけ根などを骨折したりして寝たきりの状態になりやすい。高齢者では寝たきりから認知症を発症することも少なくありません。骨折を予防するために、転倒を防ぐ生活上の対策を2つお伝えします。
転倒を防ぐ生活上の2つの対策
高齢者では、転倒による骨折で動けなくなり、寝たきりや認知症を発症するケースが少なくありません。骨粗しょう症があるとちょっと転んだだけで、普段骨折しないような手首や大腿骨のつけ根などを骨折しやすいので特に注意が必要です。
また、一度骨折するとその後さらに骨折しやすくなるので、特に一回目の骨折を防ぐのが重要です。そのためには転倒を防ぐ工夫が大切。生活上の対策で転倒を予防するには、運動と住環境の見直しの2つの対策があります。
住環境の見直しで転倒予防
転倒の多くは家の中で起こっていて、わずかな段差でつまずくこともあります。筋力が低下して足が上がりにくくなり、以前は問題がなかった段差や、カーペットと床の境目などにつまずいて転倒することも増えます。
住み慣れた家だから問題はない、と決めつけずに、速めに家の中に転倒の危険性が潜んでいないかどうかを見直すようにしましょう。
見直しのポイント
トイレ 手すりの設置
高齢になり血圧が変動しやすくなって、排尿後に立ち上がったときに立ちくらみが起こり転倒することもあります。立ち上がる時に手すりにつかまると、血圧が変動しても転倒しにくくなります。
廊下 手すりの設置、足元の照明
夜中にトイレにいこうとして暗闇で周囲がよく見えずに転倒することもあります。足元を照らす照明で歩きやすくし、手すりにつかまることで転倒しにくくなります。
玄関 踏み台やスロープの設置
上がりがまちが高い場合は、安定した踏み台を置いたり、スロープを設置したりします。手すりも設置します。玄関マットが滑らないように固定します。足元の照明もあるとよいでしょう。
浴室 手すり、滑り止め、すのこ
浴槽に出入りする際につかまれる手すりの設置。浴室と脱衣所に段差がある場合は、浴室の洗い場にすのこを敷いて段差を小さくします。浴槽の底には滑り止めを敷きます。
居間 整理整頓
電気コード、散乱している新聞、雑誌、座布団、めくれたカーペットなどは整理します。脚をひっかけてつまずいたり、転倒することが有ります。
電気コードは壁や部屋の隅に固定し、床にものが散乱しないように決まった場所に片付けます。カーペットがめくれないように端を床に固定します。
玄関スロープなど、自治体の福祉課などで借りられることもあるので、相談してみましょう。
運動
筋力の低下を防ぐには、運動が効果的です。運動の目的には、主に以下の2つがあります。
- 背筋・下半身の筋力アップ
- バランス感覚の維持
背筋が弱くなると前かがみの姿勢になり、つまずきやすくなります。また下半身の筋力が弱くなると、足を上げたり踏ん張れなくなり、転びやすくなります。高齢になるとわずかなことでバランスを崩し、転倒することが増えてきます。
おすすめの3つの体操
筋力をアップし、バランス感覚を維持することで転びにくくなります。骨粗しょう症の患者さんの運動は、日常生活で誰でも簡単、安全に行うことのできるものが適しています。お勧めの運動は、
- フラミンゴ体操
- スクワット体操
- 胸はり体操
です。どれも簡単にできる体操なので、毎日続けましょう。
フラミンゴ体操 足の筋力とバランス感覚を鍛える
・転倒しないように机に両手を置き、1分間片脚立ちをする
・軸足でしっかりと立ち、片足を床から少し上げる
・できるだけ背中を真っ直ぐにする
・左右1分間ずつ、1日3回を目安に行う
スクワット体操 お尻の筋肉をきたえる
・机に両手を置き脚を肩幅に開く
・椅子に腰掛けるようなつもりで1、2、3、4と数えながら膝をゆっくりと曲げる
・同じように4つ数えながら膝を伸ばす
・つま先より膝が出ないように注意する
・無理のない程度に曲げる5~6回を1セットとし、一日3セット以上を目安にする
胸はり体操 背筋をきたえる
・椅子に深く腰掛け、両腕を脇に下ろす
・胸を張るように手のひらを親指から外向きに回転させ、左右の肩甲骨を中央に寄せる
・10回を1セットとして一日3回以上を目安に行う
運動の注意点
- 呼吸を止めない
- 回数やスクワットの膝の曲げ方などは、自分の体の状態に合わせて調整する
- 痛みを感じたり、運動後に痛みがある時は担当医に相談する
薬の影響
高齢になると、様々な病気の治療で使っている薬の影響で、ふらついたり足腰に力が入らなかったりして転倒することが有ります。転倒が起こりやすいと考えられる薬には、降圧薬、睡眠薬、抗うつ薬などがあります。
治療のために必要な薬を正しく使いながら、転倒を防ぐことが重要です。薬を飲んでふらつきなどを感じるときは担当医や薬剤師に相談しましょう。
薬の管理と骨粗しょう症との付き合い方
高齢者の多くは複数の医療機関を受診し、多くの種類の薬を使っています。すべての薬について、1冊の「お薬手帳」に記録し、担当医や薬剤師に見せると薬の重複などを防ぐのに役立ちます。
「骨粗しょう症だから」、「転ぶのが怖いから」と消極的にならず、自分の骨の状態に合わせて薬を使ったり、運動で少しずつ自信をつけ、前向きに生活できるようにします。
まとめ
住環境を見直し、運動で筋力をつけることで転倒のリスクは大きく減らすことが可能です。
骨粗しょう症の予防、治療も必要ですが、生活上でできる対策は早めに行うことをお勧めします。高齢者が健康で元気に過ごせることは、家族の健康にも大きく影響してくるからです。
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