痔を持つ人のうち、男女ともに約半数の人がいぼ痔です。切れ痔については前回お伝えしています。今回はいぼ痔について女性特有の原因や特徴、治療について簡単にまとめました。
妊娠・出産で痔になりやすい
女性は痔になりやすい特有の理由があリますが、特に痔の中でもいぼ痔は妊娠中や出産をきっかけになりやすくなります。
- 便秘になりやすい
- 妊娠すると骨盤内の血流が多くなり、うっ血しやすくなる
- その状態で子宮が大きくなることで肛門が圧迫され、いぼ痔を発症しやすくなる
- 出産で強くいきむことも原因のひとつ
いぼ痔には、内痔核と外痔核があります。
内痔核と外痔核
肛門は奥行きが薬3cmあり直腸とつながっています。肛門と直腸の境界線より内側にできるものを内痔核、外側にできるものを外痔核と呼びます。
内痔核
- 肛門の内側の直腸よりに出来ます。特徴的な症状は排便時の出血です。
- 痛みを感じない部分にできるので、痛みはありません。
- 出血量はトイレットペーパーや便に少し血が付く程度の場合も有れば、ほとばしるように出血したりすることもあるなど様々です。
出血は排便時だけで収まるのでそのまま放置しがちですが、多くの場合ゆっくり進行していぼが肛門の外に出て来る「脱出」という症状が現れてくるようになります。
脱出の段階になるといぼが下着に触れるので、異物感や痛みを感じるようになります。
外痔核
肛門の外側にある日突然できる「血豆」のようなものが外痔核です。
内痔核と比べると出血は少ないですが、痛みを感じる部分にできるので、強い痛みを感じます
とりあえず自宅でできる痔を治す方法は?
外痔核が腫れて痛い、内痔核の出血がひどいばあい専門外来を受診するのが一番ですが、痔の薬は薬局でも購入できるので、症状などを薬剤師に伝えて相談してください。
便秘や下痢など便通異常がある場合は、その改善も重要です。とりあえず自宅でできる処置を覚えておきましょう。
外痔核が腫れて痛い
突然腫れて痛い時、通常1週間位で痛みは軽減しますが、少しでも早く痛みを軽くするには、静脈瘤の血栓、炎症を抑えるために以下のような対処を行います。
- 肛門を温める
温水洗浄する、入浴する、座浴*する、暑いタオルをお尻にしばらくあてる、カイロをタオルなどに包んで肛門にあてる
*お尻が入る大きさのたらいのような容器にお湯をはり、お尻を浸けて温めます。 - 座薬を使う
一日2回くらい患部に塗る、肛門の中へ挿入する
*下着が薬で汚れるのでおりものシートなどの利用をおすすめします。なければちょっとごそごそしますが、トイレットペーパーを小さくたたんで利用しても良いでしょう。 - 日常生活の注意点
重いものを持つなどの、腹圧を上げるような運動や仕事は控えるようにします。飲酒も控えます。
破裂して出血した場合 外痔核は自然に破裂することがあります。出血したら温めて痔の軟膏を塗り、肛門にナプキンなどをあてておきます。
内痔核の対処
出血が主な症状で痛みは少ないですが、進行すると排便時の脱出がひどくなります。脱出が習慣となったものを脱肛と言います。
出血がひどい
排便時にポタポタと潜血が落ちる、排便後トイレットペーパーに血がつくなどの場合は、外痔核と同じように肛門を温めましょう。
止血作用のある座薬を挿入します。便が固い場合は緩下剤などの服用も良いですが、食事の改善などで正常な便の柔らかさを維持できるようにすることが大切です。
脱肛
内痔核が排便のたびに脱出することがあります。
痛みがでたり出血がひどくなる、炎症を起こす、など椅子に座るのも辛い、という状況になったりします。
還納の仕方
- 脱肛が頻繁に起きるようになったら、肛門の中に戻す(還納)をします。戻りにくい時は、仰向けに寝て行います。
- お尻の下にクッションなどを入れ高くする
- 痔の軟膏(ワセリン、オリーブオイルなどでもよい)をガーゼに塗る
- 聞き手の人差し指にそのガーゼを添える
- 脱肛した内痔核と一緒にガーゼごと指を肛門内に入れるようにして戻す
- 反対側の指で押し込んだ内痔核がでてこないようにガーゼを押さえながら入れた指を戻す
- 複数個ある場合はこれを繰り返し、少しずつ分けて行う
- 脱肛は全部完全に戻す
中腰の姿勢でお尻を上に突き出すような姿勢で行っても良いです。トイレで便座から腰を浮かし、少し前かがみの姿勢でも挿入しやすいと思います。
脱肛をそのままにしておくとうっ血がひどくなり重症化して、座ることもできなくなってきます。
脱肛を戻すことも難しくなり、不可能になると嵌頓痔核(かんとんじかく)と言う状態になる場合も。
早めに対処して進行しないようにすることが大事ですが、脱肛を還納できなくなったら、必ず専門医を受診してください。
いぼ痔の治療
軽症であれば市販薬を用いることでも症状の改善が期待できますが、重症化した場合は医療機関で適切な治療を受けることが必要です。
いぼ痔は切れ痔と同じく、薬物療法が基本で重症の場合は手術をすることもあります。治療薬は主に座薬、軟膏、軟便剤で、この3つの薬剤を組み合わせた薬物療法を行います。
座薬と軟膏には炎症を抑える効果や止血効果があり、
- 内痔核には、切れ痔同様座薬または肛門に注入するタイプの軟膏を用います。
- 外痔核には塗布用の軟膏を直接塗布します。
- 軟便剤(内服薬)は便を程よく柔らかくし、排便時の痛みの軽減や傷を治りやすくします。
また、
- 内痔核が脱出するようになった
- 出血により貧血が起きている
などの場合は手術を行います。最近は注射療法などを行うことも増えてきました。
注射療法
内痔核の脱出や出血がひどい場合に、硬化剤を注射器で直接患部に注入する治療法です。硬化剤の作用で内痔核が小さく固まり、脱出や出血が改善されます。
日帰りで受けることも可能なので、患者さんの負担は非常に少ない治療法と言えます。
注射療法の他にも、日帰りが可能な様々な治療法があるので、医師と十分相談することをおすすめします。
まとめ
痔の中でも約半分の人がいぼ痔です。内痔核は痛みはあまりなく、排便時の出血が主な症状ですが、進行して脱出することもあります。
脱出した内痔核は肛門に押し戻します。自宅での対処は患部を温めることが重要です。
痛みが軽減したからと安心せず、専門機関を受診することをおすすめします。また、再発防止のため、生活習慣の見直しも需要です。
女性の痔は恥ずかしがらずにきちんと治療を
痔は男性に多い病気ではなく、女性も普通に発症しますが、恥ずかしさから一人で悩んでいたり、放置していて悪化させてしまうことも少なくありません。
まず、痔のことを知ることが大切です。女性特有の痔になりやすい原因や痔の特徴、治療、自宅での対処など、基本の知識を確認した上で自分の状況を更に詳しく把握して対処していきましょう。痔の原因や予防などについてはこちらの記事も是非お読みください。
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