健康診断は結果を見て終わり、ではなく、特に血圧、血糖値、中性脂肪…いわゆる生活習慣病のサインを見逃さないことが大切。正常の範囲内でも、注意したほうが良い項目があるかもしれません。健康診断の結果の見方、対処法をお伝えします。
新人の皆さん、新しいスタートおめでとうございます。雇入れ時健康診断の結果は?健康診断の項目によっては、結果が思わしくない数値はありませんか。
健康診断検査結果の見方と対処法
ほとんどの人が毎年健康診断を実施し、その結果を受け取っていますが、「要治療」となっていても自覚症状がないと、つい放置しがちなのも事実。不都合な真実には目をつぶってしまうものです。また、正常値でも注意したほうが良いこともあります。
健康診断の結果をきちんと活用することで、生活習慣病の予防や、病気の早期発見、早期治療に繋がります。そのためには、健康診断の項目について、何がわかるのか、どんな注意をすれば良いのかを知ることが大事です。
ここでは定期検診で一般に行われる健康診断の項目や、結果の見方、対処法をお伝えします。
検査結果で指示があった時
健康診断は病気を早期に発見し、健康維持に役立てるためのものです。1つの検査の結果の異常が軽度でも、他の要因と合わさると危険度が高まる場合もあります。
こんな時はどうしたらいい?
要検査とされたら、指示された検査は必ず受けることが大切です。正常値であったり、軽度であっても、こんな場合は対処をしましょう。
- 血圧が高いけれど、体調は問題ない
- そんなに食べていないのに、血糖値が高め
- LDLコレステロールが下がらない
- 尿にたんぱくが出ている
- ASI、ALT、γGTP???
血圧が高いけれど、体調は問題ない
血圧は様々な要因で変化する上、測る時間や体調などでも大きく変わります。検査値が正常血圧の範囲を超えているときは、家で朝と晩に血圧をはかり、かかりつけを受診します。
飲酒、喫煙、肥満などがある場合、脂質異常症や糖尿病の可能性もあるので、生活習慣の改善が必要。
何もしないでいると、動脈硬化が進む危険性が高いです。休肝日を作る、禁煙、塩分を控え有酸素運動(ウオーキングなど)をゆっくり(1ヶ月に1kg程度の減量)行ないます。
正常血圧: 収縮期血圧130未満、かつ拡張期血圧85未満
高血圧: 修飾基血圧140以上、かつ/または拡張期血圧90以上*140/90mmHg未満でも家庭血圧が135/85mmHg以上の場合は仮面高血圧と呼ばれ、きちっとした管理が必要となります。
*日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」解説冊子 5P より
そんなに食べていないのに、血糖値が高め
- 中高年で前年より体重が増えた
- BMIが高めで血糖値があがった
このような人は危険信号!
再検査とされたら、必ず受けることが重要、合わせて腎機能や肝機能も検査してください。
糖尿病で血糖値が高い状態でも、早期には自覚症状がほとんどありません。放置していると深刻な合併症を引き起こす可能性があり、脳梗塞や心筋梗塞リスクも非常に高くなります。
炭水化物や脂肪のとりすぎに注意し、エネルギーの摂取量を抑えます。よく噛んで時間をかけて食べるのも食べ過ぎを改善することができます。ウオーキングなどの運動も効果的。運動や食事の改善で血糖値が下がらない場合は、薬によるコントロールが必要です。
血糖値の診断基準: 空腹時110mg/dl未満
LDLコレステロールが下がらない
血液中の脂質の異常は、主に食事や運動など生活習慣が原因です。加齢や閉経でLDLコレステロール値が高くなることもあります。
コレステロールが血管に付着し、動脈硬化状態になると、脳梗塞や心筋梗塞、狭心症などの重大な病気が発症しやすくなります。
肥満や高血圧、高血糖があるとさらにリスクは高まると考えられます。
生活習慣の改善を行ないますが、栄養バランスのとれた食事と適度な有酸素運動が効果的。総合病院で管理栄養士の指導を受けることもできます。
*診断基準
LDLコレステロール値 140以上
HDLコレステロール値 40未満
中性脂肪(トリグリセライド値)150以上出典: 動脈硬化の病気を防ぐガイドブック 日本動脈硬化学会
尿にたんぱくが出ている
一過性で検出される場合があるため軽視されがちな尿蛋白、重症になるまで自覚症状がほとんどない腎臓病のサインとなります。
尿検査で要請になった場合、血清クレアチニンや子宮体濾過量(eGFR)の検査を受けましょう。
糖尿病、高血圧、動脈硬化などに伴って腎機能が低下することが多いです。尿蛋白が出たら、他の病気がないか調べることが大切。
もともとの病気がある場合は、その病気をきちんとなおすことが重要です。
高齢者は、腎機能が落ちて「慢性腎臓病(CKD)」が進むと腎不全を起こすこともあるので、腎機能障害の早期発見は重要です。
減塩食、禁煙などで血圧をコントロールし、生活習慣の改善を行ないます。
ASI、ALT、γ-GTP???
血液中のAST、ALTなどの酵素は、幹細胞が壊れると高値になります。γ-GTPだけが高い場合は、過度の飲酒か脂肪肝の疑いがあります。
再検査で重い病気ではないと診断されても、将来肝機能障害を起こす危険性が高いといえます。
肝機能は低下しても自覚症状がなく、肝硬変まで進行してしまうともとに戻すことはできません。基準値を超えたら飲酒量を控える、休館日を設けるなどの対応が必要です。
肥満でなくても糖尿病などを発症する可能性もあるので、血糖値と中性脂肪にも注意しなければいけません。
基準値例(単位U/L)
AST 13~35
ALT 8~48
γ-GTP 7~60(男性)
健康診断の種類と検査結果・項目
健康診断には、
- 定期検診: からだに異常がないかどうかを幅広く調べるために、職場や自治体が行う
- 特定健康診断(特定健診): 生活習慣病などを中心に調べる
- 雇入れ時健康診断: 事業者が新たに労働者を雇い入れるときに行う
- がん検診: がんに特化
- 人間ドッグ: より詳しい検査
- オプション: 定期検診で指摘を受けた項目や、年齢や気になる項目を選ぶ
などがあります
検査項目
詳細は後述しましたが、主な検査項目は以下です。
- 身体測定: 慎重、体重、腹囲、BMI経産
- 血圧測定: 循環器系の状態を調べる
- 血液検査: 中性脂肪、コレステロール値、血糖値などの値を調べ、脂質異常症や糖尿病、腎臓…肝臓の機能障害を調べる
- 尿検査: 尿糖、尿蛋白などを調べ、腎臓、尿路の状態や糖尿病の有無を調べる
- その他: 胸部・胃のX線、心電図、視力、聴力などの検査
検査結果が出たら
病気の可能性がある場合に、
経過観察、要再検査、容姿密検査、要受診、要治療などの判定がくだされます。
生活習慣病の場合、問題点を指摘されたら、健康診断結果をもち、かかりつけ医か内科などを受診、再検査や精密検査の結果次第で、医師の指導や治療を受けましょう。
基準値の範囲内でも要チェック
検査結果の値が基準値の範囲内であっても、過去の検査値と比べ少しずつ基準値の範囲外に変化している場合は、生活習慣や食事の内容の見直し、運動する時間を増やすなどを心がけ、定期的に健康診断を受けて結果を上手に役立てます。
不調を感じたり自宅で測った血圧が高い時
血圧を1週間程度記録し、かかりつけ医に相談しましょう。
雇入れ時健康診断、定期検診は義務であり権利でもある
フリーランスの健康診断は自己責任ですが、事業者に雇われている場合は、毎年定期検診を受ける権利があり、また、受けなければいけません。
事業者は労働者に定期健診を実施する義務があります。(労働安全衛生規則第43及び44条。)
【雇入時の健康診断の実施義務】(労働安全衛生規則第43条)
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、その労働者に対して、下記「雇入時の健康診断の項目」について、医師による健康診断を行わなければなりません。
雇入れ時健康診断の項目
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力をいう。)の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP))
- 血中脂質検査(低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無)
- 心電図検査(安静時心電図検査)
【定期健康診断】(労働安全衛生規則第44条)
1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を行うことが義務づけられています。健康診断項目は上記に同じです。
出典: 厚生労働省 労働安全衛生法に基づく健康診断の概要 6P
まとめ~定期健康診断は必ず受けて、結果を活用
職場や自治体などの定期検診は、必ず受診して結果をきちんと活用することが大切です。正常の範囲であっても、前回と比べて変化はないかもきちんとチェック。
フリーランスは、自分で定期健康診断を必ず受けることが大切です。できれば人間ドックでより詳しい検査を受けると安心ですね。
健康保険で助成を受けられることもあるので、医療機関や勤め先、役所などで確認してみましょう。
☆☆☆健康保険組合の補助を利用してのご受診に関して
特に生活習慣病の予防に役立つので、健康診断の結果には、注意しましょう。特別な検査や人間ドックなどを受けるときは、信頼のおける病院かどうかを見極めることも重要です。
例えば検査結果に異常が合った場合、きちんと保健指導をしてくれる病院を選びましょう。単に「経過観察をしてくだい」とか「定期的に検査を受けてください」というだけの病院は避けたほうが良いです。
「塩分のとりすぎに注意し、薄味を心がけましょう。
毎朝自宅で血圧を測定し、記録してください」といったように具体的に指導してくれる病院を選び、かつ、きちんと指導に従うことで、健康診断の結果を有効に活用することが可能です。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ