早く気づいて治療を始めれば、軽症のまま病気と共存も可能な慢性心不全は、症状に気付かず進行しやすい病気です。足のむくみや夜中のトイレなどが心不全の症状であることも。心不全に気づくために、どんな症状が起こるのかを知っておきましょう。
心不全とは
心臓は全身に血液を送るポンプの働きをしています。心不全は収縮したときと拡張したときの心臓の大きさの差が小さくなり、ポンプとしての機能が低下した状態です。
心臓が送り出したり、心臓に戻ってきたりする血液の量が減ってしまいます。
心不全では多くの場合、心臓の異常を思わせるような胸の痛みなどは起こらず、息切れ、足のむくみ、疲れやすいなど、歳のせいとされがちな症状が現れるので、心不全と気付かず進行しやすい病気です。
突然起こる急性心不全もありますが、多くは心臓の機能低下が少しずつ進行する慢性心不全です。
心不全に気づくには
心不全の症状にはどのようなものがあるのかを知っておくことで、早く病気に気づくことが大切。心不全になりやすい人は特に注意してください。
心不全の症状は、「歳のせい」と見過ごされることがあります。半年前にはなかった症状が最近起こるようになったりした時は、心不全の可能性も考えましょう。
心不全の主な症状には、
血液を十分に送り出せないことで起こる症状と血液が心臓に十分に戻らず停滞すること(うっ血)で起こる症状があります。
心不全になりやすい人
- 高齢者(65歳以上の人)
- 高血圧や糖尿病のある人
- 心筋梗塞、狭心症を起こしたことがある人
- 不整脈、心筋症、心臓弁拍小等、心臓病のある人
主な症状
血液を十分に送り出せないことで起こる症状 | だるい、疲れやすくなった |
---|---|
手足が冷える | |
血液が心臓に十分に戻らず、停滞すること(うっ血)で起こる症状 | 階段や坂道などで息が切れる |
脚がむくむ | |
夜中にトイレに起きる回数が増えた | |
横になると呼吸が苦しいが、体を起こすと楽になる | |
お腹が張る |
だるい、疲れやすい
全身の筋肉への血流が減少するためです
手足が冷える
抹消の血流が悪くなるためです。
階段、坂道などで息が切れる
肺のうっ血による症状です。体を動かしたときの息切れは「COPD」(慢性閉塞性肺疾患)と言う肺の病気の代表的な症状でもあります。主に喫煙が原因で、肺の素効きに炎症が起こる病気です。
脚のむくみ
うっ血が脚に起こってむくみが生じます。
夜中にトイレに起きる回数が増えた
日中は筋肉など全身が必要とする血液の量が多く、たっていたり座っているために血液が脚にたまり、腎臓への血流量が減って尿の量が減ります。
一方夜間寝ている間は、腎臓への血流が増えます。高齢になると健康な人でも夜中にトイレに行く回数が増えがちですが、この場合1回の尿量は多くありません。
しかし、心不全の場合は、夜中のトイレのたびに多くの尿がでます。
横になると苦しいが、体を起こすと楽になる
横になった姿勢では下半身から心臓に血液が戻りやすくなります。心不全では、心臓から肺に入った血液が肺から心臓にうまく戻れないので肺にうっ血が起こります。
体を起こすと血液が脚へと流れるので呼吸が楽になります。
お腹が張る
お腹の張りは肝臓のうっ血を感じていることがあります。
これらの症状のうちで特に多いのが体を動かしたときの息切れ。半年前に比べ
息切れするようになった、疲れやすくなった、等の変化があったら心不全の可能性も考えましょう。
主な検査
心不全の診断には、
- 胸部X線検査
- 心電図検査
- 心臓超音波検査
などで心臓の大きさや形、肺のうっ血の有無、心不全につながる心臓病の有無などを調べます。
血液検査で心臓から分泌されるBNPというホルモンの濃度を調べ、息切れの原因が肺ナノ化心臓なのか、どの程度の負担が心臓に加わっているのかなどがわかります。
心不全の主な治療
心不全の治療の基本は生活習慣の見直しと改善、薬物療法です。心不全の程度により他の治療法も検討されます。
症状なし | 軽症 | 中等症~重症 | 難治性 | |
---|---|---|---|---|
生活習慣の見直し・改善 | ||||
心臓再同期療法 (ペースメーカーを使った治療) | ||||
補助人工心臓 | ||||
心臓移植 | ||||
薬物療法 | ||||
ACE阻害薬、ARB | ||||
β遮断薬 | ||||
利尿薬 | ||||
アルドステロン拮抗薬 | ||||
強心薬など |
- 軽症 階段などを登った時、少し息切れがする
- 中等症~重症 日常生活で様あまなどウサオするときに息切れがする
- 難治性 安静にしていても息切れがする
生活習慣の見直し・改善では主に次の点に注意
血圧・血糖のコントロール 高血圧、高血糖は動脈硬化の促進、心臓の筋肉(心筋)に悪影響があります。
減塩 塩分のとりすぎは血液中の水分量が増え、鬱血による症状が悪化しやすくなります。節酒・禁煙 適度な飲酒はOKです。禁煙が原則です。
体重測定 毎日測定します。血液中の水分が体にたまると体重が増加します。体重が一日で2kg異常増加した場合は、心不全が悪化していると考えられます。
薬物療法
心不全の治療薬には、効果的な薬が複数あり、症状の無い時期から薬物療法が行われます。
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
血圧を下げ心臓を守る働きがあります
β遮断薬
脈を整え、血圧を下げ、心臓の負担を軽減します。ACE阻害薬などの次に使われます。
利尿薬、アルドステロン拮抗薬
体にたまった水分を尿として排泄させる薬で、むくみや息苦しさなど、鬱血による症状がある場合に使われます。
強心薬
心臓のポンプとしての機能を強める薬で、安静にしていても息切れが起こる場合に使われることがあります。
その他の治療
心臓再同期療法 中等症以上の治療には、胸にペースメーカーを植え込み、左右の心室に電気信号を送る治療法です。
左右の心室が同じタイイングで収縮するようにし、心臓から十分な血液を送り出せるようにするものです。
補助人工心臓、心臓移植 重症(難治性)の場合に検討されます。補助人工心臓は、心臓のポンプとしての働きを補う装置で、装置を体外に出しておくタイプ、一部を体内に植え込むタイプがあります。
参考:心不全 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス
まとめ
心不全の症状は、歳のせいと見過ごしがちなことも多く、気づかないうちに進行していることも少なくありません。
初期の段階で発見し、適切な治療を行うことが大切です。夜中にトイレに起きる回数が増えた、脚のむくみが続くなど、心不全が疑われる症状について確認し、普段から真相の機能低下に注意することが大切です。
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