大腸内視鏡は大腸内を観察して、病変があるかどうかを知らえるために用いれられてきましたが、現在は、ポリープや早期のがんを、検査と同時に切除することも可能です。大腸がん予防のための、内視鏡治療の方法と注意点についてお伝えします。
内視鏡治療が検討されるケースと治療方法
内視鏡治療が行われるのは、良性のポリープ(腺腫)あるいは粘膜や粘膜下層の浅い部分にとどまる早期のがんです。開腹しなくても治療が可能です。
大腸ポリープは良性の腺腫でも、大きくなるとがんに変化する危険性があるので、腺腫がある程度の大きさになったら、がんになる前に内視鏡治療を行うことで大腸がんの予防ができます。
内視鏡は腸の曲がり角などに当たると痛みを感じますが、熟練した医師ならうまく挿入できるのでほとんど痛みは感じません。麻酔や鎮静剤を使用する病院もあります。
治療を行う判断基準
大腸の壁は、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層(しょうまくかそう)、漿膜等5層から成り立っています。
大腸がんは進行するに従い、壁の奥深くへ侵入し、リンパ節や他の臓器などに転移します。
早期がんでも粘膜下層より深く進むと、転移を起こしている危険性があります。内視鏡治療が可能かどうかは、ポリープの大きさや形から判断されます。
内視鏡検査の途中で見つかった場合、検査と同時に切除することもあるし、日を改めて治療を行う場合もあります。内視鏡治療には、ポリープの大きさや形に応じ、3種類あります。
ビットパターン(ポリープの表面構造)と拡大内視鏡
新しいタイプの機器で、ポリープの表面構造(ビットパターン)を100倍まで拡大して見ることが可能になりました。
ビットパターンを詳細に観察することで、組織を採取して生体検査を行わなくても、良性か悪性か、がんの深さ、転移の危険性などがある程度わかるようになり、大腸がんの予防にも役立ちます。
ポリープの大きさや形からだけでは判断しきれない場合の診断に役立っています。
ポリープの表面に色を付け、拡大内視鏡で見るとビットパターンがわかります。ビットパターンが整っているかどうかで、内視鏡治療と外科手術のどちらが適切下判断することができます。
比較的大きな腺腫(4cm程度)でも、ビットパターンが整っていて内視鏡で治療が行われた例もあります。
内視鏡治療の方法
大腸がんは内視鏡治療が可能な段階で見つかって治療を行うと、ほぼ100%完治するがんです。
いわば、大腸癌の予防にもつながります。内視鏡治療にはポリープの大きさや形に応じて
- ポリペクトミー
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
- ホットバイオプシー
があります。
ポリペクトミー
イボ状に盛り上がった、比較的切除しやすい形の腺腫に行われる手術です。
- 金属せいの輪をポリープにかけ、根本を絞る
- 高周波の電流で焼き切る
手術は5分~10分程度で終わります。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
大腸壁に張り付いたような平たい腺腫や早期がんに対して行われます。
- 平たい腺腫の粘膜下層に生理食塩水などを注入して持ち上げる
- 金属製の輪をかけて根本を絞る
- 高周波の電流で焼き切る
手術は5分~10分程度で終わります。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
切除が困難な大きさの早期がんに対して行われます。
- 粘膜下層に生理食塩水などを注射してがんを持ち上げる
- 電気メスで粘膜下層ごとそぎ取る
手術は1~2時間かかる場合もあり、切除痕の出血を確認するために、3日~1週間程度の入院が必要です。
早期がんの場合は、内視鏡治療後、その病変を顕微鏡で調べます(病理検査)。深く浸潤し、リンパ節転移の危険性があると診断された場合は、外科手術が追加される場合もあります。
ESDはもともと胃がんを対象に開発された治療法です。2012年から大腸がんにも健康保険が適用され、現在では多くの医療機関で行われるようになりました。
以前は、約2cmを超える場合は、小さく切り分け1部分ずつEMRで切除していました(分割切除)。
しかし、この方法ではがんが残り再発するリスクが高く、ESDの登場により、治療の精度は上がったといえます。
画像:患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2014年版 大腸癌研究会 より
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ホットバイオプシー
5mm以下の小さなポリープにしか使えませんが、内視鏡検査で組織を摘み取るときに使う、開閉可能な金属製の2つのカップが付いた鉗子(ホットバイオプシー鉗子)を使って、ポリープを切除する方法です。
鉗子でポリープをつまみ、高周波の電流を流して焼き切ります。短時間で簡単に行うことができる治療です。小さなポリープがたくさんある場合などに使われます。
内視鏡治療を受けるときの注意点
事前に飲む薬の飲み方や、飲食などについては病院から説明がありますので、しっかり聞き、わからない点は遠慮なく質問しましょう。
検査や治療を受ける日の前後に旅行や出張、運動などの予定がない時を選ぶことも大切です。日程については医師と十分相談します。
過去の開腹手術や服用している薬
過去にお腹の手術をしたり、帝王切開の経験がある、腸の癒着があるなどの場合、常用している薬がある場合など、その旨をきちんと伝えておきます。
特に抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を服用していると、治療中の出欠の危険性が高くなります。内視鏡治療にそなえ、休薬が必要となることもあります。
治療後
一週間程度は出血の危険性が伴います。激しい運動や飲酒、旅行や出張などは避けます。
食べ物はさほど神経質になることはありませんが、刺激の強いもの、アルコールなどは1週間程度は控えたほうが無難です。
不安なことは、なんでも聞いて確認しておきます。
内視鏡治療後の検査
一度ポリープができると、その後もポリープができる確率は高いです。定期的に検査を受けることが必要です。
検査の頻度は、切除したポリープの大きさや数、病理検査の結果などにより異なります。担当医師から次回の検査についても説明を受けましょう。
大腸のポリープ切除後の追跡調査を行っている「ジャパンポリープスタディ」では、内視鏡治療後、1~2年間に1回検査で確認したら、その後3年間は安心としています。
できれば2回受け、2回ともポリープがなければ、それ以降や3年間以上間を開けても良いのではないか、というのが現在の結論です。
*ジャパンポリープスタディについては大腸内視鏡は痛くない?大腸がん早期発見のための2つの検査 でご紹介しています。
まとめ~内視鏡検査で早期発見、治療を
大腸がんの予防は、内視鏡検査でがんの芽となりうるものを早期に発見し、治療することが肝心。大腸ポリープは見つけら都度切除することで、大腸がんのリスクを減らすことが可能です。
ポリープや早期のがんが見つかっても、内視鏡でお腹を切らずに治療できます。内視鏡治療については、それぞれ状況など違いますので、担当医とよく相談し、納得いくまで説明を受けましょう。
内視鏡治療後の注意点も、しっかり説明を受けることが必要です。大腸がんは予防、完治が可能ながんです。早期発見、早期治療を!
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