痛風・高尿酸血症の薬、治療についての補足です。尿酸値を下げる薬として、2011年に登場した40年ぶりの新薬、フェブキソスタットの従来の薬との違い、また、痛風の薬で起こりやすいヒヤリハットなども合わせてお伝えします。
尿酸値を下げるための薬の使い分け
高尿酸血症のタイプにより、使われる薬があることは前回エントリー「足の激痛、親指が痛い!痛風の痛みと対処~尿酸値を下げる薬と治療」でお伝えしましたが、おさらいをすると、
①尿酸下排泄低型(尿酸の体外への排泄が低下しているタイプ)
②尿酸酸性過剰型(体内で尿酸が作られすぎているタイプ
③混合型
の3つのタイプがあります。
尿酸値を下げる薬のヒヤリハット
痛風の患者さんは、他の生活習慣病もある人が多いです。薬の飲み合わせはどうでしょうか。
痛風の薬と併用されることが特に多いのは、高血圧や脂質異常症などの薬です。それらの薬の中に、尿酸値に影響しやすいものがあります。
例えば降圧薬のうち、利尿薬には尿酸値を上げる作用があります。最近は、少量の利尿薬を配合した合剤の降圧薬も増えていますが、そうした薬でも尿酸値が少し上がることがあります。
飲み合わせのチェック
降圧薬を変えた後に尿酸値が高めになったような人は、飲んでいる薬をチェックしてもらったほうが良いかもしれません。
悪いことばかりではありません。ロサルタンカリウムと言う降圧薬は、血圧とともに尿酸値も下がり、高血圧と高尿酸血症を合併している人には、好都合です。
尿酸値を下げる薬は、ずっと飲み続けなければいけないのでしょうか。
普通は5年、10年と飲み続ける必要があります。
体の中にたまった尿酸を徐々に減らすには、そのくらいの時間がかかるものです。
また、辞めることも考えられます。
どんな状態になればやめられるのですか
薬で尿酸を減らしている間に、例えば肥満のある人が減量できたときなど、尿酸値が上がる生活習慣を修正して体を変えられた場合です。
安心・安全な薬の飲み方は?
尿酸値が変動すると痛風の発作はひどくなりやすいので、発作中には新たな尿酸値を下げる薬は飲み始めません。というのが基本ですが…
薬の飲み方でよくあるヒヤリ・ハット、Q&Aで確認してみましょう。
薬が効かない、飲むのが不安と言った事例を知ることで、安心して、安全に薬を使うことができ、より効果を期待できます。
尿酸値を下げる薬のよくあるQ&A
痛風発作が起きたら尿酸降下薬は使ってはいけない?
尿酸値を下げる薬を飲んでいる人が発作を起こした場合、薬を辞めると尿酸値が変動し、発作はひどくなりやすいので、そのまま飲み続けます。
また、飲み忘れていて発作が起き、慌てて飲むのも良くありません。かえって発作がひどくなります。
尿酸値を下げる治療を受け、ベンズブロマロンを処方されていたIさん。痛風発作でコルヒチンを飲んでも、痛みが抑えられず受診しました。聞くとベンズブロマロンの服用を辞めていたのです。何度も痛風発作を起こしていて、「発作中には尿酸値を下げる薬は使えない」と言われていたからだそうです。
飲み過ぎたら薬も多め?
尿酸値を下げる薬は、日常生活の都合で飲む量を変えるような薬ではありません。お酒を飲みすぎて、尿酸値が上がりそうだからと量を増やすのは厳禁です。
薬がいつもより早くなくなってしまった、とやってきたMさん。飲み過ぎ、食べ過ぎの日が多く、尿酸値が上がりそうなのでそんな日は2錠飲んでいました。
体にたまった尿酸を減らすには、尿酸値を安定して低い状態に保つ必要があります。発作が起きそうなときだけ飲んだり、量を増やしたりと言った飲み方では、たまった尿酸は減らず、かえって発作が起こりやすくなりかねません。
薬がだんだん効かなくなってきた?
尿酸値を下げる薬を飲み始めて3年になるEさんは、最近少し尿酸値があがってきました。薬が効かなくなってきたのでは、と心配して受診されました。
ほとんどの患者さんはアロプリノールかベンズブロマロンを長年飲み続けています。これらの効果が落ちることは、心配しなくて良いでしょう。薬を飲んでいるのに尿酸値が上がる原因の多くは
・薬の飲み忘れが多い
・体重が増えた(肥満になった)
・飲酒量が多い
などです。
薬が効かなくなった、と感じたら、生活や体重が変わっていないかを見直してみましょう。尿酸値が上がりやすい生活を修正することで、改善することが多いです。
薬の選択
①尿酸下排泄低型に用いられる薬:
- ベンズブロマロン(第一選択)
- プロベネシド、ブコローム
※尿酸の排泄を促進する薬
②尿酸酸性過剰型に用いられる薬:
- アロプリノール(第一選択)
- フェブキソスタット(新薬)
※尿酸の産生を抑制する薬
酸性を抑制する薬:
尿路結石や中等以上の腎障害がある人は、尿酸排泄促進薬は使えません。アロプリノールを用いるなど、併せ持つ病気などに応じて選択されます。
新薬フェブキソスタットの特徴
フェブキソスタットは日本で開発された薬です。
アロプリノール同様、肝臓での尿酸の合成に関わる酵素の働きを抑える作用がありますが、使う薬の量が少なくて済みます。通常の用量で、患者さんの約9割が尿酸値6.0mg/dl 以下を達成できています。
- 薬の量が少なくて済む
- 副作用も少ないと考えられている
海外では日本より先に使われ始めていますが、これまで重篤な副作用の報告もありません。他の薬との相互作用も少ないので、安全面での期待が高い薬と言えます。
ある程度以上の腎障害がある人は、ベンズブロマロンは効果がなく、アロプリノールは用量を増やすと副作用がでやすく地竜が難しかったのですが、フェブキソスタットは、そういう患者さんに適するといえます。
アロプリノールは主に腎臓から排泄されますが、フェブキソスタットは多くが肝臓で分解され、便中に入って排泄されるので、腎障害のある人もより広く使えると考えられています。
尿路結石があり尿酸排泄促進薬は避けたい、でもアロプリノールは合わない、という人なども、今後は治療が行いやすくなると思われます。
まとめ~薬は正しく使って効果を期待
どんなに効果が期待できる薬でも、正しい使われ方、使い方をしなければその効果は現れません。病気と薬の関係をきちんと説明を受け理解して服用することが大切です。
生活習慣も多くの病気に深く関わっています。薬の効果が感じられない場合は、医師のアドバイスにしたがい、見直してみることも大切です。
医療機関を受受診するときは、どんな場合でも服用中の他の薬については、必ず医師に伝えるようにします。心配な場合、飲んでいる薬をチェックしてもらった方が良いかもしれません。
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