不妊に悩み、情報に振り回され、妊活で疲れ果てる。離婚に至るケースも少なくありません。妊活は女性だけでなく、男性にも重くのしかかり妻だけEDに陥ることも。男の妊活事情や、妻だけEDの克服についてお伝えします。
男の妊活と妻だけED
不妊に悩み、妊活中のカップルで一番重要なポイントとなるのはパートナーとの生活でしょう。
何らかの病気があるなど、具体的な男性不妊の原因や治療については、専門機関で相談していただくとして、以下では男性の妊活全般、又、妊活が原因で起こる妻だけEDの克服や日常生活の注意点などについてお伝えします。
ちなみに、日本産婦人科学会が発表している不妊症の定義は「妊娠を希望しながら避妊することなく1年間*生活していても妊娠しない場合」です。
*従来は2年でしたが、2015年6月に1年に変更されました。これは先進国の多くは1年間と定めている事から国際基準に併せたこと、女性の晩婚化が進んでいることによります。
男の妊活は頻度がキーポイント
「努力はしているのに、妊娠できない」妊娠の仕組みは言うまでもありませんが、卵子と精子が出会うことが最低限必要です。
精子の寿命は通常3~5日、排卵はほぼ月に1回ですから単純に考えて週に2~3回、1年間避妊をせずに夜の生活を続ければ、約12回受精のチャンスはあります。
卵子と精子が出会っても、妊娠に至る確率は一般的に25%と言われていますが、積み重ねることで妊娠の確率は格段に上がります。
しかし、日本では平均週1回というペース。確率的に言って半分くらいはタイミングをのがしてしまうのです。
夜のレス生活が生活習慣病?
世界平均に比べ格段に回数が少ない日本人は、夜の生活習慣を「秘め事」のように思い、あまりオープンに考えられないということがあります。
近年は若者の意識も大きく変わってきていて、レス生活も多いようです。また、生活環境(仕事や住宅)も大きな影響を与えています。
仕事で疲れて、意欲が薄れてしまう、といういわば夜の生活習慣病にかかっているといえるかもしれません。
妻だけEDになるきっかけ
妻だけEDとは、他の女性では問題がなくても(それはそれで問題あり、ですが…)妻が相手だとEDになってしまうという状態で、近年増加の傾向があります。
こじれて離婚に至るケースも少なくありませんが、多くの場合きっかけは妊活です。
前述のように、妊娠するにはまず精子と卵子が出会わなければいけません。それには夜の生活頻度がある程度必要ですが、体力的にきつい、仕事で疲れていて無理とレス生活になるという状況もあります。
次善の策は排卵日に併せたタイミング法ですが、男性がパートナーの体の状態まで把握することは難しく、どのようにタイミングを合わせるかを話し合っておく必要があります。
ここがうまく連携できないと、小さなヒビがだんだん大きくなり、妊活自体が負担となってストレスを感じたり、妻だけEDになったりと問題が生じてきます。
オレは子作りマシン?
初めは2人で望んで始めた妊活が、だんだん重荷となってくることは多いのです。
特に男性は、女性から「今週がタイミング」「今日は早く帰ってきて!」などと積極的に伝えられると「オレは子作りマシンか」、と抵抗を感じるようになる場合も少なくありません。
女性は「私達の赤ちゃんのため」と頑張れる人が多いようですが、男性はパートナーのために協力している、という人も少なくないようです。
子作りのための生活が義務や仕事のように感じて、「積極的になれない」、「負担だ」となり、妻が相手だとEDになってしまう、「妻だけED」に。
このような行き違いが起きないよう、タイミングの合わせ方や夜の生活について2人で十分話し合い、普段からのスキンシップを大切にしましょう。
男の妊活
男の妊活について、簡単にまとめておきますね。まずすることは「精液検査」です。
不妊治療を行っている産婦人科で受け付けています。本人が行かなくても自宅で採取してパートナーが持参しても良い場合もあります。
泌尿科や、日本生殖医学界が認定する生殖医療専門医でも精液検査ができます。
男の妊活のポイントは、2つの妊娠させる力です。精子の質と膣内で射精できることがポイントとなります。
精子の質
精液検査で評価されるのは精液の中の
- 精子の数
- 運動能力
- 遺伝子異常の割合
など。
遺伝子異常と言うのは、受精した後に成長できるかどうかに関係しています。
- 精子の質
- 数や運動能力
▶精子を作る材料になる栄養素をしっかり摂る - 遺伝子異常
▶抗酸化を意識する。異常の割合を上げないために、遺伝子に傷をつける酸化ダメージから身を守る - 精子の鮮度
▶自然妊娠を目指す場合は、禁欲はしない - ▶排卵日前後の頻度を増やす(卵子を待ち構える新鮮な精子の数を増やす)
性機能について
妊娠のために必要なのは、「女性の膣内で射精できること」です。疲労やストレスで意欲がわかない、射精ができないED気味の人が増えています。
基本の健康管理をきちんとする
- 疲労の回復
- ストレスの改善 など
老化による妊娠力の低下
男性も加齢とともにゆっくり妊娠させる能力は下がっていきます。
- 男性ホルモンの減少(精子の質・量の低下、性欲減退)
- 酸化による遺伝子の損傷(精子の質が低下)
等、誰にでも起こるものですが、妊娠させる力は日常の生活習慣によっても左右されます。
以下の項目に当てはまる物がある場合は注意しましょう。
状態 | 原因となる生活習慣 | 理由と対処 | |
---|---|---|---|
□ | 精巣温度上昇 | ・長風呂・サウナ好き ・膝の上でノートパソ・コンを使用 ・下着はブリーフ派 ・タイトなズボンが好き |
精子は熱に弱いので、精巣(睾丸)は体から飛び出し、冷えやすい形になっています。 日常生活の中で、睾丸を温める習慣をできるだけ減らしましょう。 |
□ | 血流の悪化 | ・長時間の自転車 ・長時間の座り仕事 ・喫煙 |
食事などで摂った栄養素は、血液を通して届けられるので、圧迫されて血流が悪くなると精子にも良くありません。 自転車も座り仕事も、体を前に倒した状態では股間がきつく圧迫されます。 時々休憩して体を伸ばす、立ちこぎをするなど、意識して股間を開放してあげましょう。 |
□ | 生活習慣病のリスクが高い | ・食事バランスの乱れ ・飲酒習慣あり ・運動習慣なし |
栄養の過不足を初めとして、良くない生活習慣が続くと、精子の質にも影響することがわかっています。 肥満気味や、健康診断で要注意があるような体調、生活習慣はできることから改善しましょう。 |
□ | 精神的ストレス | ・慢性的なストレス ・疲労感・睡眠不足 |
精神的なストレスでも影響を受けます。 昼寝を活用した睡眠時間の確保、ポジティブシンキングをする、単純に感情表現をするなどもストレスを和らげる効果があります。 |
□ | 酸化ストレス | ・日常的にハードな運動・肉体運動 ・喫煙 ・屋外での仕事 |
酸化ストレスが増えると精子にも遺伝子異常が増えます。 妊娠しにくい、妊娠しても育たないということが起きるので、抗酸化力の高い栄養素をしっかり摂り、からだと精子を酸化ダメージから守りましょう。 |
□ | 男性ホルモンの低下 | ・育毛剤を使用 | 育毛剤は男性ホルモンを抑える性質があります。 フィナステリドを主成分とした育毛剤には、性欲減退や精子の数の減少といった副作用の報告があります。 妊活中は使用しないようにしましょう。 |
男の妊活に重要な栄養素
精子や精液の材料として最も多く必要なのはたんぱく質です。その他にコレステロール、様々なビタミン・ミネラルが使われています。
基本はバランスのよい食事で栄養素を摂ることです。
男性の精子の質を左右する亜鉛ですが、男性も女性も不足気味の人が多い栄養素です。
また、インスタント食品や加工食品が多い食生活で不足したり、喫煙・飲酒や激しい運動でも消費される事がわかっています。
亜鉛は様々なホルモンの合成や分泌調節に関わっているので、男性ホルモンがしっかり働くためにも大切な栄養素です。牡蠣や牛肉、ごまなどに多く含まれています。
普段の食品から摂ることが大事ですが、普通に食べていても不足することも少なくありません。そのような場合の一つの選択肢としてサプリメントを利用しても良いでしょう。
男の妊活サプリ
亜鉛不足は、他のビタミン・ミネラルもバランスが摂れていないことが多いです。まずは亜鉛も含まれたベースサプリ(マルチビタミン・ミネラル)がおすすめです。
亜鉛サプリを更に摂る場合は、食事からの摂取量とサプリの合計が耐用上限量を超えないように注意してください。「亜鉛の量がわからないもの」は摂りすぎになることもあります。
亜鉛の摂取基準(mg/B)
男性 | 女性 | 妊婦 | 授乳婦 | ||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 10 | 8 | 10 | 11 | |
耐用上限量 | 20代 | 40 | 35 | 一般女性と同じ | |
30~40代 | 45 |
サプリメントに関しては、個人差や相性もあります。良いか悪いかは使う人次第、という部分が多いです。
コエンザイムQ10、亜鉛、ソイポリア(ポリアミン)、シトルリン、葉酸、8種類のビタミン等、男性の元気に必要な成分をたっぷり配合
同じものでも効果を感じる人も、感じられない人もいます。3ヶ月ほど試してみて、効果を感じないようなら、違う製品を試してみるのも良いでしょう。
実に様々なメーカーから多様なサプリメントが販売されていますので、利用に当たっては口コミや値段などで判断しないようにしましょう。
含まれている成分の量だけでなく、吸収率についても注意してください。
精子の質アップが期待できるサプリ
基本は普段の食事。そこにベースサプリで栄養バランスを整え、精子の質をアップさせる成分をプラスするのがおすすめです。
精子の質をアップする最大のポイントは抗酸化。普段の食事で野菜や果物を積極的に摂ることで、ビタミンやファイトケミカルなどの抗酸化物質を増やすことが大切です。
サプリメントではビタミンCやビタミンE、コエンザイムQ10 、亜鉛が良いでしょう。
また、精子が運動するためのエネルギーの原動力になるのが、ミトコンドリアが作るエネルギーでそれに欠かせないのが、コエンザイムQ10 やL-カルニチンです。
「マイシード-亜鉛配合-for Men」
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新しい精子が作られ始めてから、一人前の精子になるまで約3か月かかります。サプリメントの効果を感じられるのは4ヶ月目以降ですが、目に見えるものではありません。
体の調子が良いと感じるかを、そのサプリメントが自分にあっているかどうかの判断基準とします。
サプリメントは治療薬ではありません。ここでは一般的に効果が期待できるとされている成分についてのご紹介です。
利用に当たっては個人の責任でお願いします。厚生労働省が摂取を唯一推奨しているのが、葉酸サプリです。
参考
▶男性側の不妊のリスク
子供のころの病気に注意
- 小児期にヘルニアの手術や停留睾丸の手術を受けている場合、精子を運ぶ管が詰まったり、精子の数が少なくなることがある。
- おたふく風邪にかかった後に高熱が続いたり、睾丸炎を起こした既往がある場合、精子を作る力が低下している場合がある。
- ガン等の治療を受けている場合は、精子を作る力が極端に減っている場合がある。
成人期の病気
- 糖尿病は軽度の場合には勃起障害や射精障害と言った性機能障害を起こす。
- 進行すると精子を作る力そのものが低下する。
出典:不妊症Q&A リスク因子 日本生殖医額会 /www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa05.html
まとめ~男の妊活は?
妊活が原因で起こる離婚も少なくありません。子供が欲しい気持ちばかりが強く出て、パートナーを思いやる心が押しやられてしまっては本末転倒です。
男の妊活は自分に出来ることをし、協力しあい、お互いにできるだけ負担をかけずに済む妊活を、一緒に考えていきましょう。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ