膝の痛みは、膝の半月板が痛んだり、関節軟骨がすり減って起こる変形性膝関節症の場合が最も多いです。加齢や肥満が原因ですが、運動不足も痛みや悪化に関係しています。寝たきりのリスクが高まる重症化を防ぐには、ダイエットが重要ですが、予防のために効果的な運動をご紹介。
変形性膝関節症の予防
痛みで歩行が困難になるなど重症化すると、寝たきりのリスクが高まります。予防のためには、ダイエットと、脚の筋力や柔軟性を高める運動が効果的です。
変形性膝関節症は、運動のし過ぎで起こるスポーツ外傷とは逆に、加齢、肥満、運動不足などが原因で起こります。
加齢による衰えは防げませんが、肥満、運動不足は改善できます。
日常でできる筋肉トレーニングやストレッチ、無理のないダイエットを続けることで、ひざの痛みに対処することは可能です。
ひざの痛みの予防は適度な運動
ひざの痛みを防ぐためには、適度な運動を続けることが大切です。肥満がある人はダイエットを、スポーツをするときは、準備運動や基礎練習を怠らないようにします。
ひざの違和感やこわばりなどを感じても、すぐに良くなったり、寒い時や天気の悪い時に症状が出るのも、注意が必要。変形性膝関節症の前触れかもしれません。ストレッチや筋力トレーニングがおすすめです。
スポーツをするとき、日常で注意するポイント
スポーツをするときの注意点
- 準備運動
- その種目の基本となる動作を繰り返し練習(基礎練習)
- 運動後のクールダウン
肥満がある人
- 体重を減らすことが重要!
3kg痩せると、階段を降りる時のひざへの負担がなんと約10kgも減ります。
ウオーキングや自転車こぎ、水泳などひざへの負担が少ない運動が、変形性関節症の予防におすすめです。
すぐ出来る筋力トレーニングとストレッチ
ひざの痛みの予防には、日頃から脚の筋力を鍛えておくことが効果的です。
スクワット・フロントランジ
- 大腿四頭筋(太ももの前側にある)、ハムストリングス(太ももの裏側にある)を鍛える
- 5~10回を1セットとして、一日3セット
スクワット
- 手を腰に当て、両足を肩幅程度に開いて立つ
- 膝がつま先より先に出ないように注意しながらゆっくり膝を曲げ、お尻を斜め後ろに沈ませる
- ゆっくりもとに戻す
これを繰り返します、太ももの前側にある大腿四頭筋と後ろ側にあるハムストリングスを効果的に鍛えられます。
フロントランジ
- 手を腰に当てまっすぐ立つ
- 右足を大きく前に踏み出し、踏み出した足の太ももが床と水平になるくらいまで腰を落とす
- もとに戻す
これを繰り返します。左足も同じように行います、足腰の筋力がつき、柔軟性やバランス能力も向上します。
ストレッチ
大腿四頭筋を伸ばします。
- 床に横向きに寝る
- 上側の足の膝を曲げ、足首をつかむ
- そのままゆっくりと脚を後ろに引く
- 5秒間そのままにした後もとに戻す
これを繰り返します。反対側の足も同じように行います。
膝の痛みの原因
ひざの痛みを訴える患者さんの8~9割が、変形性膝関節症という病気です。膝関節の半月板が痛み、関節軟骨がすり減ることで起こります。
大きな原因は加齢、肥満です。さらに運動不足があると症状を悪化させる要因に。
加齢と肥満
日々のひざへの負荷が加齢で積み重なり、半月板が痛んだりすり減りやすくなります。高齢化社会になればなるほど、増えていくといわれる病気です。
特に男性より女性に多いのが特徴。また、日本人の場合O脚になることが多いのは、ひざの内側の関節軟骨や半月板がすり減るためです。
肥満は膝にかかる負荷がより大きくなります。肥満があると変形性膝関節症のリスクが高まることは、はっきりとしています。
運動不足が招く問題
運動不足は変形性膝関節症の症状を悪化させます。運動をしないと膝やその周囲に筋力低下や関節軟骨に悪影響があります。
脚の筋力低下
山登りやランニングをして脚が疲れてくると、膝がガクガク震えますが、これは脚の筋力が低下した状態。
筋力が低下すると、着地した時の衝撃を、筋肉が十分にやわらげられず、痛みがおこります。
関節軟骨に悪影響
運動不足で膝をあまり動かさないでいると、関節液が良く循環しなくなり、関節軟骨に栄養がいきわたらなくなり栄養不足に。
関節軟骨には血管がなく、膝関節を包む「関節包」の中の空間には、「関節液」というどろっとした液体が含まれています。関節軟骨の細胞はこの関節液を介して栄養を得ているのです。
関節が硬くなる
運動不足で膝をあまり動かさないと、動かせる範囲がどんどん狭くなり、正座ができなくなったり、脚をまっすぐ伸ばせなくなったりします。
膝の役割
ひざは体重を支える重要な関節であり、とても大きな負荷や衝撃が加わる関節です。そのため多くの人が膝の痛みに悩まされています。
日本で膝の痛みを持つ人は、1000万人以上いるとも。症状がなくてもエックス線撮影で、膝に変形がある潜在的な患者さんを含めれば、3000万人に上ると推定されているのです。
膝に加わる負荷の大きさ
海外での最近の研究で、膝に加わる負荷のことが詳しくわかってきました。
- 立っているとき 1.1倍
- 歩いているとき 2.6倍
- 階段を下りているとき 3.5倍
(体重を1とした場合)
単に上体の重さを支えるだけなら、片足にかかる負荷は体重の半分でよいと思いがちですが、実際には体が倒れないように、膝の周りの筋肉がうまく引っ張り合っているので、その負荷も加わっています。
片方の膝に加わる負荷は、体重が60㎏の人で、立っているときに約66㎏、歩いているときに約156㎏、階段を降りるときに約210㎏もの負荷がかかっています。
階段を早く下りたり、走ったり、ジャンプをしたりすると、膝はさらに大きな衝撃を受けます。
特殊な構造で負荷を和らげる
これだけ大きな負荷がかかっていても、すぐには痛まないのは、膝関節は衝撃を和らげる構造を持っているからです。
大腿骨と脛骨(けいこつ=すねの骨)の先端は関節軟骨で覆われていて、間に半月板があります。
- 関節軟骨(プロテオグリカンというタンパク質とコラーゲン繊維からできている)が衝撃をやわらげる
- 半月板(コラーゲン繊維からできた特殊な衝撃吸収剤)
まとめ~肥満と運動不足を解消して寝たきりを回避
膝の痛みの主な原因となる、変形性膝関節症を予防するためには、
- 肥満
- 運動不足
に注意することが大切です。
膝に加わる負荷がどのくらいなのか、数字にしてみると肥満がいかに膝によくないか実感できます。
変形性膝関節症が重症化して寝たきりにならないよう、無理のないダイエットをすぐに始めましょう。
筋力の低下を防ぐためには、自宅でできる筋肉トレーニングや、ストレッチを毎日の習慣にして続けることも、膝の痛みの予防につながります。
変形性膝関節症の治療については、後日詳しくまとめる予定です。
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