慢性的に昼間に眠いと悩んでいる人の多くは、睡眠不足によるもの。十分な睡眠をとることで改善しますが、過眠症は一般的な睡眠時間を取っているにもかかわらず、昼間に眠い病気です。眠けを起こす主な原因と過眠症についてお伝えします。
過眠症とは
夜は十分に寝ているのに、寝ても寝ても昼間に眠い、居眠りをしてしまう。こんなことがよく起こる場合、過眠症の可能性があります。
大事な会議中に居眠りをして失敗したり、デート中に寝てしまって失恋した、運転中に耐え難い眠けに襲われて、危ないところだった、などのケースが少なくありません。
眠けを起こす過眠の原因は大きく4つに分類できます。そのうち、脳に関連する過眠であるナルコレプシーの患者が、日本は世界で一番多いと言われています
ナルコレプシーとは
ナルコレプシーとは、突然眠けに襲われて居眠りをする病気です。日中、断続的に耐え難い眠けに襲われ、居眠りを繰り返します。
居眠りをしている時間は数分から15分程度と短く、目が覚めるとすっきりしますが、数十分~1時間ほどたつと、再び強い眠気に襲われます。
通常、昼間の短時間の居眠りが1日に数回起こりますが、10回を超える人もいます。
10歳代での発症が多く、中学生や高校生の時に起こるのが一般的ですが、小学生で発症することもあります。
本来寝入りばなには現れないレム睡眠が、いきなり現れるため、昼夜にかかわらず、睡眠中は頻繁に夢を見ます。
治療は薬と気長につきあう
ナルコレプシーの治療は、生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせて行います。基本的に慢性的な疾患なので、薬をうまく利用しながら気長に付き合っていくことが大切です。
また、患者さんに対する誤解や偏見も多く、周囲の正しい理解を得ることも重要。自分で睡眠をコントロールするとともに、周囲が病気の事を理解し、協力することも大切です。
一人で立ち向かうのが難しい場合、ナルコレプシーの患者さんが運営する団体もあるので、参加してみるのも良いでしょう。
参考: 日本ナルコレプシー協会(なるこ会)
www.kanjyakai.net/database/1067
日本患者会情報センター
ナルコレプシーの誤解
ナルコレプシーは食事中、歩行中、車の運転中等場所や状況に関係なく現れます。そのため大事な会議や商談中でも寝てしまい、この病気を知らなければ、怠けているとか仕事を舐めているなどと誤解されることも少なくありません。
また、ナルコレプシーは夜の睡眠も浅く、分断されやすい傾向があります。そのため不眠気味で眠りが浅い、と誤解している人も少なくありません。
居眠り以外のナルコレプシーの症状
短時間の居眠りが主な症状ですが、情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺(金縛り)、自動症などの症状が起こることもあります。
情動脱力発作
怒る、笑う、驚く等感情が急に変化した時に、突然体の力が抜けてしまいます。手の力が一瞬抜ける、顎の力が抜けて瞬間的にろれつが回らない、重度では膝の力が抜けることなどがあります。いずれも数秒ほどで自然に回復します。
入眠時幻覚と睡眠麻痺
レム睡眠に伴って現れます。夢の中の出来事を現実のように錯覚してしまうのが入眠時幻覚、その夢の中で体を動かそうとしても動かせないのが睡眠麻痺(金縛り)です。
特に寝入りばなや目が覚める間際に頻発する睡眠麻痺は、夢を見るレム睡眠時に筋肉が弛緩することで起こります。
自動症
眠けと必至に戦っている最中に、半分寝ぼけた状態で文字を書くなどの日常的な講堂を無意識にしている状態の事。行動自体は覚えていません。
情動脱力発作を伴うナルコレプシーの特徴
ナルコレプシーで情動脱力発作を伴うときは、オレキシンという覚醒を維持するホルモンの分泌が、極めて低いかなくなっています。
また、患者さんは、白血球の肩を表すともい荒れるHLA(ヒト白血球抗原)のDQB1*0602が陽性です。HLAは免疫系との関係が非常に強く、ナルコレプシーは免疫疾患であるとも考えられています。
ナルコレプシーの診断と治療
診察はまず問診で症状などについて詳しく聞かれます。睡眠日誌を利用することもあります。情動脱力発作が有れば多くはナルコレプシーと診断されますが、より確実に診断するためには、
終夜睡眠ポリグラフ検査で入眠時にレム睡眠が現れるかどうかと、出現回数が確認されます。
反復睡眠潜時検査で寝付くまでの平均時間、入眠時のレム睡眠の出現を調べます。
平均入眠時間が8分以内、入眠時のレム睡眠の出現が5回の検査中2回以上確認されると、ナルコレプシーと診断されます。
必要に応じて
- 髄液検査(オレキシンの有無や程度を調べる)
- 血液検査(HLAのDQB1*0602を調べる)
が行われることもあります。
治療
生活習慣の改善
規則的な生活が大切。特に夜間の睡眠時間はしっかり摂ります。夜更かしや深酒はいけません。
症状が重い場合は、薬物療法だけでは眠けを完全に抑えることは難しい。1日の予定の中に、計画的な過眠をとります。
仕事が忙しくなる時間がわかっていれば、事前に軽い睡眠をとっておきます。
昼休みの昼寝も良いでしょう。朝も、少し長めに寝ることで、午前中の眠けを軽くすることも可能です。
薬物療法
覚醒機能を高める作用のあるモダフィニルやメチルフェニデートなどが用いられます。
- モダフィニル 作用時間が長く、副作用が少ないのが特徴
- メチルフェニデート 即効性がありますが、動悸などの副作用が現れやすく、連用で依存が現れることも
最近はモダフィニルが優先して処方されますが、うまく抑えられない場合はメチルフェニデートを併用することもあります。
メチルフェニデートで副作用が現れた場合などは、ペモリンに切り替えることもありますが、副作用として肝機能障害が生じることも。
情動脱力発作は、抗うつ薬を適切に使えば抑えられます。
過眠の主な原因
過眠の原因は、大きく分けて以下の4つに分けることができます。
- 睡眠が浅く分断されている
- 睡眠のリズムがズレている
- 必要とする睡眠時間が通常より多い
- 脳の覚醒を維持する機能が弱い
これらの原因の他に、うつ病でも過眠になる場合があります。
4つのケース
それぞれについて、症状の特徴や、原因となる病気は以下に簡単にまとめました。
睡眠が浅く分断されている
夜中に何度も目が覚め、眠りが浅くなるので昼間に眠けが現れるようになります。
睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害などが原因となります。
睡眠のリズムがズレている
体内時計(1日のリズムを作る)がずれるため、眠けと覚醒のリズムもずれてしまいます。
夜はなかなか寝付けない、朝は早く起きられないなどの症状が起こってきます。
概日リズム睡眠障害が起こります
必要とする睡眠時間が通常より長い
必要とする睡眠時間には個人差があります。短時間でも問題のない人もいるし、長時間の睡眠が必要な人もいます。
睡眠時間が10時間以上になる「長時間睡眠者」や一般的な6~7時間ほどの睡眠時間でも、昼間に強い眠けを催します。
脳の覚醒を維持する機能が弱い
覚醒を維持する働きが弱い場合も眠けが起こります。
頭部外傷など、明らかな原因がある場合もありますが、ナルコレプシー、特発性過眠症、反復性過眠症などが原因が明らかでないものもあります。
まとめ~周囲の理解を得ることも大事
場所も状況も選ばす、昼間に眠いのは辛いです。時には危険なことさえあります。単なる睡眠不足ならよく寝ることで対処は可能ですが、過眠症となると正確な診断と適切な治療が必要。
誤解の多いナルコレプシーは薬の使用と睡眠の自己コントロールが大切ですが、周囲の理解を得ることも必要です。
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