病院の価値を左右するのは、医師の腕、症例の多さや設備などだけでなく、看護師の質も大きな要因です。看護師マネジメントを軽視すると、病院崩壊の引き金をひくことになりかねません。
病院スタッフの過半数は看護師
患者さんの顧客満足度を低下させず、病院経営を健全にするためには、看護師をはじめ、病院スタッフが従業員満足を感じられる組織であることが必要です。
病棟や外来では患者さんは、医師よりも看護師と接している時間のほうが、圧倒的に長い。
診察を担当する医師は一人ですが、診察の補助や処置、ケアを担当するのは看護師です。看護師不足では満足な処置、ケアは難しい。
従業員満足の無いところ、顧客満足度も低下する
そもそも病院スタッフが、職場に満足を感じられないような組織では、患者さんへのサービスの質も保たれない。
ただでさえ慢性的な看護師不足が言われる中、そのような組織で働きたいと思いますか?
募集をしても、集まるわけがありません。するとさらに看護師不足で悪循環に陷る。
患者さんが減れば、病院経営も悪化
病棟ナースが頻繁に変わったり、外来ナースが足りなければ、患者さんも不安に感じます。「この病院、だいじょうぶだろうか」と。
そして、患者さんは離れていき、新規の患者さんも来ない…経営悪化でますますスタッフにしわ寄せがくる。
まさに負のスパイラル。
看護師の離職率が高い病院
医療制度改革により、看護師の配置基準がより厳しくなりました。「チーム医療」の重要性が叫ばれています。
しかし、いまだに看護師を「医師の手伝い」としか位置づけずに、適切な処遇や人材開発を怠っている病院は、無くなりません。
そのような病院は看護師の離職率が高く、恒常的なスタッフ不足に陥っています。やがて病院崩壊へと向かう。
看護師不足は、病院の価値にダイレクトに影響する問題なのです。
病院崩壊と再生
チーム医療の概念を取り入れていないどころか、封建社会を彷彿させるようなワンマン経営をしているある医療法人の話。
病院は代々医師の一族によって経営されており、理事長はスタッフにも高圧的で、法改正により「看護師」となった「看護婦」という呼称を使い続けていました。
悪評とサービスの低下
若手医師も理事長を模倣するので、看護師の満足度は下がるばかり。定着率は低くなり、新卒者も中途採用者も、長くて2年しか続きません。
劣悪な労働環境に関する噂は、辞めた看護師の転職先にも広まり、地元では看護師募集が困難になっていきました。看護師不足によるサービスの低下も顕著に。
お礼奉公
看護師の標準人数割れを懸念し、看護部長がスタッフへの対応を改めるよう進言しても、「文句を言う奴はいらない、付属の看護学校で学費補助をしている学生に、お礼奉公させれば良い」と聞く耳をもちません。
しかし、現在の学生は、病院ではなく、親に学費や生活費を負担してもらって、進学している子がほとんどです。学校の母体である病院であっても、悪評が高ければ実習先として希望はしないのは当然です。
運転資金の利子すら払えない経営の危機
この病院は、「医師が横柄、傲慢」という悪評に加え、看護師不足からサービスも低下したことが致命傷となる。
運転資金として銀行から借り入れた資金の、利子も払えない状態になっていたのです。メインバンクから、事態の深刻さを説明され、経営再建にあたり、「病院名は残して欲しい」という条件のみで理事長は処理を一任しました。
その後、大手医療法人の傘下にはいり、設備、システム、スタッフの一新で、看護師も笑顔で働ける職場へと再生を果たし、現在では多くの患者さんの期待にこたえられる病院へと再生を果たす。
日本の病院の始まりと看護師の歴史
日本の病院は、自発的、自然発生的に生まれたものではありません。明治時代初期に、西欧から「かたち」を輸入したものです。なので、病院の主は医者というところから始まりました。
看護師の歴史
さらに複雑な事情があります。日本の病院が発展する過程において、次の2つの流れがあったのです。
・軍隊、あるいは医科大学(縦割りの階級のある公的な病院)
・公的な病院(優秀な医師の周りに、集まった人達によりできた私的な病院)
つまり、看護師の歴史は、従軍看護婦、または個人病院の医師のお手伝いさん、という2つの流れで始まっています。
その流れがいまだに残っていて、看護師をお手伝いさん扱いしている病院はない、とは言い切れません。
結果として看護師不足から、経営危機におちいり、再生されていくのでしょう。
まとめ
チーム医療が機能しない病院は、看護師不足から経営危機に直面し易い。看護師マネジメントがいかに重要か、病院経営者はこころして取り組むべき課題です。
スタッフが笑顔になれない病院は、患者さんにも笑顔は生まれません。
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