「怖い」先輩看護師にくっついている「かわいい」新人ナース。初々しくて患者さんたちにも人気です。が、実は、まだナースではありません。病院通(笑)なら知っている看護学生です。病院に実習に来ているのです。
実習に来る看護学生の指導もナースの仕事。激務の間に指導するのは、本当に大変なのですが、日々の激務につい忘れがちな、看護師になった時の、初心を思い出させてくれる存在でもあります。
そんな「かわいい」看護学生たちのとんでも実習を暴露しちゃいましょう。
患者さんにさわれない
学生たちは「命に関わる仕事なんだ」、と責任の重さを叩きこまれているので、患者さんに怖くて(傷つけたりしないかと)さわれなかったり、何でも深刻に考えて行動できなかったり。
寝たきりの患者さんの身体を拭くので、「お下の方を拭いてね」と蒸しタオルをわたされた学生は、今にも泣きそうな顔で「どうやって拭いたら良いのでしょうか」とおろおろ。
「ん?普通に拭けばいいのよ。痛くないようにね」と言っても彼女は戸惑って固まったままです。仕方ないので代わりに丁寧に吹くと、「普通に拭いていいんですね。粘膜を傷つけないようにするには、どうしたら良いかわからなくて」と。
「傷つけないように注意しなければいけないけれど、トイレで用を足したら、誰でもペーパーでしかるべきところを拭くでしょ?でも血がでたりしないわよね。それと同じ」
始めて患者さんと触れる時の不安
その後彼女は、お下を普通に拭けるようになりましたが、コレって、始めて患者さんに触れるナースに共通の感情だったのでは、と思います。
病気の患者さんには、大事に丁寧に触れなければ、傷つけてしまう…多くの看護学生はこう思って、患者さんと関わることが怖くなって、ついつい距離をおいてしまうのです。
実習期間を通して、病気の部分と、健康な部分の両方に目を向けられるように、プロとしての看護師の見方を習得して欲しい、そんな気持ちで指導しています。
魔法のような意志の疎通
ナースの言葉遣いにもビックリ、カルチャーショックを受けることが多いです。若くてキレイな先輩ナースが、「う◯こ」とか「お◯ん◯ん」とか、ごく自然に日常的に飛び交っている。
決して特別な言葉ではありませんが、最初は妙な照れがあって、なかなか口にだせないようです。
必死にお腹を叩いている年配の患者さんに、「どうされましたか」とオロオロしているところにさっそうと現れた先輩ナースが、「う◯こ?」と一言。
患者さんは大きくうなずき、一瞬にして意志の疎通が。看護学生は「明るく元気に『う◯こ』と言えなきゃダメなんだ。」って思うわけです。
血や傷を見るのが怖い
いるんですよね。こういう看護学生。血や傷は当たり前の世界に、なんで飛び込んでくるのだろう。って思いますが、実はかくいう私もそうでした。
病棟実習では、患者さんのお世話が殆どで、さほど生々しいものは、見ないで済むことが多い。しかし手術室での実習では、そういうわけにはいきません。
手術室、という閉ざされた異質な空間に入るだけでも、具合が悪くなってしまう学生もいます。
しかし、手術が始まると、倒れたりすることはほとんどない。
こうやってナースは強くなる
学生たちに聞くと、「手術室の緊張感が、非日常的な感覚にしてくれたこと」と「顔と手術野以外の殆どの部分が、清潔な布で覆われていたことで、『人の身体が切られている』という感覚を持たずに済んだこと」で手術を冷静に見ていられたからでした。
血や傷を見るのが怖くても、立派に看護師として仕事が出来るのは嬉しいことです。
簡単な手術のほうが怖かった
慢性中耳炎に、介助に入った看護学生が倒れてしまったことがあります。既に何回か手術実習をしていたのでなれていたはずなのですが…
「学生さん、ちょっと耳を持っていて」と言われ、そっと耳を引っ張っていると、ジョキジョキハサミが耳の付け根を切り開き、今にも取れそうな状態になった時です。
突然倒れた学生を、空いている手術台に寝かせ、ナースがつきっきりに。大掛かりな腹部の手術よりも、体の一部が切り取られるのが生々しくわかる、耳の手術のほうが気持ち悪かったのだとか。
でも、仕事と思えばなんとかなる。私もそうですから。そもそも最初から血や傷が得意だったら、そのほうがよっぽど危ないと思いませんか。
看護師になるためには
病棟のアイドル、看護学生が目指す看護師になるためのルートはいくつか有りますが、一般的なのは高校卒業後、3年制の看護専門学校、看護短期大学と4年制の看護大学を経て国家試験を受けるルートです。
この3つの中で一番多いのは、病院に付属した看護専門学校。病院に実習に来て、看護師からの指導を受けながら勉強に励みます。
看護学生は手間がかかる
以前は実習の学生は労働力となり、病院も楽。という時代も有ったようですが、現状は逆です。
学生に1人の患者さんを受け持たせる
それ以外の業務は殆ど無し
看護師が指導につく
つまり、「学生が患者さんのお世話をするのを世話する」ということになるので、看護師自身が患者さんのお世話をするよりも、遥かに手間がかる。
学校から派遣された専任の教員もいますが、人数が足りないので実習の指導は、病棟看護師の役目となりがちに。
自分も通ってきた道、看護学生には優しく接したい
考え方も変わってきているし、手間はかかりますが、思い返せば自分も同じ道を通ってきました。そう思うと優しくしたいなあと思います。「今の若い子は…」と言ったことは、いつの世代でも繰り返されてきたことです。
まとめ
病棟のアイドル、看護学生の実習風景。ナースの仕事を選んだ時の初心をおもいださせてくれます。患者さんとどう関わるか、何を考えるか。
看護学生たちもまた、先輩や患者さんから多くのことを学び、看護師への道を進んでいきます。
画像出典: 日本赤十字社 プレスリリース2011年度
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