医療事故の不安を抱えていることが、看護師が辞めたいと思った理由のなかでも上位です。その背景には新人看護師の技術不足、勤務状況、職場環境など様々な要因がありますが、個人のがんばりではなく、組織で取り組む成功する新人教育を考えてみます。
新人看護師の辞めたいを防ぐ教育
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看護のお仕事【PR】
看護師の仕事は人の生き死にに直接かかわることも多く、責任の重さが耐えられなくなることもあります。
加えて医療事故への不安や恐怖とも隣り合わせ。新人看護師はその重圧に耐えきれず、辞めたいと思うことが一度はあるものです。
何を支えに辞めたいを乗り切っているのか、あるいは辞めたいを防ぐために成功する新人教育は。
看護師辞めたいの理由
看護師を辞めたいと思った理由で、「ヒヤリ・ハット(インシデント)レポートを書いた」ことを上げる看護師が多い。
生命にかかわる仕事、という重圧が大きいのですが、医療事故は、最後に処置をした看護師の責任を追求されがちな側面もあるからです。
ヒヤリ・ハット(インシデント)レポート
多くの病院では、医療事故の分析は、個人責任の追求につながりがちです。
本来は医師の出した曖昧な指示や、業務手順や看護体制の不備など、組織に原因があるのに、最後に処置をした看護師が追求されてしまいます。
事実関係を把握するため、軽度の事故であっても看護師は師長から根掘り葉掘り質問される。事故に関わった看護師は、自己責任を痛感せざるをえません。
三重のプレッシャー
看護師には、医療事故が起きないように常に知識や技術を高めなければいけない、というプレッシャーがあります。
- メディアなど社会からの圧力
- 視聴や同僚など、周囲の目
- 頑張らなければ、という自分自身からのプレッシャー
の三重のプレッシャーです。
特に、新人から3年目くらいまでは、技術が身についていないことが多く、「役に立っているのだろうか」といった不安や孤独感から、先輩看護師のちょっとした言動に一喜一憂することも少なくありません。
辞めたいと思った時
直接聞いた話では無いのですが、
「点滴の流量を間違え短時間で落としてしまった。その患者さんは急変し、呼吸停止、心停止が起こり亡くなられてしまった。点滴の流量を間違えた看護師は、その時初めて仕事の意味、行為の意味の重大さを知り、本気で看護師を辞めたいと思った」
「同期が食事を配り間違え、おかゆの患者さんがパンをのどに詰め、窒息死。それを知った時に、自分でなくて良かったと思ってしまった。その気持ちが後ろめたく、同僚に何も声を掛けられなかった。こんな私が看護師をしていて良いのかと、辞めたいと思った」
など、死と隣り合わせの看護の仕事の重圧から、辞めたいと思うことも多い。
職場全体で新人看護師を育成
新人の悩みは、専門的技術の不足と医療事故の不安。
その背景には卒然教育における実習時間の減少と医療の高度化で業務の密度が高まり、医療ミスが増加、更に患者の権利意識の高まりから医療訴訟や様々なクレームの増加があります。
新人でなくても、自分の技術に不安を持ち、医療事故に怯えて辞めたいと思ってしまうのは、看護師として当然でしょう。
では、新人看護師は何を支えにして辞めたいを乗り越えているのでしょうか。
新人を支えるのは師長?
新人の支えとなっているのは、師長でもプリセプターでもなく、同じ部署の同期でした。
未熟な新人にとって、最大の支えは自分の技術向上でしょう。本来であれば師長や先輩、直接指導をしてくれるプリセプターが支えとなるはずなのに、そうではない現実。
もちろん組織として新人看護師の指導が、うまく行えている病院も少なくありません。うまくいっていないのは、組織として取り組めていないことも要因です。
プリセプター制度の現状
プリセプター制度は、本来組織、すなわち職場全体で新人を育成するための制度ですが、残念ながら、プリセプター個人の頑張りで成り立っている状況があります。
最も技術があり活躍しているベテランの役割が明確で無い為、ベテラン看護師のパワーが引き出されていません。
師長→プリセプター→新人看護師というラインとベテランの間には断絶がある。しかも師長は多忙でプリセプターの指導もままならず。
つまり、師長、プリセプター、新人、ベテランがチームとして人材育成にかかわらなければいけないのに、ばらばらで、組織の持つパワーが機能していないのです。
プリセプターが教えられることとできること
看護師に限りませんが、自分ができることと他人に教えらえることの間には、大きなギャップがあります。
臨床経験3~4年目のプリセプターは、最低限の業務は一通りこなせます。しかし、看護は人間が相手、マニュアル通りにいかないことの方が多いです。
ベテラン看護師は「何か変」と言った直観的な判断(カン)や行動(コツ)ができますが、プリセプターがそのようなカンやコツを新人に教える能力は、当然ベテランより劣っています。
非定常的業務
看護師の仕事は例えば必要な書類に定期的にサインする、といったように定期的にする定常的業務、ルーチンワークは少ないです。
夜勤で定期的なバイタルチェックは定常的業務に見えますが、脈拍が上がったり、血圧の低下など急変患者が出た場合は、朝まで帰れなくなります。看護の仕事は非定常的業務の連続です。
プリセプターが非定常的業務を新人に教える能力は、当然ながらベテランよりも劣っています。
色々な失敗を経験し、数をこなし、仕事のカンが出来上がったベテラン看護師でなければ、確実な指導はできません。
カンやコツの説明は難しい
プリセプターも、カンやコツを身に着けつつあると思いますが、まだ口で説明できるまで成熟していません。
「何かおかしい」と感じても、それを具体的な言葉で表現できるとは限らないのです。具体的に説明できないので、新人はわかりにくいのです。
通常の業務でも、新人にしてみれば、わからないことばかり。例えば、こんな行き違いも多くなります。
私のするようにやってください
…なんでこの子はできないの
そのうち時間がたって、
もういいわ、私がやるから
となってしまいます。
新人にしてみれば
Sさん(プリセプター)はできるひとで、一生懸命教えてくれるのだけど…
わからないことばかりだし、ついていけなくて申し訳ない
と思っているのです。
個人の頑張りには限界が
プリセプター制度には限界があり、同期同士、自分のプリセプターについて悩みを言い合ったり、プリセプターが自分の担当したプリセプティーの当たりはずれを愚痴ったり。それでは新人の育成がうまくいくとは思えません。
人が足りないから仕方ない、できる人がいないから、時間がないから、などと現状に甘んじてしまいがちですが、職場全体で新人教育をすることが大切です。
プリセプターだけでなく、ベテラン、中堅にも役割を振ることで新人の看護師辞めたいを防ぎ、定着をはかることが成功する新人教育と言えるのではないでしょうか。
医療事故の責任
何かが起これば医療従事者が真っ先に断罪され、裁判絡みのケースも出てきます。医師は逮捕され、看護師は厳しい証人尋問を受ける。
産婦人科や小児科の減少は、特に医療充実者の責任が問われやすい、ということも背景にあります。
一生懸命治療したのに、命を救えなかった、その上医療ミスを疑われ、責任を問われる。
医療への過大な期待と錯覚
医療事故については「考えられないミス」「あってはならないミス」などの文字がメディアでよく見られます。
確かにその通りでもありますが、ミスを起こさない人間はいません。医療は完璧ではなく、日進月歩していかなければいけないません。
更に、人間がみな100歳まで生きられるわけではなく、いつかは死ぬ存在です。あらゆる医療行為は、看護を含め体にダメージを加える可能性を持っています。
一方で現代医療に対して、過大とも言える期待を持ち、医療行為を受けることで、すべてが望ましい結果になるという、錯覚を抱いています。
まとめ~成功する新人教育とは
離職率の高い看護師。新人の離職を防ぐにはまずその理由を知ることです。医療事故への不安も多い。
その背景には技術・知識不足もありますが、適切な新人教育の体制がとられていれば防ぐことができます。
新人の育成は、プリセプターの個人の頑張りに頼っているのが現状と言えますが、個人の指導には限界があります。
ベテラン、中堅などが組織としてかかわることで成功する新人教育が可能に。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ