変形性股関節症が進行し、末期になると関節軟骨が完全に失われ、非常に強い痛みが現れるようになります。運動療法や生活改善でも十分な効果が見られない場合に検討される、薬物療法や手術についてお伝えします。
変形性股関節症の治療
運動療法や生活の改善を行っても、十分な効果が見られない場合に検討されるのが、薬物療法、手術です。以下の自己チェックを行って、1つでも当てはまった場合は、進行期でもかなり進んでいるかまたは末期の可能性があります。
変形性股関節症の末期に行われる主な治療について、まとめました。手術は担当医と相談し、十分に納得した上で治療をすすめることが大切です。
進行期・末期の自己チェックと治療法
こんな症状はありませんか。歩き方は自分では気づかないこともあるので、周囲の人にもチェックしてもらうと良いでしょう。
1つでも当てはまる項目がある場合、進行期や末期の可能性があります。医療機関を受診してください。
- 歩いていると肩が上下左右にゆれる
- 腰痛・膝痛・肩こりで悩んでいる
- 長時間歩くと腰、足の付根が痛い
- 階段を上ると太股/足の付根が痛い
- 足を引きずるように歩いている
1、2:筋力の定価や左右の脚長差がある
3、4:股関節が変形して関節が硬くなり痛みが出ている可能性がある
5 :1~4がさらに悪化している可能性がある
進行期・末期の治療は薬物療法や手術が検討されます。
薬物療法
急に生じた股関節の痛みや、進行期・末期の強い痛みがある場合は、「抗炎症薬」で症状を和らげます。
膝の痛みの治療では、「ヒアルロン酸」の関節内注射が良く使われますが、変形性股関節症の場合は、十分なデータがありません。
症状の程度と抗炎症薬の種類
抗炎症薬には、
- 外用薬
- 内服薬
- 注射薬
の3種類があり、痛みの程度や患者さんの体の状態などによって使い分けられます。
薬の種類 | 症状の程度 | 副作用 |
---|---|---|
外用薬 | 軽い場合 | 皮膚の弱い人にかぶれ等 |
内服薬 | 強い場合 | 胃腸障害 肝機能障害など |
注射薬 | 手術ができない場合 |
それぞれの薬は痛みの程度などにより使い分けられます。注射薬は、他の病気があるなど手術ができない場合に使われます。
薬に頼りすぎない
薬物療法で痛みを抑えることはできますが、変形性股関節症を治療することはできません。薬で痛みが抑えられたら、担当医と相談し運動療法に切り替えるなど、薬に頼りすぎないことも大切です。
薬物療法で十分な効果が得られない場合は、手術療法となります。
手術が検討されるポイント
手術は薬物療法を行っても症状が改善しない場合に検討されます。重要なポイントは
- 痛みの程度・日常生活の不自由さ
- 将来悪化する可能性
です。
最も重要なポイントは痛みがとても強い場合や、症状のために日常生活で不自由がある場合です。また、痛みがなくても将来悪化する可能性が高い場合は、手術が選ばれます。
手術のタイミング、方法は患者さんの年齢や職業など、ライフスタイルとも関係するので担当医と相談し、十分に納得してから治療をすすめることが大切です。
代表的な手術療法と特徴
股関節の代表的な手術療法には、
- 関節鏡手術
- 骨切り術
- 人工関節術
などがあります。
関節鏡手術の特徴
対象となる段階 | 初期~末期 |
---|---|
年齢 | 幅広い年齢 |
入院期間 | 約1~3週間 |
メリット | 傷跡が小さく、あまり目立たない |
デメリット | 症状が再び現れる可能性がある |
骨切り術の特徴
対象となる段階 | 初期~進行期 |
---|---|
年齢 | 60歳までなど制限があることも |
入院期間 | 約1~3ヵ月 |
メリット | 動作にあまり制限がない 自分の骨を使う |
デメリット | 治療期間が長い |
人工関節手術の特徴
対象となる段階 | かなり進んだ 進行期~末期 |
---|---|
年齢 | 40歳くらいから可能 |
入院期間 | 1ヵ月前後 |
メリット | 痛みが無くなる |
デメリット | まれに外れる 感染症のリスク |
内視鏡手術
内視鏡の一種である「関節鏡」を用いた手術法です。股関節の周囲に2~3箇所、1cmほど切開したところから関節鏡と手術器具を挿入します。
モニターで観察しながら炎症のある「骨膜」の切除、関節軟骨の破片を取り除くなどの治療が行われます。関節内の炎症を収めることで痛みの緩和を測ります。
初期から末期までが適応され、幅広い年齢の患者さんが受けられます。傷跡は小さくあまり目立ちませんが、症状が再び現れる可能性があります。
骨切り術
出典:関節が痛い.com
変形した股関節の形を整える手術療法で、複数の方法があります。股関節は、臼蓋(きゅうがい)が大腿骨の殆どを覆っていますが、臼蓋の発育が不完全で、大腿骨を完全には覆っていない「臼蓋形成不全」の場合があります。
骨切り術では骨盤の一部の骨を切り、それを外側にずらして大腿骨頭を覆います。臼蓋の不完全な部分を補うことで関節軟骨への負担を減らします。
手術後は骨の接する面積が小さい部分ができるので、しばらくは歩けません。磁気の経過とともにしっかり強くなりますが、約1~3ヶ月間と入院期間は比較的長期です。
入院期間が長いのはデメリットですが、人工関節手術に比べると
- 手術後の動作にあまり制限が無い
- 自分の骨で治療ができる
というメリットがあります。
人工関節
出典:関節が痛い.com
かなり進んだ進行期や末期の患者さんが対象です。傷んだ臼蓋と大腿骨頭を取り除き、チタンやセラミックス、ポリエチレンなどで作られた人工の関節に置き換えます。
人工関節の耐用年数は20年ほどとされていました。そのため概ね60歳以上の人に適用されていましたが、現在は耐用年数も大幅に伸び、比較的若い方でも手術を行えるようになっています。
現在ではポリエチレンの摩耗を少なくさせる、東京大学と日本の人工関節メーカーが共同開発した技術などがあります。
退院後は痛みがなくなり、ほとんど支障なく歩けるようになりますが、まれに外れたり、「虫歯」の原因となる細菌からの感染があるので注意が必要です。
手術後は定期的に整形外科を受診し、股関節の状態のチェックを受けることが大切です。
まとめ
股関節の急な痛み、進行期・末期の強い痛みがある場合は薬物療法で痛みを緩和します。それでも効果を得られない場合は手術が検討されます。進行する前の段階で運動療法や生活改善により、進行を防ぐことも重要ですね。
手術方法なども新しい技術が研究開発されています。生活の質を向上させるためにも、状態にあった適切な治療を受けることが大切です。
こちらでご紹介した手術の方法などは、一例です。治療は患者さんの状態、ライフスタイル等によっても変わりますし、医療機関によって得意とする術式も違います。専門機関で十分相談されてください。
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参考
▶股関節鏡手術 東京医科大学整形外科 /www.tokyo-med.ac.jp/ortho/sports/kokansetsu.html