骨粗しょう症というと、高齢の女性に多い病気というイメージがありますが、高齢期の骨量は、若い頃の最大骨量と関係しています。最大骨量を増やすため、若いうちから行いたい骨粗しょう症対策についてお伝えします。
思春期の体重と骨量
女性の骨量は思春期に大幅に増加し、20歳までに最大になります(最大骨量)。その後40歳代後半まで一定の骨量が維持されますが、閉経により、女性ホルモン分泌が急激に低下することに伴い、骨量は急激に減少します。
骨粗しょう症は高齢の女性の問題と捉えられがちですが、骨量が加齢とともに減少していくことを踏まえ、若い頃に最大骨量をできるだけ増やすことが骨粗しょう症の予防には重要です。
12~18歳の女子生徒の体重と骨量を調べた調査では、体重が軽いと骨量が平均より少ないことがわかっています。若い頃に体重が軽い人は、早い段階で骨粗しょう症を発症することも考えられます。
思春期の女性は過度なダイエットで低体重になる場合も多く、健康のためには適度な体重を保つことが大切です。若い人だけでなくすべての年代の人が骨の健康に注意して、骨粗しょう症を予防する対策を心がけましょう。
出典: 予防と治療ガイドライン2015年版 - 日本骨粗鬆症学会
骨粗しょう症の危険因子と検査・診断
骨粗しょう症になりやすい危険因子は、主に以下のような8つの物があります。危険因子について知識を持つこと、骨粗しょう症の疑いがないか検査を受けることも重要な対策です。
- 痩せている、偏食・過度なダイエット
- 喫煙
- 過度の飲酒
- 運動不足
- ステロイド薬
- 関節リウマチ・糖尿病
- 親が大腿骨の付け根を骨折
- 50歳以降に骨折
危険因子の詳細
痩せている、偏食・過度なダイエット
骨に体重の負荷がかかると骨量が増加します。しかし痩せていると十分な負荷がかかりません。
また、カルシウムなどの骨に必要な栄養が不足すると、骨量がヘリやすくなります。必要な栄養を摂り適正な体重を保つことが大切です。
骨を強くする栄養
カルシウム | 骨の材料になる 牛乳や乳製品などに多く含まれる |
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ビタミンD | カルシウムの吸収を助ける カルシウムと一緒に取るようにする 魚などに多く含まれる |
ビタミンK | 骨芽細胞の働きを活発にし、骨形成を促す 緑色の野菜などに多く含まれる |
どの年代の人もこれらの栄養を摂り、危険因子をなくすための生活改善で骨粗しょう症を防ぐようにすることが大切です。
喫煙
喫煙はエストロゲンの作用を抑えることなどで、骨の量が減少しやすくなります。禁煙を心がけましょう。
過度の飲酒
アルコール飲料を飲み過ぎると骨芽細胞の働きが阻害されます。
また、カルシウムが尿中に排出されやすくなると考えられます。
運動不足
運動不足は骨にかかる負荷が少なくなり、骨量が増加しません。
ステロイド薬(糖質コルチコイド)
骨芽細胞の働きを抑え、食品から摂ったカルシウムやビタミンDの吸収を抑える作用があります。
関節リウマチ・糖尿病
関節に炎症が起こる病気で、炎症が起きた関節の周囲だけでなく、全身の骨に骨粗しょう症が起こります。
病気で活動性が低下することでも骨が弱くなります。
糖尿病も骨芽細胞の働きが抑えられることがあります。
親が大腿骨の付け根を骨折
骨量や骨の強さには遺伝的な要因も関係しています。親が骨粗しょう症で大腿骨の付け根を骨折している場合、子供も骨粗しょう症が起こるリスクが高いといえます。
50歳以降に骨折
50歳以降の骨折は骨量が少なくなっているためと考えられます。
検査
骨粗しょう症の検査は、測定時間は数分間で体への負担が少ない超音波、MD、DXAなどで骨量を測定します。
- 超音波 検診などでよく行われる方法です。かかとの骨に超音波をあてます。
- MD 手の骨のX線写真を使います。診断の際にも良く行われます。
- DAX 背骨、大腿骨、手首にX線を当てる検査です。診断の際によく行われます。
診断
20~44歳の若年成人の骨量の平均値(YAM)を100%として
- 正常 80%以上
- 骨粗しょう症 70%未満
と診断されます。
70%以上80%未満の場合、骨がもろくなったことが原因と考えられる骨折(脆弱性骨折)があると、骨粗しょう症と診断されます。
骨粗しょう症とは
骨量(骨の中身)が減りスカスカの状態になり、骨がもろくなる病気が骨粗しょう症です。骨がもろくなるとちょっとしたことで骨折しやすくなり、ころんだときに骨折しやすいのは、通常では骨折しない大腿骨の付け根、手首、腕の付け根などです。
これらの部位を骨折すると痛みの他に思うように体が動かせなくなり、日常生活に支障をきたしたりします。
特に大腿骨の付け根を骨折すると、歩けるようになるには手術とリハビリが必要で、高齢者では寝たきりから認知症を発症することも少なくありません。
また、背骨の「圧迫骨折(椎体骨折)」も多く起こります。気づかないうちに徐々に圧迫骨折が起こり、最初は痛みがないこともあります。いつの間にか骨折です。
時間がたつに連れて「腰が痛い」「前かがみになる」「身長が縮む」などが起こり、動きにくくなります。
骨粗しょう症の原因
骨は骨吸収と骨形成の新陳代謝(骨代謝)が繰り返され、常に作り変えられています。
- 骨吸収 破骨細胞が古い骨を壊す
- 骨形成 骨芽細胞が新しい骨を作る
骨吸収と骨形成のバランスが取れていると、骨の健康が維持されますが、骨粗しょう症では、2つのバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回るために骨がもろくなっています。
骨代謝の異常を起こす最も大きな原因が、女性ホルモン分泌の低下です。女性ホルモンの一つであるエストロゲンには、骨吸収を抑える働きがあるのですが、女性は閉経によってエストロゲンの分泌が急激に減少するため、骨吸収が抑えられなくなり、骨量が急激に減少します。
そのため、骨粗しょう症の女性は男性の約3倍多くなっています。その他にもカルシウム不足も骨代謝の異常を起こします。
骨代謝の異常を起こす3つの原因
- 女性ホルモンの分泌低下
- 食事からのカルシウム摂取が不足
- 加齢に伴い、カルシウムの吸収が低下
骨粗しょう症の予防についてはこちらのエントリーでもお伝えしています。
まとめ
高齢期の骨粗しょう症を予防するには、若い頃の最大骨量を増やす対策をすることが重要です。また、骨量を正常範囲の80%以上に保つことも大切です。
そのためには女性の場合は40歳代から検査を受け、骨量の変化を見ていくことをお勧めします。男性の場合は、50歳くらいから骨量に注意するようにしましょう。
参考: 骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2015年版 - 日本骨粗鬆症学会 /jsbmr.umin.jp/pdf/GL2015.pdf
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