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ピロリ菌の除菌で胃がん予防~団塊世代はピロリ菌検査と除菌を!

胃がんとピロリ菌の関係は今でこそ多くの人が関心を持ち、除菌をする人も増えていますが、ピロリ菌が胃がんのリスクとどのような関係にあるのか、ピロリ菌除菌と胃がんの予防について考えてみましょう。

ピロリ菌の除菌で胃がん予防~団塊世代はピロリ菌検査と除菌を!

ピロリ菌と胃がんの関係

実はピロリ菌感染者が胃がんを発症する確率は1%以下です。しかし、胃がんの人のほとんどはピロリ菌に感染しています。

ピロリ菌の感染は免疫の働きが十分でない乳幼児期に感染し、長い時間がたってから胃がんの発症に関わると考えられています。

ピロリ菌に感染しているからと言って、胃がんを発症するわけではありませんが、除菌することにより予防の効果は期待できます。除菌のみで胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発がほとんど無くなることが証明されています。

胃がんの発生にはピロリ菌感染からどのような過程をへているのかについては、未解明な部分も少なくありませんが、ピロリ菌感染に加え塩分の過剰摂取が関わる、と指摘されることが多いです。

また、団塊以上の世代にピロリ菌感染者が多く、がんによる死亡者も集中しています。

 

ピロリ菌の除菌

除菌をすれば胃がんにならない、とがん検診を受けなくなる人もいますが、除菌により胃がんの発生率は減っても、0にはなりません。まずピロリ菌検査をして胃の中にピロリ菌がいるかどうかを調べます。

プラス(陽性の場合)の場合は除菌しましょう。またピロリ菌検査でマイナス(陰性)でもペプシノーゲン(タンパク質分解酵素・ペプシンの前駆物質)がプラス(陽性)の場合は除菌が必要です。

検査の方法

ピロリ菌感染を調べる検査には、内視鏡検査と内視鏡によらない検査があります。

内視鏡によらない検査 

  • 血液中のピロリ菌の抗体を調べる 
  • 吐く息の中に出て来るピロリ菌の出す一酸化炭素を測定する尿素呼吸試験 
  • 便中に出て来るピロリ菌の抗原を調べる便検査 

があります。

除菌療法

除菌は一次から三次まであります。全体の七割近くの人が一次除菌で成功しますが、除菌できない場合は、二次(九割以上の人が成功)、残りの1割の人は三次と除菌します。

一次除菌 

  • プロトンポンプ阻害薬 
  • 2種類の抗菌薬(アモキシシリン、クラリスロマイシン)

を七日間服用

 

二次除菌 

  • プロトンポンプ阻害薬 
  • 2種類の抗菌薬(アモキシシリン、メトロニダゾール)

を七日間服用 

二次除菌では、一次除菌で服用したクラリスロマイシンの代わりにメトロニダゾールを用いる

 

三次除菌 
大学病院のような専門の医療機関で三次除菌について相談する

副作用

除菌中に軟便、下痢、食べ物の味が感じられなくなる味覚障害が起こることがあります。一過性のものなので、医師に相談して整腸薬などを処方してもらいましょう。

また、除菌後に胃液の逆流で胸焼け症状が出ることがあります。これはピロリ菌により抑制されていた胃酸分泌が除菌によってもとに戻るためです。これも一時的なもので多くの場合、数ヶ月で治ります。

除菌後の肥満が専門医の間で問題視され、適切な指導などの対策が講じられつつあります。ピロリ菌の除菌治療を受けた後に、食欲が出て太りすぎることがよくあるのです。

ピロリ菌が抑制していた胃酸の分泌が良くなる、グレリンという食欲促進物質が除菌により出るようになるからとも考えられています。

除菌の成功率

きちんと薬を飲んでいれば一次除菌でおよそ七割、二次除菌でおよそ全体の九割の人が除菌に成功します。除菌に失敗留守原因で一番多いのが薬の飲み忘れ。

朝晩2回、3種類の飲み薬を1週間服用することになっていますが、この内2日でも薬を飲み忘れると除菌はできません。副作用が出た場合でも自己判断で服用をやめずに、必ず処方した医師に相談してください。

耐性菌の増加

薬を途中でやめると除菌に失敗すると言うだけではなく、薬の情報を手に入れて生き残ったピロリ菌が、遺伝子を変化させて薬の効かない耐性菌として地域に広がる、という問題を引き起こしかねません。

実際に、除菌治療の始まった2000年は一次除菌の成功率や約90%ありましたが、現在は70%近くに落ちています。耐性菌が増加していることを物語っているのです。

豆知識:除菌と乳酸菌

除菌検査の前にヨーグルト(乳酸菌LG21:ピロリ菌の活性を抑える効果があるといわれています)を継続して食べると、除菌の成功率が上がるとも言われています。

胃がんの心配度

胃がん発症のリスクを4つのグループに分ける2つの検査があります。まずピロリ菌検査とペプシノーゲンを調べる検査です。

ペプシノーゲン(タンパク質分解酵素・ペプシンの前駆物質)は、胃壁に炎症などがあると分泌される物質です。ペプシノーゲンの有無を調べることで、萎縮性胃炎の有無や程度、胃がんのリスクを知ることができます。

2つの検査結果で分類される4つのグループと対応は以下のとおりです。

  グループA グループB
ピロリ菌   -   +
ペプシノーゲン   -   -
   まず、除菌
 胃がんの心配は少ない

 

  グループC グループD
ピロリ菌   +   -
ペプシノーゲン   +   +
    まず除菌
  1年後に内視鏡チェック
3~5年ごとのがん検診 1~2年ごとのがん検診

4つのグループの胃がんのリスクと注意点

グループA 
胃がんの心配はまずありません。

グループB 
ピロリ菌がプラスですが、除菌でピロリ菌由来の胃がんの心配はほぼありません

グループC 
ピロリ菌のため胃粘膜がかなりボロボロになっていて、がんの芽ができている可能性があります。除菌後も3~5年ごとに胃がんをチェックする必要があります。

グループD
ピロリ菌はマイナスですが、胃壁が破壊されているため実際にはピロリ菌が存在することもあるので、異なる方法でピロリ菌の存在を確かめる必要があります。

ピロリ菌は胃壁の粘膜に住んでいるので、胃壁が大きく破壊されると数が極端に減ります。そのため抗体検査ではマイナス(陰性)となることがあるのです。

多くの場合、再検査で菌が見つかるので、グループCより頻繁に1~2年ごとのがん検診を受け、がんを早期に見つける必要があります。

ピロリ菌の除菌と健康保険の適用

胃がん予測死亡者数の推移
胃がん死亡者数と国立がん研究センターによる胃がん予測死亡者数の推移。胃がんの死亡者数は2000年までの30年間は5万人程度でずっと横ばいだったが、2000年以降ゆるやかに減少している。そして、ここ1、2年は減少のペースが早まっている(人口動態統計表と国立がん研究センターの予測死亡者数から上村先生が作成)※がんセンターの2016年の予測死亡者数は、2016年7月に発表したデータ
出典:胃がん・胃潰瘍、驚きの”新常識”日経Gooday からだケア2016/12/1

少し前まで胃がんはがんの死亡原因第一位でしたが、胃がんの死亡者数はここ数年減少が加速しています。

2014年では肺がん、大腸がんについで第3位です(男性2位、女性3位)。ピロリ菌の除菌により胃がんの発生率は0になるわけではありませんが、減ります。

ピロリ菌の除菌治療が健康保険の適用範囲が広がり、今まで重症でなければピロリ菌の除菌治療は全額自己負担だったものが、軽度の症状でも保険で受けることができるようになりました。

この結果胃がんの早期予防に大きな効果が見込めるようになり、胃がんの死亡率低下につながっていると考えられます。

ピロリ菌の検査と除菌は、病気治療が目的の場合には健康保険が適用されます。ただし、保険が適用されるためには医師の診断のもと、ピロリ菌感染の有無を調べる必要があります。条件など詳しくは医師に相談してください。

保険適用範囲の変遷

  • 従来 胃・十二指腸潰瘍
  • 2010年6月から 胃に出来るリンパ球のがん・胃マルトリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病の治療と早期胃癌の内視鏡手術後の患者に対する再発予防を目的とした除菌
  • 2013年2月から 将来的な胃がん予防が認められ慢性胃炎も保険適用

「胃の症状はないけれど、胃がん予防のためにピロリ菌の有無を知らべ、感染していた場合には除菌したい」 という場合は健康保険は適用されません。全額自費負担となります。

費用は医療機関により異なりますが、内視鏡を使わない場合は2万円前後、尿素呼気試験、1回の除菌治療、内視鏡による除菌効果判定まで含めると、およそ5万円前後が平均的でしょう。

ピロリ菌が胃がんを起こす仕組み

ピロリ菌に感染してから胃がんを発症するまでには、長い時間がかかります。ピロリ菌がどのような経過をへて胃がんになるのかについては、未解明な部分も少なくないのが現状です。

現段階では、長期間のピロリ菌感染で胃の粘膜が荒れ、ピロリ菌感染がなければ問題にならないような僅かな発がん物質の刺激で、がんが引き起こされるのではないかと考えられています。

日本人にはピロリ菌に感染して20~30年たつと90%近くの人に現れる「萎縮性胃炎」が多く、ピロリ菌が発見されるまではこの病気は、食生活に起因する日本人の国民病と思われていました。

萎縮性胃炎

ピロリ菌は様々な傷害物質を出して胃の細胞を破壊します。ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜の表面に「慢性報奨性胃炎」と呼ばれる炎症性の変化が現れますが、感染が続くと胃の粘膜自体が萎縮する胃壁の変化を、萎縮性胃炎と言います。

萎縮性胃炎の原因の殆どがピロリ菌感染で、萎縮性胃炎は胃がんの元となることもわかってきたことから、胃がんは従来言われていたような生活習慣病ではなく、ピロリ菌による感染症だと考えられるようになりました。

胃がんと塩分

日本国内でも平均塩分摂取量が多い地方には、胃がんが多発しています。塩分の過剰摂取が胃がんの発生に関わると指摘されることも多いです。

しかし、マウスを使った研究ですが、ピロリ菌に感染した場合は発がん物質を与え、塩分濃度10%のエサを食べたマウスの内48%に胃がんが発生し、塩分濃度が濃くなればなるほど胃がん発生率は上がりました。

ピロリ菌に感染していないマウスでは、塩分濃度を上げても胃がんは発生しませんでした。(愛知県がんセンター)

このことから、塩分の過剰摂取は単独では発がん要因とはならず、ピロリ菌で傷つけられた胃壁に発がん物質が触れると、がん化を促進する要因として働くと推測されています。

 

ピロリ菌除菌と高齢者

年齢階級別死亡率(全部位2014年)

高齢者のピロリ菌感染率が非常に高い
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

日本では2人に1人が感染していると言われるピロリ菌ですが、団塊の世代以上では感染率は80%~90%に上ると推測されています。これを物語るかのように、死亡者割合は60歳以上が群を抜いて多いのです。

なぜ高齢者のピロリ菌感染率が高いのかは、その感染経路にあると考えられています。

ピロリ菌の感染経路

ピロリ菌の感染はまだ免疫の働きが完全でない乳幼児期に、衛生環境が整備されていない時代や地域などで経口感染すると考えられています。

キスや日常生活での接触では感染の心配はありません。

子供が嘔吐したものには多くのピロリ菌が含まれています。

吐瀉物に触れた手で他の子供や食物などに触れそれが口に入った場合や、ピロリ菌感染者の母親が口移しで乳幼児に食べ物を与えたりして、感染することが考えられます。

大人になってからの感染はほとんど心配やなく、今後感染率は低下していくと推定されています。

高齢者のピロリ菌感染率が高いのは、戦後の劣悪な衛生環境の中で子供時代を過ごした団塊以上の世代に感染者が多いと考えられているからです。

 

まとめ

ピロリ菌検査と慢性胃炎、胃がんとの関係がひろく知られ、また健康保険適用の範囲が広がったことでピロリ菌の除菌をする方も増えています。かつてはがんの死亡原因1位だった胃がんも、今では治療ができる感染症といえるほどに。

ピロリ菌の感染率が高い団塊以上の世代や、慢性胃炎がある方、胃がんのリスクが高い方などはピロリ菌の除菌を考えることが勧められます。

また、感染がある場合は特に塩分の摂取量に注意してください。

「Anのひとりごと」~今日も1ページ

参考

国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

ピロリ菌除菌と胃がん予防 倉敷中央病院総合保健管理センター 市民公開講座PDF平成24年2月25日