看護師として入職した時には問題はなくても、業務を行うなかで何かのきっかけでいわゆる問題児、モンスターナースとなってしまうことが有ります。きっかけとなるスイッチを入れないために、新人教育で言ってはいけない5つの言葉をお伝えします。管理職に求められるマネジメント能力についても考えましょう。
モンスターナーススイッチを入れないために
「人に依存しやすい」「自分を特別扱いして欲しい」などの性格を持っている看護師は、モンスターナースの予備軍とも言えます。
何かのきっかけで、スイッチが入ると、言われたことしかやらない、そんなこと言われていない、など「労働力を病院に提供する」、という意識が希薄で、社会性が問われるようなモンスターナースになりかねません。
スイッチを入れないために、人材マネジメント能力が重要といえます。
言ってはいけない5つの言葉
こんな指導をしていませんか。向上心や責任感が乏しいと、ついイライラして言ってしまいがちです。
まともな看護師にも言ってはいけない言葉ですが、モンスターナースに変身するスイッチとなります。
- 嫌なら辞めてもいいんですよ
- 私の時は…
- こんなこともわからないの?
- あなたの良さを知っているのは私だけ
- 言われた通りにやればいいのよ
嫌なら辞めてもいい
モンスターナースが労働条件や職場環境にクレームを言ってきた場合、つい返してしまいがちな言葉です。
普通の看護師なら、「いえ、頑張ります」というような返答が有りますが、モンスターナースの場合、
「なら、やめます。解雇ですから、解雇予告手当がありますよね」
となりかねません。モンスター看護師といえども、突然退職されると現場では混乱しますし、解雇予告手当を請求された病院側からは、「なんでもっとうまく話し合えなかったのですか」と苦情を言われることも覚悟しないといけません。
昔話に興味なし
被害者意識が強く、先輩の苦労話や過去の体験談には興味を示しません。看護師の労働環境は格段に整備されてきています。
そんな時に昔の話をしても、「大変でしたね、昔は」で終わってしまいます。自分の置かれた辛さをわかってくれる人は、誰もいないと思っているのです。
こんなこともわからないの?
社会性が養われていないので、常識はずれの行動を起こすことがあります。
それを注意した時、「なぜダメなのか」「そんなことでなんで注意されるのか」と言ってくると、「常識でしょう。こんなこともわからないの」とつい言いがちです。
しかし、モンスター看護師はプライドが高い。自分がバカにされたと感じ、不愉快に思います。相手が自分に色々教えるのは当然、しかし上から目線でいうのは許せない、となります。
あなたの良さを知っているのは私だけ
言われた相手によっては、心強い言葉なのですが…モンスターナースは、「それって、私は他の人からは評価されていないっていうこと?」と反感を持ちます。
人のいうことを素直に聞けないので、褒め言葉も皮肉に受け取ってしまうのです。
人から何か言われると、そこに「突っ込むすき間」がないかを狙っています。付け込まれないようにしないといけないのが、扱いづらいところでも有ります。
言われたとおりにやれば良い
この言葉はモンスターナースのスイッチに直結しています。
最近の若い人は指示待ちが多い、といいますが、新人や若手看護師は、与えられた仕事に「価値」や「意味」を見出そうとする傾向があります。
向上心の表れともいえ、仕事の意味を聞く場合もあります。
そこに「言われたとおりにやれば良い」と言われると、「はいはい、言われたことだけをやっていればいいんですね」と自分から動かなくなります。
新人教育とマネジメント能力
いったんモンスターナースのスイッチが入ってしまうと、もとには戻せません。
現場の管理職は新人の人材育成から摩擦回避への移行を余儀なくされます。モンスターナース予備軍のうちに、トラブルを回避する手段を踏むことが重要です。
モンスターナースの種と環境
モンスターナースのスイッチには、
- 環境(仕事内容、役職、上司、部下など本人を取り巻く様々な要素)
- 資質(本人の性格的な傾向)
が関係しています。
資質に上司に叱られた、自分の言い分が通らなかったなどの環境が加わると、スイッチが入ります。
ということは、種を持っている看護師でも、環境を整えればスイッチが入るのを防ぐことは可能です。マネジメント能力が重要となってくるのです。
教育は最初が肝心
共働きの場合、家事や育児の分担などについての意識は、結婚当初の「夫教育」がうまく出来たかどうかで、その後のストレスが大きく変わります。
新人教育もある意味共通点があるのでは、と思うのです。
入職時に問題はなくても、もともと社会性や性格などにトラブルに発展しがちな要素がある場合、何かのきっかけでモンスターペアレントならぬ、モンスターナースが生まれてしまう。
それを防ぐためには、種が育たないように環境を整えること。人材育成に関わる管理職のマネジメント能力が重要です。
説明責任について
モンスターナースは、病院の対応に不満があると何らかの行動を起こします。要望があった場合、一方的に出来ないと言っても納得しません。
何か問題があった場合、相手が納得するような説明をしなければ行けない、説明責任があります。
看護師から自身の処遇に関する要望があり、それを飲むことはできない場合は、摩擦を回避するための手順を踏まなければなりません。
- 法令の定め
- 現場の声
- 前例となった場合
- 頭からできない、と考えていないか
- 根拠なく差別化していないか
- しつこく確認
法令の定め
企業を取り巻く法律はたくさん定められています。育児・介護休業、年次有給休暇などです。
何か問題が起こった場合、最初に「法律は守っているか」という点がクローズアップされます。
病院で決めたことが優先されるのではなく、法律が第一優先順位となることをしっかり理解しておく必要があります。
現場の声
本人の要望だけを聞いてはいけません。現場が混乱する恐れもあるので、現場の声を聞いた上で、できるかできないのかを判断します。
前例となった場合
価値観が多様化しているいま、前例がないような要望があることも少なくありません。
それくらいなら、と前例を作ってしまうと、同じような要望が次々と来る場合もあります。
その際に、「◯◯さんは要望が通ったのに、なぜ私はだめなのか」と不公平感を持ち不満が起き無いように、混乱が起こらないように判断します。
頭からできない、と考えていないか
要望は、最初は御願いのレベルです。しかし、それをいきなり断ると強行手段にでたり、断られた腹いせに、忙しい時に急に休むなどの行動をしたりします。
いきなり却下するのではなく、上記の3つを検討してから、
「色々調べたり、みんなに聞いたりしましたが、今回は無理です」のように最大限、要望を受け入れる努力をした、という姿勢をみせます。
できないのではなく、やらない姿勢がトラブルのもとです。
根拠なく差別化していないか
例えば突然有給を申請され、AさんはOK、Bさんは2度めだからダメ、と言った根拠の無い差別は、信頼関係を損ないます。
就業規則などに定めがある場合は問題ありませんが、人によって良い、悪いを判断すると、いつまでも遺恨が残るのでやってはいけません。
しつこく確認
仕事がわからない、わからないからつまらない。若手看護師の価値観を理解して接する必要があります。
上司やプリセプターから仕事を確認された時、「多分大丈夫です」と曖昧に返事をすることがあります。その時は、「どう大丈夫なのか」「ダメだったらどうするか」を確認します。
医療の現場で曖昧な返事をすることは、とても危険が高いと伝えます。わからないことは「確認しておきます」とすぐに答えられるように指導することが大切です。
モンスターナースはなぜうまれるのか
子供の世界に親が積極的に介入してきたあたりから、集団のなかでガマンや社会的技能が失われ始めたと言えます。
学校ではモンスターペアレントの出現で、学校教育でも色々と問題が起こり、集団で揉まれることが少ないまま社会にで、自分で乗り越える力を持っていないことが多い。
入社式に親が付き添う光景は異様です。
病院でもモンスターペイシェントが増え、トラブルも多くなっていますが、モンスターナースの存在も深刻な問題です。
初めて立ちふさがる目の前の壁
モンスターナースは幼稚で攻撃的な一面を持っています。モンスターペアレントが、困ったことはすぐに助け舟を出してくれていたので、自分で乗り越える力を持っていません。
入社式についてきてくれても、仕事の上では親の助け舟が期待できなくなり、すぐに壁が目の前に立ちはだかります。(最近は仕事にも親の干渉があることも増えてきました!)
看護師の仕事は人の命を預かる職種で、現場は厳しい緊張感で張り詰めています。そんな時にミスをしたりして、上司やプリセプターに厳しく叱られた看護師は、幼児性を表します。
モンスターナースの扱い
自分に負荷がかかると幼児性が出てくるのは、赤ちゃんがお腹が空いたり、おむつが濡れた時に泣いたりぐずればすぐに対応してもらえることと同様です。
困ったときに「ミルクを頂戴」「おむつを替えて」という代わりに「自分のいうことを聞きなさい」と様々な画策を行うのです。
モンスターナースには、「もう社会人なんだから」と思わず、今から人格形成が始まるのだと思って接すると、ストレスは軽減されます。
嫌だと思う感情はださない
自分本位の要求ばかり出す、モンスターナース。そのあまりにも勝手な言動に、嫌だなあと思うのは自然です。
しかし、この感情は封印して接しないと、その気持はすぐに見ぬかれて心を開こうとしません。自己防衛本能が高いので、敵か味方かを見分ける嗅覚に優れています。
なかには、わざと小さなミスを犯して、上司の指導力が劣っているかのようにアピールすることもあります。厳しさを持って接しても、良い効果は得られません。
まとめ~管理職のマネジメント能力
きっかけとなるスイッチをおさないよう、新人や若手看護師をマネジメントする能力も、看護師長には求められます。
上記では新人教育において、スイッチを押さないために注意したいポイントや、言ってはいけない5つの言葉についてお伝えしました。
これらはあくまでも参考です。現場や個々の看護師などの状況に応じて、モンスターナースを生み出さないためのポイントを探してください。
※モンスターナース、というのは、モンスターペアレントやモンスターペイシェントからつけました。一般的に使われているものではありません。
新人教育については、こちらの記事でも取り上げています。
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