夜間度々トイレに起きて熟睡できず、睡眠の質が低下。仕事に差し障りが出るほど、日中に眠くなる。いびきがうるさいとよく言われる。疲労やストレスのせいだろうと放置せず、すぐに専門医に相談しましょう。睡眠時無呼吸症候群が原因かもしれません。
睡眠時無呼吸症候群の悪影響と治療
睡眠時無呼吸症候群は治療をせずに放っておくと、判断力が低下したり、居眠りで事故を起こしたり、仕事上のトラブルにつながり、社会的信用を失ってしまうこともあります。
生活習慣病を誘発することもあり、重症の場合は生存率が極端に低くなります。
眠ると呼吸が止まる→血液中の酸素濃度が低下→目が覚める→呼吸が再開→眠る
これを一晩中繰り返すため、睡眠の質が低下して日中に強い眠気が起きます。
単なる睡眠不足、と放置していると生命に関わる事態になる可能性もあります。まず、睡眠時無呼吸症候群になると、どんな悪影響があるのかを認識することが大切です。
ひどいいびき、強い日中の眠気などがあったら、睡眠時無呼吸症候群を疑い、専門機関で検査すること。睡眠時無呼吸症候群の治療についても、知っておきましょう。
悪影響
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠だけでなく身体や日常生活にも悪影響を及ぼし、生活習慣病を誘発したり、判断力の低下で生命に関わるようなことも起きかねません。仕事中に頻繁に眠くなることから、社会的信用を失うことも起こりうる。
- 睡眠の質が低下
- 生活の質の低下
- 眠気による事故
- 高血圧や糖尿病
- 血糖値やコレステロール値が高くなる
- メタボリックシンドローム
- 脂質異常症
- 肝機能障害
- 動脈硬化
- 脳梗塞
睡眠の質の低下
睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸や低呼吸が頻発し、そのたびに脳が覚醒するので、周期的に繰り返される「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の周期をうまく作れません。それが日中の眠気に関係すると考えられます。
睡眠中に何度も脳が覚醒するので、継続した睡眠を取りづらく、健康な人と比較すると、夜間の睡眠時間が短くなるという報告もあります。
重症の場合、メタボリックシンドロームを合併する頻度が高い、とも言われていますが、発症した場合は、夜間の睡眠時間が著しく短くなり睡眠の質も大きく損なわれます。
目が冷めた時もすっきりせず、日中は強い眠気に襲われます。
身体への影響
睡眠時無呼吸症候群では酸素濃度が下がるため、二次性高血圧*を引き起こす要因の一つに上げられています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の約50%の患者さんが、高血圧を合併しているというデータもあります。糖尿病になる人は約40%、脂質異常症や肝機能障害とも関連すると言われています。
夜間に頻繁に起こる無呼吸で
- 低酸素血症と交感神経の緊張(血管収縮)
- 酸化ストレスや炎症
- 代謝異常(レフチン抵抗性・インスリン抵抗性)
などの生活習慣病になりやすい状態が進み、5~10年後には、高血圧・心不全・虚血性心疾患・脳血管障害などを発症しやすくなります。
*二次性高血圧: 特定の病気などが原因で血圧が高くなる。特に原因となる病気がなく、体質や生活習慣から血圧が高くなるのは一次性高血圧(本態性高血圧)。
出典元: 厚生労働省 e-ヘルスネット 睡眠と生活習慣病との深い関係
生活への影響
大きないびきで、家族も睡眠不足に陷ることが少なくありません。睡眠不足でストレスも増し、家族関係にも悪影響を及ぼすこともあります。いびきが原因で離婚、というケースも笑い話ではありません。
判断力が低下したり、日中に居眠りをして事故を起こす、仕事上での失敗を引き起こして社会的信用をなくす、といったリスクも。
実際に日中の異常な眠気から、会社を首になるのではという不安感がだんだん大きくなり、うつ状態に陥って、仕事にいけなくなってしまったも。
心配して様子を見に来た家族が、夜中の異常ないびきと無呼吸に気づき、専門機関を受診したところ、睡眠時無呼吸症候群と判明しました。
治療で症状も改善され、その後転職した職場で活躍されていらっしゃいます。
睡眠時無呼吸症候群の検査と治療方法
無呼吸やいびきなどは自分ではわかりません。日中の強い眠気などの自覚症状を、単なる疲労やストレスなどが原因の睡眠不足、と思っていることも有ります。
ひどいいびきや強い眠気で生活に支障をきたしている場合は、睡眠時無呼吸症候群かどうかをまず、検査します。
他の病気と合併しているときは、そちらの治療も行わないと睡眠時無呼吸症候群の治療もうまくいきません。
検査方法
問診
日中の眠気などの自覚症状や生活習慣、また眠っている時の様子を周囲の人から聞き取ります。
高血圧の治療をしている場合、降圧薬を飲んでいても血圧がうまくコントロール出来ない治療抵抗性高血圧症」があったり、早朝起床時の血圧が高い人は医師に伝える必要があります。
検査
簡易モニター: 自宅で睡眠中の呼吸の状態やいびき、動脈血酸素飽和度などを調べる
終夜睡眠ポリグラフ検査: 簡易モニターで分る項目の他、脳波、胸やお腹の動き、心電図などの項目を調べる。確定診断に必要な検査。
※睡眠時無呼吸症候群など特殊な睡眠障害には、それぞれの治療法があります。日本睡眠学会の睡眠医療認定医や精神科へ相談すると良いでしょう。
治療
「CPAP(持続陽圧呼吸)」「マウスピース」などの治療を行ないます。
CPAP(持続陽圧呼吸)
治療の中心とされています。主に鼻に専用のマスクを装着し、送り込んだ空気の圧力で、睡眠中に気道が閉塞するのを防ぐ治療法です。
鼻づまりや軽い鼻血、口の乾きが起こることはありますが、副作用はほとんどありません。
*寒冷地では冬にホースの内部が結露して、水滴が顔などに当たることもあります。
*体調が良くなると、食べ過ぎ飲み過ぎで肥満傾向があるので注意が必要です。
マウスピース
切痕で起動が塞がれないように、下顎を少し前に出しておくための装具。軽症や中等症に良く使われます。歯に直接かぶせて使うので、歯の本数によっては使えないことも。
使用中に頭痛が出ることがあります。
肥満の人は減量、寝酒は避ける、横向きの姿勢で寝る、といった生活習慣の改善も大切です。
睡眠時無呼吸症候群とは
- 無呼吸や低呼吸が1時間の睡眠の間に5回以上あり、日中の過度の眠気を伴う
- 症状にかかわらず無呼吸や低呼吸が15回以上ある
場合を言います。無呼吸や低呼吸が5回以上有っても、症状がない場合は「睡眠時呼吸障害」と呼ばれます。
- 軽症: 5~14回
- 中等症:15~29回
- 重症: 30回以上
無呼吸: 呼吸が10病以上続けて止まる状態
低呼吸: 換気量が半分以下に低下した状態が10病以上続く場合
主な症状
いびき
無呼吸、低呼吸と同じくらい多いのがいびき。一緒に寝ている人が目を覚ますほどの大きないびきをかきます。
日中の強い眠気
無呼吸や低呼吸では、「低酸素血症」などになるため、呼吸をしようと脳が瞬間的に覚醒し、都度睡眠が途切れて夜間に十分な睡眠が取れなくなります。
このため、日中に強い眠気が起こったり、倦怠感や頭痛が現れることも。その他にも体動異常(脳が覚醒するたびに寝返りを繰り返す)や夜間頻尿が起こることもあります。
症状が現れやすい人
中高年に多く、特に男性に多いのが特徴です。女性に少ないのは、女性ホルモンが1回に呼吸する量や呼吸数を増やすなどの、呼吸刺激作用があるためです。閉経後は女性の有病率が高まります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群には大きく分けて「閉塞性」と「中枢性」の2つのタイプがあり、起こるメカニズムも異なります。圧倒的に多い閉塞性睡眠時無呼吸症候群について、解説します。
起こるメカニズム
睡眠中は筋肉が弛緩しているので、起動が閉塞しやすくなります。仰向けになったり、息を吸い込んだりするときに、舌根や軟口蓋などが落ち込み、気道を塞ぐので空気が肺に送られなくなります。
特に息を吸い込む時は、気道内の圧力が低くなり、閉塞しやすくなります。
いびきは起動が狭くなった時や無呼吸後の呼吸再開時に、喉の「口蓋垂」や「軟口蓋」などの組織が空気の流れによって振動し、それがいびきとなって現れます。
原因
睡眠時無呼吸症候群を誘引するのは以下の様な物があります。
- 肥満(最大の誘引)
- 気道の構造(もともと狭い、組織が硬い)
- あごの大きさや形(下顎が小さい、後退している)
- 舌の大きさ(舌が大きい。甲状腺機能低下、先端肥大症などがある)
- 喫煙・飲酒
- 鼻閉(鼻炎などでの鼻づまり)
画像出典: 倉敷中央病院心臓センター 睡眠時無呼吸症候群
まとめ~いびきは病気のサインかも
いびきは病気のサインの場合もあります。単なる疲労やストレスと考えず、日中の強い眠気が続いたり、ひどいいびきを指摘されたりしたら、専門の医療機関で睡眠時無呼吸症候群がないか、検査を受けましょう。
睡眠時無呼吸症候群は、治療をせずに放っておくと、生命に関わる場合もあります。睡眠時無呼吸症候群でなくても、睡眠の質が低下するのは、様々な病気を引き起こす可能性もあります。
生活習慣の見直し等も考えると良いですね。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ