高血圧は自覚症状がないことが多いですが、放っておくと重篤な病気を引き起こすリスクがあります。高血圧かどうかを判断する診察室血圧と家庭血圧、正しい血圧の測り方についてお伝えします。病気の予防のためにも、血圧の標準を知り、管理をすることが重要です。
血圧の標準を知る・測る
高血圧は動脈硬化や心臓肥大を進め、脳卒中、心筋梗塞、心不全、大動脈瘤、慢性腎臓病と言った重篤な病気、更に最近では認知症にも関係することがわかってきました。血圧を下げてしっかり管理すれば、こうした病気の大部分を防ぐことが可能です。
高血圧症の診断基準は、後述しますが、医療機関で測る診察室血圧と、家庭で測る家庭血圧の2つの血圧から高血圧かどうかがわかります。血圧の標準はどのくらいなのか、また、正しい血圧の測り方を確認し、自分の血圧を把握、管理していきましょう。
血圧の正しい測り方
最近では血圧を測るアプリもありますが、高血圧かどうかを判断するためには医療機関での測定と、家庭用血圧計で毎日同じ条件で測定することが、正確な診断のためには重要です。
場合によっては24時間血圧計(ABPM)を使用し、さらに詳しく調べます。
家庭での正しい血圧の測り方は以下のとおりです。
家庭用血圧計を使った、正しい血圧の測り方
- 静かで適当な室温の環境
- (背もたれ付きの)椅子に脚を組まずに座って数分の安静後
- 会話をかわさない
- 測定前に喫煙、飲酒、カフェインの摂取を行わない
1回の測定では血圧が高くなりやすいので、2~3回測ると良いでしょう。
朝
- 起床後1時間以内
- 排尿後 (膀胱に尿が溜まっていると血圧が高くなります)
- 朝の服薬前
- 朝食前
晩
- 就床前
- 入浴後や飲酒後は血圧が低くなるので、少し時間を置いて測ります。
家庭血圧の測定は,普段の血圧がよくわかり、後述のような高血圧の発見にも役立ちます。
また、治療継続率の改善や、降圧薬治療を行っている場合の、過剰な降圧あるいは不十分な降圧のチェックにも役立ちます。
測った値はノートや「血圧手帳」(医療機関でもらえます)に記録します。受診の際に担当医に見せると、参考となりより適切な治療を行うことが可能です。
高血圧症の診断基準
診療室血圧 | 血圧(mmHg) | 家庭血圧 | |
---|---|---|---|
高血圧 |
収縮期血圧 (上の血圧) |
拡張期血圧 (下の血圧) |
高血圧 |
140以上 かつ/または 90以上 | |||
正常高値血圧 |
135以上 かつ/または 85以上 | ||
正常高値血圧 |
|||
正常血圧 |
130未満 かつ/または 85未満 | ||
125未満 かつ/または 80未満 | 正常血圧 |
正常域血圧は正常高値血圧、正常血圧、至適血圧と分類されます。
*120/80mmHg未満は「至適血圧」
高血圧と正常血圧の値は「正常高値血圧」と呼ばれ、将来高血圧になる可能性が高いとされています。
なお、年齢により血圧の標準は異なり、高齢であるほど高くなる傾向にあります(血圧の高い方が多いため)。
標準より高い場合は、血圧を下げ、まず標準値を、さらに正常値を目指すことが大切です。
高血圧の診断と4つの分類
診察室血圧と診察室外血圧(家庭血圧計やABPMで測定した日常生活時の血圧)は、異なることが多いです。
診察室で測ると血圧が高くなるのは、白衣高血圧として知られています。この場合は、診察室血圧から診察室外血圧を引いた値が、ストレスにより血圧上昇した分です。
- 正常血圧
- 白衣高血圧
- 仮面高血圧(早朝高血圧、日中高血圧、夜間高血圧)
- 持続性高血圧
の4つに分類されます。
白衣高血圧
家庭で測った血圧が正常域でも、診察室で測ると高血圧である場合を白衣高血圧と呼びます。日常生活での血圧は正常なため、あまり心配はありません。
しかし、将来持続性高血圧に移行し、心血管のリスクが高い可能性もあります。
特に高値傾向にあったり、肥満・メタボなど他の心血管リスクや、尿に微量のアルブミンが含まれるなどの臓器障害を合併する場合、リスクが高まります。
耐糖能障害や脂質異常症を合併する頻度も高く,将来糖尿病を発症するリスクにもなりえるので、白衣高血圧の場合は、他の危険因子や臓器障害にも注意が必要です。
仮面高血圧
診察室血圧が正常域血圧であっても、診察室外の血圧では高血圧を示す状態のことを言います。日常生活での血圧が高いので、脳卒中や心筋梗塞などの循環器病を起こしやすいことがわかっています。
血圧は1日の中でも常に変動しています。AMBP(24時間血圧計)を使えばそうした変動を知ることができ、診療室外血圧が上昇している時間対によって、早朝高血圧,昼間高血圧,夜間高血圧が見つかることもあります。
正常域血圧に比べて代謝異常を伴いやすく,左室肥大や頸動脈肥厚・無症候性脳血管障害などの高血圧性臓器障害が進行していることもあります。
早朝高血圧
睡眠中の血圧は低いのに、朝起きたときに急に高くなります。
朝の目覚めの1~2時間後は循環器病が最も起こりやすいので、高すぎる場合は、血圧を下げる治療を工夫します。心血管病リスクと関連しており、将来の脳卒中や要介護リスクが高くなります。
昼間高血圧(ストレス下高血圧)
職場や家庭のストレスで日中の血圧が高くなります。職場で高値を示す職場高血圧は、肥満や高血圧家族歴のある人に多いという特徴があります。
また、看護師のように夜間交代勤務者(シフトワーカー)の昼間の睡眠中には、夜間の睡眠中と比較して交感神経活動が十分に低下しないので、血圧低下が生じにくく、non dipper型血圧日内変動異常*を起こすことが多いです。
夜間高血圧
通常、睡眠中は血圧が下がりますが、睡眠中も高い上代が続きます。動脈硬化や心臓肥大が進行し、循環器病が起きやすいので、睡眠中の血圧を下げる治療が必要です。
血圧測定と高血圧診断基準
- 診察室血圧と家庭血圧の診断が異なる場合は家庭欠角診断を優先する。自己測定血圧とは公共の施設にある自動血圧計や職域、薬局などにある自動血圧計で自己測定された血圧を指す
- 自由行動下血圧の高血圧基準は、24時間平均130/80mmHg以上、昼間平均135/85mmHg以上、夜間平均12070mmHg以上である。自由行動下血圧測定が実施可能であった場合、自由行動下血圧基準のいずれかが以上を示した場合、高血圧あるいは仮面高血圧と判定される。またすべてが未満を示した場合は正常あるいは白衣高血圧と判定される。
- この診断手順は未治療高血圧対象に当てはまる手順であるが、仮面高血圧は治療中高血圧に存在することに注意する必要がある。
参考資料p.21
* 24時間血圧計(Ambulatory Blood Pressure Monitoring:ABPM)24時間にわたる血圧プロフィール,24時間,昼間,夜間,早朝などの限られた時間帯における血圧情報が得られる。診察室血圧以上に心血管病発症を予測できる
*血圧日内変動異常 夜間血圧が昼間より低下する正常型をdipperと呼ぶ。夜間の血圧低下が少ない型をnondipper、夜間に血圧上昇を示す型riserと定義する。
成人における血圧値の分類(mmHg)
分類 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
---|---|---|---|
正常域血圧 |
至適血圧 | <120 かつ <80 | |
正常血圧 | 120-129 かつ/または 80-84 | ||
正常高値血圧 | 130-139 かつ/または 85-89 | ||
高血圧 |
I度高血圧 | 140-159 かつ/または 90-99 | |
II度高血圧 | 160-179 かつ/または 100-109 | ||
III度高血圧 | >=180 かつ/または >=110 | ||
(孤立性)収縮期高血圧 | >=140 かつ <90 |
参考資料 p.19
まとめ~正しく血圧を計り変動を早めにキャッチ
血圧を知り測ることで、自覚症状があまりないけれど、重篤な病気を引き起こす可能性のある高血圧。
正しい血圧の測り方で血圧を毎日測り、変動を早めにキャッチすることが重要です。
朝晩の家庭血圧の変動が大きい場合や、降圧薬を飲んでいても十分に血圧が下がらない場合は、24時間血圧計を使うことで、高血圧のタイプの診断や治療の参考になります。
参考: 高血圧治療ガイドライン2014 日本高血圧学会 p19~24
追記
昨日のエントリ、「血圧を下げる~レシピ」ですが、なんと特集でピックアップされていました。それがですね。「グルメ」カテゴリ…
レシピ、とタイトルに入れたのが、どうもグルメ記事と間違われてしまったようです。紛らわしいタイトルにしちゃって、ごめんなさいm(_ _;)m
「Anのひとりごと」~今日も1ページ