特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
物語を読み進めるに連れて心がどんどん重苦しくなる、それがわかっているのに読まずにいられない。指輪物語は、再読回数最多の本です。読むたびに、読めば読むほど、物語の中につなぎ止められる。
そして、あの壮大な物語を映画化したピーター・ジャクソン監督には脱帽しました。
読書虫に火がついた
本にまつわるエントリーが目につくな、と思っていたら特別お題「青春の一冊」なんですね。その中で冬眠中の読書虫に火をつけたのが、おいさんのエントリー(後日更新されています)
確かにあの訳は難解です、というか独特の世界観。読むたびに感じるものが違うのも再読を重ねた理由かもしれません。
旅の仲間がより強い絆で、1つの目的に向かってそれぞれの道を進んでいくように、読み手の感じ方も年齢を重ねるに連れ変わっていく、そんな感じでした。
指輪が呼んでいた
影横たわるモルドールの国に。
一つの指輪は、すべてを統べ、
一つの指輪は、すべてを見つけ、
一つの指輪は、すべてを捕えて
くらやみの中につなぎとめる。
影横たわるモルドールの国に。
出典: 指輪物語 評論社
母が無類の読書好きで、その影響で、蔵書はほとんど読んでいます。純文学よりも、ミステリやSF、ファンタジーの類が多く、その中に「指輪物語」がありました。評論社が1977年に出版した文庫本の第5版!全6巻です。
手にとった頃には、すでに古本独特の色変わりが始まっているような本。文字も小さいし、文体がなんとも古びた感一杯でした。しかし、それに逆に引きつけられたのかもしれません。
唯一の指輪が持ち主をとりこにするように…
空気がどんどん重くなり、心がどよむ
決して明るいお話ではありません。特に最終6巻「王の帰還 下」になると、ページをめくるたびに、空気がどんどん重苦しくなっていくのです。
もう、次のページは読めない。と思うくらい。なのにページをめくってしまう。まるで指輪に魅入られたもののように。
しかも、ホビット庄に平和が戻ってきても、ハッピーエンドにはならない。この重苦しさはなんだろう、と読書中も読み終わったあとも思うのに、しばらくするとまた読みたくなる。
何度も読み返しているので、展開は分かっています。でも惹きつけられるのです。登場人物すべてから、それぞれ異なった魅力を感じるし、ある意味淡々とした話の運びが深い深い世界へと誘っているのかも知れません。
読む時時で、感じ方が違う気もします。
最後に旅立つフロドを見送るサム、メリー、ピピン。そして家に帰ったサムが、愛妻ローズと愛娘エラノールに「今帰っただよ」と告げるところでお話は閉じられています。
すべてが忘れ去られ、日常生活が続く。お話の世界はおわりなんだよ、と言っているかのようで、実はそこに至るまでの道のりを、深く深く心に残しているのでしょう。
ナルニア国物語、ハリー・ポッター
どちらも魔法の国のお話で有名です。ハリー・ポッターでもオドロオドロしい描写はありますが、指輪物語の、あの、どんより、じわじわ心を占領していくような重さは感じません。
指輪物語の世界は、別物だと思います。ナルニア国物語は、どちらかといえば健全な児童書、少年少女向けファンタジー(笑)。
どちらも勿論好きですし、映画も観ていますが、指輪物語の存在感と比較すると、私にとっては娯楽書の域をでません。
衝撃の映画化
前半部分は、実は、アニメで映画化されました。DVDがでています。監督ラルフ・バクシ1978年製作。
正直これはがっかり。J・R・R・トールキンの世界観が感じられなかった。不評だったようで、後半は映画化されていない(と思います)
指輪物語の壮大な世界観は、映画化するのはムリだろう、と思っていました。でもやっちゃった人がいます。ピーター・ジャクソン監督。
ピーター・ジャクソンに脱帽!
2002年に公開された指輪物語三部作、第一部旅の仲間。衝撃でした!
実写版ですよ。それなのにあのクオリティ。原作の世界を見事に表現していると思います。只者ではないと思いました。
この映画の公開にあたっては、全世界への配給にあたり、「3部作すべてを上映すること」という条件が付けられたそうです。
興行界ですから、途中で公開取りやめ、なんていうこともあるのでしょう。
しかし、3部作全部を見なければ、ピーター・ジャクソンのロード・オブ・ザ・リングは完成しません。
それは見れば納得します。最も、第一部公開後の反響を見れば、もし、三部まで公開しないことになったとしたら、世論が黙っていなかったことでしょう。
蛇足ですが、2005年に公開されたキングコング、あれもすごかった。
キングコングはいろいろな監督が映画化していますが、ピーター・ジャクソン版が秀逸。映画化はピーター・ジャクソン監督の悲願だったそうです。
ホビット ゆきてかえりしものがたり (上下)
指輪物語には、前章「ホビットの冒険」があります。問題の指輪をビルボが見つけることになった冒険のお話。
ゴクリ(ゴラム)との出会いと指輪がビルボの物になった時の経緯など、後の指輪物語への伏線と言えるかもしれません。
ちなみに、ゴクリという命名はピッタリだと思います。ゴラムだとすっきりしないんですよねえ。
この本は、指輪物語を読んだ後、学校の図書館で岩波少年文庫版を借りて読みました。
岩波少年文庫「ホビットの冒険」上下巻2000年新訳が出版
2012年12月には、ピーター・ジャクソン監督の3部作の第1弾「ホビット 思いがけない冒険」としてロードショー公開されています。(わけあって、これは見ていません。いつか、時が来たら見ようと思っています。)
- ホビット 思いがけない冒険(2012年)
- ホビット 竜に奪われた王国(2013年)
- ホビット 決戦のゆくえ(2014年)
追記:2016年12月31日BSでイッキ見しました(笑)
まとめ~ぜひ読んで!指輪物語
指輪物語ほど、いろいろな意味で心に残る1冊はない。制約があり新訳が出せないようなので、今の若い人には言葉自体が難解かもしれません。
でも、読むたびに何かを感じるこの本を、是非読んで欲しいと思います。
小学生だとよほど本好き(ファンタジー分野)でないと難しいかもしれませんが、中学生なら、読めると思います。そして、高校生、社会人と成長するごとに読み返して欲しい。
できれば、ピーター・ジャクソンのロード・オブ・ザ・リングの世界も体験してみてください。
*記事中の画像は、文庫本サイズのパンフレットから。映画を見た時にもらったものかどうか今となっては不明です。本に挟んでありました。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ