脳梗塞は突然起こるイメージがありますが、前兆がある場合も少なくありません。脳梗塞の前兆はTIA(一過性脳虚血発作)と呼びます。脳梗塞を防ぐために適切な対応が取れるよう、TIAの症状のチェック方法をお伝えします。
TIAは脳梗塞発症のギリギリの段階
脳梗塞の前兆、TIAは生命に関わる脳梗塞が起こる前の、ギリギリの段階だと考えられることから、崖っぷち警報とも言えます。TIAの4つの症状をチェックして、TIAが疑われる場合は、脳梗塞のリスクが高いため、すぐに医療機関を受診してください。
TIAを起こした人の15~20%の人が3か月以内に脳梗塞を発症しています。脳梗塞の発症を防ぐためには、TIAに早く気づき適切な対応を取ることが非常に重要です。
TIAの症状
TIAの主な症状は以下の4つです。すべて体の片側だけに現れるのが特徴です。1つでも当てはまればTIAの疑いがあります。
- 体の片側に麻痺やしびれが現れている
- 顔の歪みや口元のしびれがある
- ろれつが回らなかったり言葉が出にくくなる
- 片側の視野が暗くなっている
また、後述の5項目7点満点のリスクチェックで合計点が4点以上の場合は、脳梗塞のリスクが非常に高く、入院して治療する必要があります。4点未満であっても、患者さんの状態によっては入院治療が必要なこともあります。
主な4つの症状
▶体の片側に麻痺やしびれが現れている
片側の腕や脚に麻痺やしびれが起こります。軽い場合は気づきにくいので、両腕や両足を同じ高さに挙げ、片側の腕または脚だけが下がってこないかどうかを確認します。
- 両腕のチェック: 手のひらを上に向けた状態で両腕を前に伸ばす。
片方の腕だけが下がってくる時は麻痺が疑われる - 両足のチェック: 仰向けになって両足を伸ばし、30度くらい上げる。
片方の脚だけが下がってくる場合は麻痺の疑いがある。
▶顔の歪みや口元のしびれがある
顔の麻痺が強いと、顔の左右の一方が歪んだり、口元がしびれて左右どちらかの口角が下がったりします。「いー」と言ってみて、左右とも口角が上がるかどうか確認します。
▶ろれつが回らなかったり言葉が出にくくなる
「らりるれろ」などの言葉や短い文章がうまく発音することができなかったり、言葉がなかなか出てこない場合は、脳の血管が詰まって「言語障害」が怒っている可能性が高いです。
▶片側の視野が暗くなっている
片側の目だけ舞台の膜が下りたように、一時的に見えなくなります。片側ずつ手で目を覆ってみると、異変に気づくことができます。
これらの症状に1つでも当てはまり、それが比較的短時間で治まった場合は、TIAの疑いがあります。
TIAを起こした人の多くは、直後に脳梗塞を発症しています。直ちに救急車を呼び専門の医療機関に行くことが大切です。様子を見ていたり、翌朝まで待ってから受診することの無いよう注意してください。
TIAの後に脳梗塞を発症するリスクチェック
60歳以上である・・・1点
高血圧がある・・・・1点
糖尿病がある・・・・1点
危険な症状がある
体の片側の麻痺・・2点
言語障害(麻痺はなし)・1点
TIAの持続時間が
60分以上だった・・2点
10~59分だった・・1点
4点以上で入院治療が必要な状態です。
TIAの治療
以前はTIAが起こっても、症状が治まってしまうと様子を見ていることもありました。現在は症状が治まっても脳梗塞と同じように、すぐに治療を行うというのが基本的な考え方です。
更に上記のTIA後に脳梗塞を発症するリスクチェックを行い、その程度によっては入院して治療を受ける必要があります。治療は薬物療法が中心です。脳梗塞の場合と同様、原因に応じて
- 抗血小板薬
- 抗凝固薬
が使い分けられます。
頸動脈の動脈硬化によって起こるTIA
最近日本でも増えていて注目されているのが首の左右にあり、脳などに血液を送っている頸動脈の動脈硬化が進み血管の内腔が狭くなる「頸動脈狭窄症」によって起こるTIAです。
この場合薬物療法以外に、手術で動脈硬化巣を取り除いたり、動脈硬化が進んで狭くなった血管を広げる治療が行われることもあります。
頸動脈は心臓の周りの冠動脈や下肢の動脈と同じ、筋型動脈出同じ状態になる傾向があります。そのため頸動脈狭窄症がある人は、冠動脈や下肢の動脈の動脈硬化も進んでいると考えられます。
頸動脈の動脈硬化巣を取り除く治療を受けた人の約3分の1が冠動脈の治療を受けています。頸動脈狭窄症によるTIAが起こった場合、脳梗塞だけでなく心筋梗塞や下肢の閉塞性動脈硬化症などのリスクも高まっているので注意が必要です。
TIAとは
TIA(一過性脳虚血発作)とは一時的に脳の血管に血栓が詰まり、血液が途絶えた状態です。脳梗塞と違うのは、血栓が短時間で自然に溶けて、血流が再開することです。症状は一時的ですぐに収まるため、脳の細胞の損傷はほとんどありません。
しかし、TIAの症状が収まったからと言ってそのまま放っておくのはとても危険です。脳梗塞は、動脈硬化が進行して火山のように噴火することで起こります。
TIAは本格的に噴火する前に起こる小さな噴火のような状態なので、放っておくと大噴火につながる可能性が高いのです。
小噴火と大噴火
脳梗塞とは動脈硬化などが原因で脳の血管が詰まる病気です。血流が途絶えるので、その先の脳の細胞は酸素や栄養が行き渡らなくなって死んでしまいます(壊死)。
その部分の細胞がになっていた機能が失われ、重い後遺症が残ったり、時には生命を落とすこともあります。
脳梗塞の前兆TIAに適切に対応することが、脳梗塞の発症を予防するために非常に重要です。
動脈硬化によって血管にできた粥腫の表面が破れ、それを覆うようにできた血栓が剥がれてその先の脳の血管に詰まります。しかし血栓が小さいため、短時間で自然に溶けてなくなります。
しかし、小さな噴火によって起こったTIAは、放っておくと大噴火が起こり、大きな血栓が脳の血管に詰まり脳梗塞が引き起こされます。
脳梗塞の前触れについてはこちらのエントリも合わせてどうぞ
まとめ~TIAは崖っぷち警報
崖っぷち警報とも言えるTIAの症状の正しい知識を持ち、適切に対応することが脳梗塞の予防にとても大切です。
症状が収まったからと言って放っておかず、すぐに医療機関を受診してください。
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