救急外来でも、院内でもトリアージを行う医療機関が増えており、的確なトリアージが出来る看護師を養成する、「トリアージナース教育コース」が年に数回実施されています。今回はトリアージナース、育成研修についてお伝えします。
トリアージナース育成研修について
トリアージとは、患者さんの重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行うことです。詳しくは、トリアージとは?正しい救急車の使い方、で解説しましたのでそちらも参考にされてください。
災害時や緊急時多くの負傷者がいる場合、トリアージを行ない、確実に助かる命を最優先に助けてから、重症者の治療に当たります。
救急外来や院内のトリアージは、主に緊急度の判定を行ないます。これを行うトリアージナースの教育コースが2009年にスタートしました。
またしても痛ましいトンネルの多重事故*が広島で起こりました。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りし、ケガをされた方の回復をお祈りいたします。
ニュース映像でお気づきになられた方も多いのでは、と思いますが、ケガをされた方の救急現場にトリアージが行われていました。(赤、黄色、青、緑のシートで傷病の処置の優先度をわける)
※17日朝、広島県広島市の山陽自動車道下り線「八本松トンネル」の多重事故。死者2名、負傷者71名。
トリアージナース教育コースで学ぶこと
今までの救急外来でも、「患者の診察の優先順位を決める」ことは通常業務の一環として行われていました。トリアージナース教育コースは
- それを構造的に学べるようにする
- 看護師のキャリアアップにつなげる
ことを大きな目的としています。
トリアージナースに求められること~研修の内容・目的
- 異常を判断できる能力
- 緊急度・重症度を判定できる能力
- 調整能力
- 電話でのトリアージ
異常を判断できる能力
まず救急の「正常」「異常」を判断できる能力が重要です。患者の異常な兆候について、「基準値を逸脱している」ことを見分ける判断能力が、基礎的な力として求められます。
緊急度・重症度を判定できる能力
「観察継続でよいか」
「何らかのの対応が必要な状態か」
「すぐに医師による治療が必要な状態か」
このような緊急度・重症度の判定ができる能力が求められます。
調整能力
救急医療は時間の制約の中で様々な調整が必要ですが、他の医療職との調整役は看護師が適任です。医師・検査技師・放射線技師など、医療にかかわる他の職種とうまく連絡を取り合い、検査や診察が迅速に進むように配慮します。
電話でのトリアージ
現場では電話での「救急対応」も問題となっています。救急外来に電話を受けた時にどのようにアドバイスをしたらよいか。トリアージナース教育コースでは電話トリアージのための知識と具体的な対応方法を学べます。
トリアージナース教育コース
緊急度を判断するのが一番の目的です。異常の鑑別を目標としていますので、臨床2年目くらいの看護師から受講できるレベルです。「病態の原因の推定」「治療のための対応」までは求めていません。救急外来だけでなく、一般病棟の看護師も受講できるように企画しています。
病棟看護師も、トリアージナースの資格を得ることで、院内の急変時にも自信を持って対応できます。
トリアージナース育成研修会とインストラクターコースがあります。認定後の更新にはブラッシュアップセミナーの受講が条件。
28年度開催予定及び申込期間
開催場所 | 日程 | 申込期限 |
---|---|---|
第24回愛知 | 平成28年4月23日、24日 | 終了 |
第25回兵庫 (西神戸医療センター(予定)) |
平成28年7月30日、31日 | 4月1日9時~4月30日17時 |
第26回東京 (日本赤十字社医療センター) |
平成28年9月17日、18日 | 6月1日9時~6月30日17時 |
両日コース、1.5日コースがあります。
費用:12,000円~32,000円
申し込み条件など詳細は日本救急看護学会のトリアージナース教育コースで確認してください。
トリアージナースの役割
救急医療現場のいわゆるたらいまわし(受け入れ困難)、救急搬送を受けられない理由として、救急勤務医が不足しているなど、医療現場の苦しい現状がうかがえます。
メディアではたらいまわし、やタクシー代わりに救急車を使うなど、様々な問題が報道されている中、救急外来に来院された患者さんに、「いかに適切な対応・治療を行っていくか」が、救急にかかわる看護師に求められています。
トリアージナースは、来院された患者に問診と観察を行って病態を予測し、診察の優先順位を決定します。待合室で待機中の患者に、ケアの提供と再トリアージを行うこともあります。
トリアージナースの歴史
医師や救急隊もかかわる分野なので、2009年に日本救急看護学会、日本臨床救急医学会、の2学会が合同で委員会を持ち、的確なトリアージを実施できる看護師を育成する、救急看護の専門性を活かす取り組みとして、トリアージナース教育コースが生まれました。
これは救急医療現場のいわゆる「たらいまわし」(受け入れ困難)問題を解決する一つの方策として、上記2学会が看護師の持つ専門性に着目した研修制度です。
トリアージナース導入のメリット
- 医療政策上の利点
- 利用者への利点
- 医療者への利点
医療政策上の利点
- 救急医療における医師不足への寄与
- トリアージナース配置による診療報酬加算
(平成24年度より「院内トリアージ実施料」が新設) - 救急患者の適正な受け入れ
- 継ぎ目のない連携
利用者への利点
- トリアージナースへの救急相談
- 救急車の適正な利用
- たらいまわし(受け入れ困難)が減少
医療者への利点
- 救急看護師のキャリアアップ
- 救急看護の専門性の向上
- 学会による社会貢献
- 診療科間格差の調整
まとめ
17日、広島のトンネル多重事故のように、傷病者が多数いる緊急時の救急看護では、その傷病の程度で、処置の順番を定め、今すぐに処置をしなければいけない対象者から救護を始めるトリアージ、が救急医療現場では行われています。
救急外来でも、トリアージナースが的確に患者さんのトリアージを行うことで、スムースな診療につながり、ひいては患者さんの満足度アップにもつながるものです。
トリアージで判断を誤ると、重大な結果をもたらしたり、患者さんの不満が大きくなったりしないとも限りません。トリアージナースは知識と経験を常に研鑽していかねばなりません。
救急外来の看護師として働きたいと、この資格をとり、救急外来のある病院に転職する看護師も少なからずいます。
重大な責任を負いますが、やりがいのある役割です。看護師のキャリアアップをめざし、ぜひトリアージナースの育成研修も考えてみて欲しい。
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