メンタルヘルスが悪化した新人看護師の、辞めたいを思いとどまらせるには、組織で取り組むことが重要です。そのキーパーソンとなるのは、病棟の看護師長。師長自身が取り組むことで、新人看護師の離職防止に効果的な、マネジメントについて解説します。
新人の離職を防ぐ上手なマネジメントとは
同じ病院、同じ忙しさや待遇でも、上司によって居心地は天と地ほどの差が有ったりします。
病院全体の環境が良いとは言えなくても、新人看護師のメンタルヘルスの悪化は、師長のマネジメント能力によって大きく好転する可能性があるのです。
師長にも色々なタイプの人がいます。一般企業の課長と同じように、上の部長の方ばかり見ている人。
自分も病棟、病室を駆けまわり、スタッフと同じ業務をするような人、バランスが取れ、スタッフに目を向けていく人など。あなたはどのタイプでしょうか。
コミュニケーションの代行役
医師や患者さんとうまくコミュニケーションが取れない、中には普通の意思疎通さえできない新人看護師もいます。
コミュニケーション研修など院内教育をしている病院もありますが、あまり期待した効果は得られていないようです。
通り一遍の研修よりも、医師に質問できないことを師長が把握し、質問を代行する役割をすると効果的です。
医師とのコミュニケーション
医師は誰と情報をやり取りすれば良いのでしょうか。看護師リーダー?部屋持ちの担当看護師?医師のこの迷いが不安を招きます。
長時間労働で寝不足でもあります。看護師との間にギャップが生じ、時には攻撃的なことばになってしまうことも。
新人看護師は、
「こんな質問をしたらできない看護師だと思われそう」
「忙しそうで質問しにくい」
などと思い、医師に質問や相談するのが苦手になってしまいます。
師長は患者さんやご家族との面談や、各種会議もあり超多忙です。更に看護師不足で、自分もスタッフとしての業務をこなします。
質問の代行まですることはない、という意見もあるでしょう。しかし、師長が主治医、リーダーと情報を共有化している場合は、全体の情報の共有化がきちんとでき、医療安全の向上につながります。
誤解される理想の看護師像
医師から漏れや抜けのある指示が出た場合、質問や確認をせず、わかってあげるのが「できる看護師」「気の利く看護師」と誤解され、新人看護師が憧れるようであれば、否定することが大切。
推測や想像はトラブルのもと
記入漏れや曖昧な点、ルール違反のある指示について、質問や確認をする看護師は「融通が利かない」「仕事がわかっていない」「生意気」などと医師から煙たがれがち。
しかし医療事故にも繋がるルール違反は、新人看護師もきっぱり医師に伝えるべきなのです。
紙伝票によるオーダーがでた場合は、特に注意を払い漏れや抜けはルール通りすべて記入してもらいます。
情報の流れを管理する
リーダーや新人看護師の代行役をすると良いのですが、いつまでもそれを続けているわけにはいきません。
いずれ主任や視聴になります。自分で質問できるようにするために、質問の仕方の訓練が必要です。
質問のコツ
質問は、する方にもされる方にもストレスが起きます。特に1対1ではお互いにプライドが気にかかるものです。
質問される側
こたえられなかったら(間違っていたら)恥ずかしい
忙しいのよ。それくらい自分で考えて欲しい。そのほうが教育になるし
わからないことを聞かれれば誰でも「困った」と思うし、恥ずかしいと感じるかもしれません。「そんなことも知らないの」「学校で習わなかったの」はつい、言ってしまうことばでしょう。答えられないような質問をされたら
良い質問だけど、実は私もよく知らないから、他の人に聞いてみるわね
そのことはまだわかっていないから、皆で考えましょう
などと答えれば、新人看護師はあなたの飾らない人柄と前向きさに憧れるでしょう。個人の知識や経験には限りがあります。チームの力で少しでも解きほぐすと考えれば良いのです。
質問する側
仕事ができないと思われたくない
そんなことも知らないのと言われるのが怖い
生意気だと思われたくない
医師や先輩があまりにも忙しそうで、今質問したら迷惑かも
そんなことも知らないの、学校で習って来なかったの、と言った攻撃的なことばを言われたら、お互いに傷つきストレスになりますし、ストレスを恐れて質問せず、後で自分で調べようと抱え込んでしまう新人が多い。
クッションことばを使う
「◯◯についてわからないのですが、誰に聞いたら良いでしょうか」と間接的な質問にすると、相手は自分でこたえられる内容ならこたえてくれるし、こたえられなくても、
誰かに振れば良いのでストレスになりません。
確認の形に変える
「◯◯について私はこのように考えていますが、これで良いでしょうか」とすれば相手も答えやすくなります。
わからないことはわからないと言う
何がわからないかもわからなくなってしまう場合もあります。
必ずメモを取り、わからないことを伝えてわかるまで確認します。良くわかっていないのに「わかりました」というのは致命傷といえます。
報告に求められる要素
報告はなんのために行うのか、という目的を徹底することが必要です。
診察、指示、確認などを求める要素を含んでいます。相手が間違えないように事実を示し、どうして欲しいのかをはっきりさせることがポイントです。
5W1Hと目的
看護師の仕事は毎日報告することが山積み。報告で明け報告で終わります。安全確実で仕事のストレスを軽くする、医師への報告のポイントを覚えておきましょう。
- 誰が誰に何を報告しているのか
- 報告者はどこにいるのか
医師への報告の3つの目的
- 診察をしてください
- 指示を出してください
- 看護師(私)が実施したことを医師(あなた)が確認してください
報告を迷うとき
医師に報告すべきかどうか迷うこともありますが、そんな時こそ報告すべきです。医師に何をして欲しいのかをはっきりさせることが大切。
「仕事ができないやつだ」と思われる場合もありますが、まずは患者さんの生命が最優先ですから。
師長の安全配慮義務
病院と師長には、民法、労働基準法、労働安全衛生法に基づき、看護師の安全と健康に配慮する義務があります。
心身の健康状態を把握する責任
健康診断を受信させるということだけではありません。具合が悪そうな看護師に理由をきき、「今日は帰りなさい」といった指示をすることも含まれます。
師長は看護師に対して指示命令ができます。医師にも実質的に指示命令をしている、そういう人が有能で優秀な師長といえるでしょう。
看護師の労働時間を把握し、心身の健康状態を把握する責任があるのです。
もしメンタルヘルスの不調を起こすような勤務をしていたら、必要に応じて勤務軽減措置をする義務があります。
まとめ~離職を防ぐ上司のマネジメント能力
どこの組織も上司次第で環境は変わります。上司に恵まれないとメンタルヘルスも悪化するばかりかも。
逆に言えば、マネジメント能力に優れた上司であれば、スタッフの心身の健康を管理し、離職も防げるのです。
師長が実際にどのように新人看護師をマネジメントするか、それについては後日触れたいと思います。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ