ミスがこわくて、ミスをしてしまって、看護の仕事に自信をなくしているナースに、「こんなこともあるのよ。だから大丈夫。自信を持って、誇りを持って」とエールを贈ります。
ナースの1日、ヒヤリ・ハット事例から
ナースの仕事は、患者さんの命を預かる、絶対にミスは許されない(はず)の現場です。しかし、日常に起こりうるちょっとしたミスだけでなく、時には命に関わる、重大なミスがおきてしまうことも。
重要なのは、いかなる場合も、万が一ミスを起こしてしまった時は、対処をいかに迅速、適切に行えるかということ。そこにナースの成長もあります。
「私、失敗しないので。」有言実行出来るのは、ドラマの中のお話。ナースの1日の仕事で、医療ミスにはつながらなかった、「ヒヤリ・ハット」事例の報告も、少なくありません。
勿論、ミスをしないのが理想、医療に携わるものは皆、ミスを起こさないよう最新の注意を払っています。それでも起こる。
起こりやすいミスは誤薬がトップ
ナースの1日の仕事で、誤薬が一番多いミスです。
・同性の患者さんの薬を取り違えてしまった
・飲ませ方を間違えてしまった
・思い込みで間違えてしまった
・飲ませ忘れ
などなど。
この他、隣の患者さんに注射を打ってしまった。食事も患者さんによって、内容が違うのですが、間違えて配膳してしまったなどのミスも。
特殊な見た目ゆえの勘違い
病棟では、「眠れないから」と訴える患者さんに、ハルシオンという睡眠剤を処方することも多い。見た目が特殊なので、すぐに他の薬と区別できるのですが…
青い楕円形の薬で、寝る前の薬のパック(朝、昼、夜など、時間に飲む薬をまとめてある)に入っていれば、ハルシオンと思い込んで居ました。
見た目が同じ青い楕円形の薬には、メネシットという、パーキンソン病の治療薬もあることを、新人ナースは知らなかった。
違う薬を飲ませちゃった!
なので、別の患者さんに出ているメネシットを、「よく眠れるお薬ですよ」とハルシオンと思い込み渡してしまったのです。二つ並べると、メネシットの方が倍の大きさなので、間違えようはないのですが。
しかも、その間違いに気づいたのは、しばらくたってからでした。本当に大事に至らず、良かったと胸をなでおろすばかり。ちなみに患者さんは、メネシットを飲んで大いびきでぐっすり寝ていらっしゃいました。
同じ薬で、もっとややこしいミスも
病は気から、と言いますが、薬にも似たようなことがあります。
「これは劇的に風邪に効く新薬」と言ってただの栄養剤を飲んだ人と、普通の風邪薬を飲んだ人の、どちらがより効いた、と思ったか。ただの栄養剤を新薬と言われて飲んだ人のほうが、良くなった。と感じる率が高い。
これを利用して、薬に精神的な依存の強い患者さんなどに試験的に使われる、見た目は同じでも、効果は全く無いプラセボという、ニセの薬が有ります。
信じると効いちゃう、人間の身体は凄い!
本物と偽物がまぜこぜにならないよう、きちんと分けてあるのですが、それを同じものだと思い込み、一緒にしてしまった。
見分けがつかないのですから、「もう一度両方を処方してもらわなければ、でも、どうやって頼んだら」とオロオロしている新人ナース。
先輩は肝が座っていました。「このままで大丈夫よ。どうせどっちを飲ませても、大して違いは無いから」と、にっこり笑って、本物か偽物かわからないハルシオンを患者さんに渡したのです。
患者さんはぐっすり眠る
患者さんが知ったら激怒されるかもしれません。でも、驚いたことに、みなさんぐっすり。本物と偽物が混じっているのですから、何日かに1回は偽物を飲んでいるのです。でもいつも変わらず、すやすや寝入っていました。
ハルシオンをミョーな使い方をして、遊んでいる子達にメネシットを渡したら、同じように飛ぶに違いない。そのへんのバカバカしさを知れば、薬にハマることも無いのでは、なんて思ったりします。
「私、絶対にミスなんかしません」とんでもナース
かなり特殊な事例ですが、自分に絶対の自信を持っているナースがいました。結果は周りに迷惑をかけまくり、異動していったのですが。
ナースの1日で、うっかりミスは、結構多いのが現状。ミスが起きた時は、上司や主治医に報告して指示を仰ぎ、素早く対処する必要があります。しかし、絶対に自分のミスを認めないナースがいたのです。
「私は絶対にミスなんかしません」と言い切るくせに、小さなミスを繰り返しています。
自分のミスを他人に転嫁
決まった時間に薬を飲ませるのも、ナースの仕事です。とんでもナースは、飲ませ忘れが多い。
それに気づいたナースが、親切から声をかけても、お礼どころか、自分の非を認めることは絶対に言いません。
それどころか、「◯◯さんに、飲ませといて、と頼んだのに。ちゃんとしてくれないと困るわ」と責任転嫁して怒る。
飲ませ忘れは毎回、注意されれば、人のせい。周りがフォローできる範囲ならまだ良いのですが、患者さんに間違った食事を配膳したり、点滴の取り違えなどはフォローしきれません。
とんでもナースから身を守る
一歩間違えれば重大事故に繋がる。ある時など、そんな重大な自分のミスを、相手のミスとして報告、濡れ衣を着せてしまいました。あまりにも頻繁にそういうことがあるので、他のナースたちも防護策を講じたのです。
・配膳させない
・頼まれても引き受けない
・ミスを発見しても、本人でなく、すぐに師長に報告
ナースにも適材適所
この結果、師長にとんでもナースのミスが、毎日のように報告され、ついに異動となりました。異動先は医療行為の無いデイサービスで、病棟勤務は無理でもそこならやっていけるだろう、という配慮でした。
ナースにも、適材適所があるのですね。実際彼女はそこで今も頑張っています。
医療事故とナースの成長
残念ながら、患者さんの生死に関わる重大な医療ミスを、起こしてしまうことも有ります。本人も、上司も死にたいと思うほどの苦しみを味わう。
しかし、そこからナースとしての成長をすることも出来る。
死にたい、けれど仕事は続けなければ
医師の指示に従っておこなった、静脈注射で起きた死亡事故。注射をしたナースは、死にたいほどの気持ちでいました。辞めたくても、患者さんへの賠償問題もあり、働き続けるしかありません。
上司として、責任を感じて辞めたい、と思ったのは事実です。しかし部下のナースが、働き続けられるように守らなければ」と言う気持ちで仕事を続けました。
ナースの仕事には強さも必要
ツライこと、苦しいことから逃げ出さない強さも必要です。失敗から学んだことを、次に活かす。つらい思いをした人は、人の気持もよく分かる。患者さんと心身ともに関わる、ナースという仕事にはとても大切なことです。
新人ナースは失敗から学ぶ
今考えると笑い話ですが、「針刺し」の恐怖で毎日おののいていたことが有りました。
患者さんの臀部に刺した針で、自分の指を刺したことが有ります。痛いし、血は止まらない。それ以上に恐怖は患者さんが感染症では無いだろうか、ということ。
報告できず、ガマン
「針刺し」の事故もすぐに報告しなければいけないのですが、カッコ悪いし、申し訳ないというわけで言わずにガマン。でも感染症がチラチラして上の空になっていました。
普段と違う様子に、心配した同僚が声をかけてくれたので、事の顛末を話すと…
「腰の注射?エルシトニンでしょ。血管に入ってないじゃん。平気だって」
「あっ、そうかあ」筋肉注射は直接血液に触れていないので、感染の可能性は少ない。そんなことも思い出せない新人ナース時代。
ミスもナースの成長の糧
ミスをしないのが理想では有りますが、人間はミスをするもの。小さなミスも、ナースの成長の糧になりえます。ミスをどう捉え、どう対処するか。常に考えるべきことです。
まとめ
思い返せば笑い話、生死に関わる重大なミス、ナースの1日には様々な要素が。
人間はミスをおかしうるものなのだ、ということを前提として、「ミスは許されない」という建て前のもと、
・ミスが起こりにくい体制作り
・ミスが起こってしまった場合の対処法
などのマニュアル化など、現実的な研究がもっとなされても良いのではないかと思います。
画像出典: テレビ朝日 ドクターX
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