健康と日々の徒然~Anのひとりごと

心と体の健康を大切にしたい方へ贈るひとりごと

ナースの仕事は間隙手~患者を守る3つの力とは?

医療チームのリーダーが医師なら、キーパーソンとしてその役割を発揮する立場にあるのが、ナースです。患者さんを守るためナースが果たす間隙手としての役割と力とは?

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間隙主として必要な3つの力とは

間隙手→すき間を埋める手。その時その時に最良の医療・看護が患者さんに提供できるよう、患者さんと医療チームがスムースにやり取りできるよう、両者に働きかける役割を持っています。つまりナースは間隙手(かんげきしゅ)というわけ。

間隙主として、患者さんに、①異変が起こっていることをいち早く見抜き、②手遅れにならないように③素早く手を打つことがナースの仕事。患者さんを守るためにはこの3つの力が大切です。医療の現場にはさまざまな専門職がそれぞれの仕事を行っています。しかし,専門領域と専門領域の間には、隙間~間隙(かんげき)があり、そこから患者さんを救い出す役割をナースが担っています。

①異変を見抜く力
②判断する力
③手配する力

医療チー

ムのすき間から、危険な予兆を見抜くには、誰かが患者さんのすべてを、日常を身体的、精神的に把握している必要があります。誰も把握していなければ、患者さんが命の危機に陷ることもありえるからです。

ナースの仕事

ナースはチームを組んで、24時間患者さんを、注意深く見守っています。誰もが見過ごしそうな事、患者さんの抱える様々な問題を的確に捉えて、医療の隙間に対応していくのがナースの仕事。

どうしたら患者さんの生活反応(身体的、精神的、社会的問題など)から、危険な予兆を見ぬくことができるか、どんな対応をして、誰の力を借りればよいか。それをいつも真剣に考えています。

 

①患者さんの異変をいち早く見抜く力

ナースは間隙手として、全体を捉え、ちょっとした異変も見抜く力を持っていなければなりま

せん。

例えば、社会的な問題行動がある場合です。その裏に何かの予兆が潜んでいるのではと疑い、対応した結果、深刻な症状になる前に対処出来ることも有ります。

患者さんの普段の様子を、的確に把握し見守っているナースだから、ちょっとした異変の兆候も見抜けるのです。

 

②対処法を即座に判断する力

異変を察知した時に、チームの誰の力を借りれば良いのか。それを即座に考えて判断する力も必要です。


ここで判断を間違えると、適切な処置が出来るまでに、ムダに時間が過ぎてしまうこともあるでしょう。場合によっては、1分の遅れが重大な結果をもたらす可能性も有り得ます。

 

③誰の力を借りるか、優先順位を付けて手配する力

どんな対応をすればよいか、判断をしたら、手遅れにならないように優先順位を付けて、次々と手を打っていく必要が有ります。

ここがナースの仕事で一番大きな責務と言って良い。

 

ナースの仕事は24時間の見守り

間隙主としてナースが、患者さんの異変をいち早く見抜けるのは、ナースの仕事が患者さんの血圧を測る、点滴をする、食事や入浴、排泄の介助など、患者さんの療養生活をサポートしながら、1日24時間、チームを組んで患者さんの反応を注意深く見守っているからです。

病状や身体的な異変だけでなく、精神的な異変も察知できます。

 

合併症はナースのスキルと関係がある

手術後に合併症を起こす患者さんもいらっしゃいます。手術自体に問題があるケースもあるのですが、実は、ナースのスキルと密接な関係が有ります。

異変をいち早く見ぬいて、どう手をうつかを、的確、迅速に判断できる、スキルのあるナースがお世話している患者さんは、合併症を起こすことは少ないのです。

患者さんの異変を見抜く力は、「療養上のお世話」と「診療の補助」という両方の業務を通して培われます。

 

精神的なものからも異変を察知

寂しさから夜中

に何度もナースコールをする方、身体が自由に動かないもどかしさから、ケンカを売るような態度を取ってしまう方…

それぞれの性格やくせなど、精神的な部分にも密に関わっています。だから、「あれ、今日は妙におとなしい」と言ったちょっとした変化にも敏感に反応でき、それが異変の前兆であることを見抜けることもあるのです。

 

まとめ

患者さんの危機を救う主役は各専門領域の医療チームです。しかし、チームとして仕事をしていると、すき間、間隙ができてしまう可能性も高い。すき間を見逃すと、治療の可能性も見落とすリスクもあ

り得ます。
リスクを回避するためにも、高度に機能が細分化されたプロの集団には、全体を見ている人が必要です。それが間隙主としてのナース。
24時間患者さんのそばに居て、療養生活を支援、診療のアシストを通して医学的な知識・技術も蓄積。それがナースの仕事です。

「看護師は間隙手」 

            坂本 すが (東京医療保健大学看護学科長)

ある問題が患者に生じたとき,看護師は,チームの誰が中心になって解決にあたるのか繊細な判断をし,常に患者にとっての最善を念頭にチームと協働する。医療スタッフに対しても同じである。これからの看護師は,医師に伝えるかどうかを判断するだけではなく,どう伝えたら効果的かを考える。間隙手は主体的でなければならない。単なる調整役ではなく,患者の状態に応じて医師に報告するかしないかの判断を行うのも看護師の裁量権である。看護師は24時間患者のそばで,患者の状態変化をとらえて適切に対応する。看護師数の増加が患者の死亡率を低下させるという現状の分析結果(Aiken他:Hospital Nurse Staffing and Patient Mortality, Nurse Burnout, and Job Dissatisfaction, JAMA, 2002.)は,看護師の間隙手としての効果を表している。合併症などの危険性を早期に判断し,対応し,未然に防ぐことも看護師がよく行うことである。これも判断する裁量権があるからこそできることである。

出典: 医学書院/週刊医学界新聞(第2815号 2009年01月26日)

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