ますます進む高齢化社会では、家庭での看護も必要になってきます。高齢者の看護に、一般的にはあまり知られていない、ナイチンゲールの生き方、考え方から学べるものは大きい。「看護覚え書」はすべての人に看護とは何かを伝えるために書かれました。
「病気とは回復過程である」- ナイチンゲール著「看護覚え書」から
白衣の天使ナイチンゲール
ナイチンゲールといえば、「白衣の天使、(クリミア)戦争時に活躍した人」と言うイメージが一般的ですが、人生後半の50年はベッドの中で過ごした人です。
クリミア戦争で活躍したことは、多くの人に知れ渡っていますが、自身が看護婦であり、病人でもあったからこそ、確固たる信念を持って、看護に情熱を燃やし続けた事は、あまり知られていません。
「看護覚え書」という神経の行き届いた本がかけたのは、そんな彼女だったからでしょう。
看護覚え書は、病気に接するための基本の姿勢、看護師のみならず、全ての人に「看護とは何か」を伝えるために書かれたものです。
ナイチンゲールが看護(看護師)について、どう述べているのか、一部分ですが紐解いてみました。
看護師のバイブル
看護の仕事につくものにとって、ナイチンゲールの著書、「看護覚え書」は言わばバイブルのようなもの。
「すべての病気は…程度の差こそあれ、回復の過程である。…それは(障害を)癒やそうとする自然の働きなのだ」
看護師なら読んでいる「看護覚え書」の冒頭部分です。
病気はどん底ではない
「病気」という言葉は、ありがたいものではありません。誰しもが、「今がどん底。ここからどうやって回復したらいいのだろう」と絶望的な気分に陥り、病院に足をむけます。
実際「◯◯」という病気と告げられると、それだけでがっくりし、オロオロしてしまうばかり。
病気とは回復過程である
しかし、「看護覚え書」を読むと、「病気とは回復過程である」と言っています。
つまり、どん底状態は既に通り過ぎ、回復に向かっている途中の症状だということ。
自分の努力でもなんとかなりそうな気になってくるのです。病気を治すのは、医師と看護師だけでなく、患者自身の気持ちが大切なんですね。
「病は気から」
気力だけでは、やはり病気は治りませんが、ちょっとしたことがきっかけで、格段の回復力を見せることも多々有ります。
父が精密検査のため、入院しました。体調が悪いのですが、これといった原因も見当たらず、とりあえず検査を詳しくしてみましょう。ということで。
普段から些細な事で落ち込むひとなので、入院、というだけでもう、「生き死にに関わる」と思い込んでしまって。
4人部屋の廊下側のベッドをあてがわれた父は、なんだか顔色も悪く、本当にどこか重大な原因があるのかも。と思えるほどだったのですが。
窓際のベッドが空いた
他人との関わりが、とっても苦手な父には、入口側のベッド、というのも落ち込む原因だったようです。一晩中眠れなかったようでした。
次の日に、窓際のベッドがあき、そちらに変えてもらったら、窓から見える景色に心が和んだのか、人の出入りも気にならなくなったためか、その晩はぐっすり眠れたそうです。
精神的な安らぎが回復を助ける
外の景色が診られて、周りの出入りを気にしなくても良い。そんな日常ではどうということの無いことでも、患者の立場になると、精神的な安らぎになるんだなあと感じました。
検査の結果も、特にこれといった問題はなかったこともあり、自分は長くないのでは、とがっくりしていた父も、「後2,3日様子を診ましょうね。」という病棟ナースの言葉に冗談を返すほど。
気持ちのもちよう、本当に大切です。
ナースシューズを履いている理由
看護師がナースシューズを履いている理由の一つに、靴のきしむ音がしないようにということが有ります。
大きな音は論外ですが、ほんの少しの小さな音にも注意しなければいけません。
入院という、日常とは違う場所での生活では、些細な音が患者さんに不要なストレスを与え得るからです。
「絹や堅織布(クリノリン)のさらさらする音、ペチコートのカサカサする音、鍵束のガチャガチャいう音、コルセットや靴のきゅうきゅうときしむ音、これらは、世界中のありとあらゆる薬の効き目が患者を良くしても、それに追いつかないほど、患者を痛めつけている」
看護師の仕事は専門職
一般的なイメージでは、看護師は「医師の助手」医師にはなれないが、医師の医療行為の補助者として存在する、言わば医師の手足と思われがちです。
しかし、看護師は単なる医師の助手ではなく、独立した専門職であり、医師が医療行為の側から病気を診ますが、看護師は患者さんの側から「回復の過程」としての病気を見ています。
看護師の仕事は、患者さんの状態を、患者さん以上に理解して、必要なことを整える仕事です。
ナースコールの初の提案者はナイチンゲールだった
ナイチンゲールがかつて管理したロンドンの病院で、本来の看護を実現させるために、こんな発言もしています。
「患者たちの呼び鈴は、全てその下位の看護婦室のドアのすぐ外の廊下でなり、かつまた呼び鈴が鳴ると同時に便が開いて誰の呼び鈴がなっているかが即座に看護婦に解り、さらにしばらくは便が開き話になっているような呼び鈴にスべきです」
出典:セシル・ウーダム-スミス著「フローレンス・ナイチンゲールの生涯」上巻
まとめ
子供の頃、ナイチンゲールは「戦争で兵隊さんを敵味方別け隔てなく介抱した立派な人」というイメージを持っていました。
ナイチンゲールの伝記を読んで、将来の夢、として「看護婦(師)になりたい」と思った女の子たちで、実際に夢をかなえた人もいる。
伝記では知り得ることのない、ナイチンゲールの偉大さ、看護とはを深く考えさせられる「看護覚え書」は看護師に取ってバイブルとも言える著書ですが、高齢化社会で、家庭での看護も増えつつ有る現在、多くの人にぜひ読んで欲しい本です。
看護婦と売春婦の関係など、今まで知ることのなかった歴史も知ることが出来ます。
画像出典: Wikipedia
「Anのひとりごと」~今日も1ページ