がん患者さんの不安・抑うつとは?その要因は?治療やケアなどナースにできること、不安・抑うつに対処する3つのステップを検証します。
生きることを感じるナースの仕事
がんの患者さんは、「死への恐怖」や「先行きの不確かさ」などからくる不安、体の部位や機能などの喪失体験などを抱えています。
終末期の患者さんは、緩和病棟で穏やかな心で死を迎えたい、と思う方も。
厳しい状態のがん患者さんが多い外科病棟で、スタッフが対応に困っていた方がいらっしゃいました。
四六時中ナースコールで痛みを訴えます。医師が眠剤を処方しても、「痛くて眠れない。あなたが隣で寝てくれれば、俺も眠れる」と言い出す始末。
ある時、患者さんの背中をあやすようにさすってみたら、「楽になった」といいながら寝息をたてて眠ってしまったのです。
それ以来、バイタルなどの時に背中をさすって上げるようにしたら、ナースコールはぱたっと止みました。
がんという病気で精神的な不安や、家族と離れて入院していることからくる寂しさが、痛みとなって訴えていたのかもしれません。
医師が出す薬は聞かなくても、ナースには患者さんを楽にする力がある。そう思った出来事でした。
ナースにできること
患者さんに向き合い、その時自分が感じたこと、自分に起こっていることを、患者さんにお返しする。
患者さんの辛さを引き受けつつ、死と向き合っている人と関わることの苦しさ、辛さをナース仲間と分かち合うことも必要です。
患者さんの様子を、1日を通して観察できるのがナースの仕事。不安や気持ちが落ち込むパターンや、1日の中での変動などをチェックしたり、薬剤の効果を評価したりすることが大切。
では具体的にどのようなことができるのか。
身体症状の緩和の工夫
身体が辛い時は、心も不安定になりがちなもの。患者さんが辛いと感じている、体の症
状を緩和するために
- 体位の工夫
- マッサージ
- 足浴
などの、具体的なケアで患者さんが楽に日常生活を送れるようなサポート
精神面のケア
- 患者さんが自分の辛さを気兼ねなく訴えることができる雰囲気作り
- 頻繁な声がけなど、安心感を感じられる
- 患者さんが、「自分のことをわかってくれている」と感じられるような、コミュニケーションをこころがける
患者さんの自己コントロール感を支持
身体機能が失われ、人に頼らなければならないことが増えた時、達成可能なことを設定して、「自分でもできることがある」と患者さんが感じられるような「小さな希望」をみつける
家族へのケア
辛いのは家族も同じ。患者さんとの意思の疎通は上手く言っているか、家族の疲労感はどうかなどの目配りも大切
チーム医療
ケアに関わる様々な職種が、それぞれの専門性を活かした治療ができるよう、コーディネートする。
不安・抑うつに対処する3つのステップ
がん患者の不安・抑うつ」に対処する3つのステップとは、コミュニケーション、患者理解、非薬物療法と薬物療法です。それぞれどのようなことなのか、見てみましょう。
STEP1 信頼関係の構築: 良いコミュニケーション
- 症状や治療についての適切な情報の提供
- 「つらさ」を表せるような環境つくり
- 「つらさ」の緩和のためのパートナーであるという保障の提供
STEP2 患者の辛さをきちんと理解するための7つのアンテナ: 患者理解
- 患者の病期(診断確定~終末期医療)
- 疾患に特有の症状
- 疾患に対する治療
- 治療自体の、体への負担(副作用・後遺症など)
- 疾患や治療に伴う「喪失感」(身体部位、機能など)
- 疾患や治療以外に抱えているつらさ
- 年齢、家族内の役割、発達課題
STEP3 患者の辛さへの働きかけ: 非薬物療法と薬物療法
- 介入が可能な問題と不可能な問題の見極め
- 楽になるための問題解決
薬物療法 身体症状の緩和、薬剤性要因が疑われる薬剤の整理、興奮薬・抗うつ薬、眠剤などの適切な利用
非薬物療法 環境調整、支持的関わり、支持的精神療法、リラクゼーション法、家族ケアなど
がん患者の不安・抑うつとは?その要因は?
不安、抑うつとはどんなことでしょう。がんは自由にならない身体や苦痛、仕事や家庭、家族との関係など多くの辛さを伴います。
患者自身が捉えている辛さを明確にすることが大切です。
不安「はっきりとした対象がなく、漠然と安心できない心の状態」
死や痛みなど具台的な対象がある「恐怖」と対比されます。先行きの不確かさと結びつくことが多い、
「診断」「検査」「治療の効果」などががん患者の不安。
抑うつ
「気分の落ち込みや欲動の低下が一定期間持続し、かつ、そのような気分に関連した幾つかの症状を伴う心の状態」
「気力の減退」「不眠」「倦怠感」「食欲不振」など、がん症状と抑うつ症状が重なっている場合もあります。
一般人の場合は6%程度に見られる抑うつですが、がん患者の場合は15~25%、特に全身状態の指標(PS)が悪い患者に見られる頻度が高い傾向にあります。
要因・誘引となるもの
いろいろ有り多面的です。重なりあうことも有ります。
患者さんだけでなく、家族にも不安・抑うつの症状が発言することも少なくありません。家族のストレスにも留意が必要です。
- 身体的要因
- 精神・心理的要因
- 薬剤性要因
- 環境要因
- その他のストレス要因
治療のポイント
- 身体症状の緩和: 身体を楽にすることが大切。痛みのコントロールなど。身体的要因となっている状態の是正に、「酸素投与」「血糖値の是正」なども必要
- 薬剤の見直し: 不安や抑うつ症状に対して、薬剤性が疑われる場合は、原因と考えられる物を中止
- 非薬物療法:カウンセリング(支持的精神療法)
リラクセーション法(呼吸法、漸進(ぜんしん)的筋置換法、イメージ療法など)
認知行動療法
その他 - 薬物療法: 依存の心配には、必要がなくなれば止められる薬であることを保証する
まとめ~看護師にできることは?
がん患者は病気による身体的な痛みや辛さだけでなく、死への恐怖などから不安・抑うつになることが多い。
不安や抑うつの要因、治療、ケアの3つのステップでナースができることは、患者さんが楽に日常生活を送れるようサポートすることです。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ