椎間板ヘルニアは、10~40歳代の若い世代に多い腰痛の原因ですが、70~80%の患者さんが保存療法で改善します。椎間板ヘルニアの起こるメカニズムを解説し、症状や治療法をお伝えします。多くの場合、保存療法で改善しますが、手術が検討されるケースもあります。
椎間板ヘルニアの原因と症状、治療法
食べられないゼリーとは、髄核(ずいかく)という物質。椎間板の内部にあります。このゼリー状の物質と軟骨が外に飛び出すのが椎間板ヘルニアです。
腰に大きな負担がかかって椎間板にひびが入り、内部のゼリー状の物質が、軟骨と一緒に外に飛び出して腰の神経を圧迫し、痛みやしびれなどの症状が現れる病気です。
神経が圧迫されて腰痛が起こるメカニズム、椎間板にひびが入る4つの原因を確認し、椎間板ヘルニアの治療について詳しく解説します。
治療は保存療法から
ヘルニアは手術でなおすもの、と考えがちですが、椎間板ヘルニアの患者さんの70%~80%は保存療法で改善します。
3か月~半年ほど続けると飛び出したゼリー状の物質が、自然に吸収されることがあります。保存療法は以下の5つのような方法があります。
- 薬物療法
- 装具療法
- 神経ブロック
- 温熱療法
これらを行うことで、痛みが緩和する人も多いです。痛みが落ち着いたら
- 腹筋と背筋を鍛える運動療法
を始めます。
保存療法の効果が見られない場合は、手術を検討します。
日常生活での工夫
日常生活でも、少し工夫をすると腰への負担を軽減することができるので、意識することも大切です。
- 長時間立っている時: 片足を10cm程度の台に乗せ、時々左右を交換する
- 寝る時: 硬めのマットレスを選ぶ。仰向けではひざの下に座布団を入れる、横向きでは軽くひざを曲げる
- ものを持ち上げる時: できるだけ身体を荷物に近づけ、ひざを十分に曲げて持ち上げるよう注意
薬物療法
炎症に夜痛みには「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)などが効果的ですが、神経障害による痛みにはあまり効果はありません。
神経障害には、「抗てんかん薬「「抗うつ薬」「抗不安薬」「オピオイド鎮痛薬」などで痛みをおさえます。
装具
コルセット(医療機関で処方されるものを使用するのが望ましい)を装着して、痛みが強まる姿勢を防ぎます。
医療用コルセットは、腰部を固定して安静を図るための医療用具なので、作業をする場合の使用は不適切です。
介護などの作業を行うときは、腰痛ベルト(腰部保護ベルト)を適切な位置に装着して、腰にかかる圧を分散させます。
ただし、腰痛ベルトをしていれば腰痛にはならない、とは言えません。
神経ブロック・温熱療法
神経ブロック
薬物療法や装具でも痛みが治まらない時は、神経のそばに注射をする神経ブロックを行ないます。
痛みの刺激をブロックする「局所麻酔薬」炎症を抑える「ステロイド薬」などがあります。
温熱療法
患部を温めて血行を促進させ、筋肉の緊張と痛みを和らげます。
運動療法
脊柱起立筋(身体を起こし、姿勢を保持する)と多裂筋(身体を捻る動作を助けるインナーマッスル)を鍛えます。医師の指示に従い、運動を止められている場合は行ってはいけません。
- お腹の下に枕やクッションなど、軟らかいものを起きうつぶせになる
- 手は後ろで組む
- 顎をひき、軽く上体を反らせる(反らしすぎると筋肉を痛めるので注意)
- 5秒間そのままの姿勢を保つ
- ゆっくり1の姿勢に戻る
1セット20回、一日2セットを目安にする。
手術
- 3か月以上保存療法を行っても、症状が改善されない
- しびれや麻痺などの神経障害が進行している
- 神経が圧迫されて尿がでない「排尿障害」がある
などでは手術を検討します。後方椎間板摘出術が最もよく行われています。
後方椎間板摘出術
背中の皮膚を切開し、腰椎の後ろ側から飛び出したゼリー状の物質を取り除く方法です。
手術時間は1時間ほど、入院は1週間程度です。最近は内視鏡を用いるケースが増えています。
手術後の注意点
手術の翌日には歩くことが出来、デスクワークなら2週間位で復帰できます。重労働の場合は2~3か月間かかります。ゴルフなどの運動は3か月程度控えます。
手術前は痛みのため、身体をあまり動かさない患者さんが多いので筋力が低下しています。手術後は、特に問題がなければウオーキングんどの運動を積極的に行ない、筋力をつけることが大切です。
椎間板ヘルニアが起こるメカニズム
椎間板は、硬い椎骨同士が直接ぶつからないように、クッションの役目をしている軟骨です。背骨(脊柱)の腰の部分(腰椎)を構成する5つの椎骨の間に入っています。
腰に大きな負担がかかると、この椎間板にひびが入り、中にあるゼリー状の物質(瑞鶴(ずいかく))が、軟骨と一緒に外に飛び出すことがあります。これが椎間板ヘルニアです。
飛び出したゼリー状の物質が腰椎を通る神経の束(馬尾(ばび))や、そこから枝分かれしている神経(神経根)を圧迫し、強い痛みやしびれなどの症状が起きます。
ひびの入る原因
以下のような原因で椎間板にひびが入ります。
- 急激な衝撃
- 加齢
- 喫煙
- 体質
【急激な衝撃】
激しい運動や、重い荷物を持つ作業などで、腰に強い衝撃が何度も加わると、椎間板が徐々に劣化するのでひびが入りやすくなります。
若い世代に椎間板ヘルニアが多いのは、はげしい運動や重労働をする人が多いことも一因といえます。
また、デスクワークなどで長い間悪い姿勢を続けていると、腰に負担がかかり、ひびが入りやすくなります。
介護をしている人や、看護師なども椎間板ヘルニア等、腰痛に悩む人が多いです。
【加齢】
椎間板の老化は20歳代から始まっています。それほど強くない衝撃でも、ひびが入る可能性があることを知っておくことも大切です。
椎間板ヘルニアで現れる症状があったら、整形外科を受診することをおすすめします。
【喫煙・体質】
喫煙によって血流が悪化することも、椎間板ヘルニアの要因と考えられています。
また、体質的に椎間板にひびが入りやすい人もいて、10歳代で発症する場合は、体質的な要因が考えられます。
症状
椎間板ヘルニアでは
- 前かがみの姿勢を続けると痛みが強くなる
- 椅子に座っているのが辛い
- お尻、太もも、ふくらはぎにかけて痛みやしびれが強い
- 脚に力が入りにくい
などの神経症状が現れやすい。
腰椎から、馬尾から足へ向かう末梢神経が枝分かれしています。この神経が圧迫されると、腰から脚にかけて、神経症状が現れます。
前かがみでは椎間板が背中側に押される力が強まり、神経をより強く刺激します。
看護師として腰痛を考える
介護師や看護師は前かがみ、中腰、腰のひねりなどの姿勢が頻繁に続きます。
夜勤やストレスなども影響し、腰を痛めて退職を余儀なくされたり、より負担が少ない勤務ができる職場に転職する看護師なども後をたちません。
職場で腰痛を発症したり、症状を悪化させる要因は3つ有ります。
- 動作要因
- 環境要因
- 個人的要因
これらが複合的に関与しています。最近では職場の人間関係によるストレスなど、心理的要因も注目されています。
これについても、後日取り上げてみたいと思っています。
まとめ~若者に多い椎間板ヘルニアは日常生活の工夫を
若い世代に多い椎間板ヘルニア。日常生活での工夫で、椎間板にひびが入らないように注意し、発症した場合は医師の指示に従って保存療法、運動療法を続けることが大切です。
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