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ナースダイアリー・超忙しい看護師のひとりごと

乳癌薬物治療~治療期間やメリット、デメリット、リスクの予測

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前回、乳癌の薬物治療で使われる薬の種類と特徴をお伝えしましたが、今回は乳がんのタイプ、タイプ別のがんに使われる薬の使い方とメリット、デメリットなどをお伝えします。

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乳癌の薬物による治療

乳がんは外科治療が原則で、放射線治療や薬物治療は補助的な治療ですが、近年遺伝子の研究が進み、新薬の治験も多く行われています。初期治療の方針を決める段階から薬物療法が検討されるようにもなってきました。

乳がんのタイプに合わせた薬物による治療

乳がんのタイプはホルモン受容体やHER2タンパクの有無、Ki-67(がんの増殖能力を示す)の値の高低により、次の5つのタイプに分けられます。

乳がんのタイプと薬物による治療(初期治療)

タイプホルモン
受容体
HER2
たんぱく
Ki-67
(増殖能力)
治療に用いる主な薬
ルミナールA型 あり なし 低い ホルモン剤中心
ルミナールB型 あり なし 高い ホルモン剤+抗がん剤
HER2型 なし あり 高い 分子標的薬(抗HER2 薬)
+抗がん剤
ルミナールHER2型 あり あり 高い ホルモン剤+抗がん剤+
分子標的薬(抗HER2 薬)
トリプルネガティブ型 なし なし 高い 抗がん剤

乳がんの薬物による治療は、このタイプに応じて行われるようになっています。

ルミナールタイプ 
ホルモン受容体があり、エストロゲンを取り込んでがんが増殖するので、ホルモン剤が有効

Ki-67の値が高い 
増殖が活発で、抗がん剤の効果が期待できる

HER2タンパク 
分子標的薬の抗HER2役が有効で、一般に増殖が活発なので、抗がん剤と組み合わせた治療が行われる

タイプに応じた薬を用いることで治療成績も向上し、効果の得られない薬を使わずに済むようになります。

乳がんのタイプの診断方法

以前は手術で摘出したがんの組織を調べるのが一般的でした。現在は、よほど小さながんの場合は除き、診断のための生検で採取した組織で調べるのが一般的です。術前薬物療法にも生かされています。

 

手術前に薬物で治療するメリットとデメリット

乳がんの薬物療法は、以前は手術ができないがん、再発したときに行うものでした。初期治療では、目に見えない微小転移の根絶が薬物療法の基本的な目標ですが、手術前に行うと、乳房内のがんを縮小させる効果が期待できます。

がんが小さくなれば、手術が困難とされた進行がんが手術できるようになったり、切除する範囲を縮小できたりするメリットがあります。

主として化学療法が行われます。最近ではホルモン療法(閉経後)も有用であると考えられるようになりました。

術前薬物療法を行う期間

抗がん剤はそれぞれ基本的な試用期間が決まっています。薬によって3~6か月間です。ホルモン剤を用いる場合も、一般的に6か月程度が目安となります。薬物療法でがんが消えても(画像検査で見えなくなる)がんがなくなったとは言い切れないので、現状では手術はせざるをえません。

現在、どういう人が手術をしなくても大丈夫かを、見分ける方法の研究がすすめられています。

デメリットは?

手術後に抗がん剤が必要な人は、術前に使ってもあまりデメリットはないでしょう。しかし術後に抗がん剤治療が不要とされる人が、術前に抗がん剤を使うと過剰投与になります。例えばルミナールA型ではリンパ節転移がなければ術後はホルモン剤だけで良い可能性が高いです。一方HER2陽性と、トリプルネガティブ型では、腫瘍をかなり小さくできる人が多いといえます。

薬物療法は、がんのタイプが選択のポイントです。最近では閉経後のホルモン陽性がんで、しこりが大きい場合、術後ホルモン療法と言う選択肢も出てきています。

 

術後薬物療法の必要性

再発予防の薬は、術後5年~10年たって再発しないとわかるまで効果が実感できません。一方で副作用と言うデメリットがあります。術後薬物療法の必要性をどのように考えたらよいのかは、手術をした時点での再発の危険性の予測が重要になります。

リスクの予測

  • 手術だけで薬物療法を行わなかった場合の再発の危険性(ベースライン)
  • どういう薬を使うことで再発リスクがどの程度になるのか

の予測を担当医に聞くことが大切です。薬物療法をした場合、しなかった場合と比べた上乗せ効果を、大きいと感じるか、小さいと感じるかで決めていくことになります。

例: 同じタイプのがんで手術だけして薬物療法をしない場合の生存率が50%のAさんと95%のBさん。
●Aさんはホルモン剤を使うと生存率が75%になり、抗がん剤を加えると80%になる。
●Bさんはホルモン剤使用で97%、抗がん剤を加えると98%。

Aさんの上乗せ効果は大きいですが、Bさんは少しだけです。この場合副作用などを考えるとBさんは薬物療法は選択しない可能性が高い。一方Aさんは10年生存率が50%から80%になるので薬物療法が勧められます。

高齢者の抗がん剤

高齢者も抗がん剤の効果は基本的に変わりはないとされますが、副作用は出やすくなります。抗がん剤の使用がどの程度可能かを心身の両面から検討、同時に患者さんの価値観や現在の生活状況なども考えて判断することが大切です。

 

薬物療法を行う場合の注意点

がんの薬物療法中には、妊娠を避ける必要があります。閉経前の人でも薬の影響で生理が止まることが少なくありません。治療後に再開すれば妊娠・出産は可能ですが、40歳以降ではそのまま閉経する人が多くなります。妊娠。出産の希望がある場合、事前に担当医とよく相談する必要があります。

新薬の治験に参加したい場合、ほかの薬をいろいろ使ってからでは参加が難しくなります。早めに相談して情報を得るようにしてください。

それぞれの薬の使い方

ホルモン剤

閉経前 
抗エストロゲン薬のタモキシフェンを単独、あるいはタモキシフェンとLH・RHアゴニスト製剤を併用。以前は併用が一般的でしたが、現在は必要性の高い場合に絞られるようになっています。

閉経後 
アロマターゼ阻害薬だけ、あるいは抗エストロゲン薬とアロマターゼ阻害薬を順に使います。

術後ホルモン療法は再発リスクに応じて、5~10年間続けます。

抗がん剤

再発予防のための抗がん剤治療は、いくつかの薬を組み合わせて用いるのが基本。作用の異なる薬を組み合わせることで、がんに対する治療効果を高め、特定の副作用が出ないようにするためです。術前に使う場合も同じです。

抗がん剤は経口薬も一部にありますが、多くは注射薬で点滴で用いられます。一般的に、1週間に1回、3~4週間に1回など通院して点滴を行います。その後休養期間を置く。これを4~6サイクル繰り返し3~6か月程度治療を行います。

分子標的薬

再発予防にトラスツズマブを使う場合は、使用起期間が1年、そのうち一定期間は抗がん剤と併用します。そのため、例えば術前に抗がん剤との併用で3か月使ったら、術後はトラスツズマブだけを残りの9か月間使います。

 

再発後の薬の使い方のポイント

初期治療で術後に薬を使っても、がんが再発したときに薬の効果は期待できます。使う薬を選択する際のポイントになるのは、

  • 初期治療から再発までの期間
  • 再発予防に使ったのはどの薬で、どのくらい使ったか
  • 再発時の年齢
  • 生理の有無
  • 再発部位

などです。

術後の薬物療法の終了から再発までに、1年以上たっていれば初期知慮王で使用した薬も効果が期待できます。それより短い期間で再発した場合は、別の薬を使います。

薬の使い方

初期治療と同様、乳がんのタイプに応じて薬を選択します。再発後はルミナールA型とB型は区別せず、多くの場合ホルモン剤から開始します。

再発時の治療では、副作用をうまくコントロールしながら、効果が得られるうちは一つの薬をなるべく長く使うことが重要です。副作用を我慢しないことが、生活の質を落とさずに長く付き合っていくコツです。

辛いときには薬の量を減らす、休養期間を作るといった工夫も大切。こんな副作用が今出ては困るといった事情があれば、担当医に伝えましょう。少しでも長く生きられる治療を望む人と、治らないなら副作用が少ない治療が良いという人では、薬の選択も異なります。薬を選んでもらう時には、自分の考えを十分伝えることが大切です。

 

まとめ

乳がんの治療は、選択の幅が広がっています。医師任せや自己判断にとらわれず、担当医とよく相談して考えを共有することが大切。生き方についてもよく考えて、自分に合った治療を選択してほしいと思います。

治療薬の詳しい内容や投与期間については、主治医、薬剤師に相談しましょう。

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