かぜを引いた後に発症しやすいめまいが前庭神経炎によるものです。一旦治まればそれ以降は大きなめまいはおこりませんが、ふらふらする感じが数年にわたって残ることがあります。前庭神経炎の特徴、ふらつきを軽減するリハビリについてお伝えします。
前庭神経炎とは
内耳が脳に繋がる前庭神経が炎症を起こす病気です。ぐるぐるする激しいめまいが数日間にわたって断続的に続きますが、めまいが一旦治まれば大きなめまいは起こらず、難聴など聴力に関する症状は現れません。
原因はよくわかっていませんが、かぜの後に発症しやすいので、ウイルスが感染して前提神経に炎症を起こすのでは無いかと考えられています。
ふらふらする感じが続くこともあり、症状が強い場合は入院することもあります。治療は薬物療法とリハビリです。
特徴とめまいが起こるメカニズム
前庭神経炎の特徴は
- 激しいグルグルするめまいが数日間続く
- 大きなめまいが治まった後もふらふらする感じが続く
- 難聴は耳鳴りはない
- かぜをひいた後におきやすい
- 片方の耳に起こる
などです。
めまいが起こるメカニズム
前庭神経は体のバランスをとるのに重要な役割を果たしています。前庭神経に炎症が起こると三半規管や耳石器で感じた情報が、正常に脳に伝わらなくなります。
片方の前庭神経に炎症が起こると、情報の伝達に左右差がうまれバランスが保てなくなり、めまいが現れます。
内耳には、体の回転を感じる三半規管、体の傾きを感じる耳石器があります。
三半規管や耳石器が感じた情報は、前庭神経を通じて脳へ伝えられ、脳は全身の筋肉などに指令を出します。
こうしたメカニズムで、立ったり座ったりするときに適切な姿勢を保つことができるのです。
治療
前庭神経炎の治療は、安静にすることが第一です。症状が強い場合は入院することもあります。安静にして、薬物療法とリハビリを行います。
薬物による治療~神経の炎症を抑える
ステロイド薬(内服または注射) 前庭神経炎の炎症を抑える
ただし、糖尿や高血圧がある人は注意してください。ステロイド薬がこれらの病気を悪化させることがあるので、事前に医師に伝える必要があります。
ムーンフェイス(顔がむくむ)などの副作用が現れた場合も、医師に相談してください。
- 抗めまい薬 激しいめまいを抑える
- 内耳循環改善薬 神経への血液を促す
- 抗不安薬 不安を和らげる
などを用います。
ふらふらするのを改善~バランス感覚を鍛える
前庭神経炎の大きなめまい発作は一度きりですが、フラフラすることが数年にわたって続くことも少なくありません。ふらつきを軽減するリハビリでバランス感覚を鍛えます。
めまいを起こす内耳の病気には、メニエール病などもありますが、前庭神経炎は、神経そのものが炎症で障害を受けるため、より症状が重症化しがちです。
リハビリの代表的なものは
- 顔の前で親指を左右に動かし、目で追う
- 顔の前で固定した親指を見ながら、頭を左右に動かす
などがあります。朝晩行います。これは、前庭神経炎の患者さんだけでなく、めまいが慢性化している人、高齢でふらつきがちな人にも効果があります。
このほか、
- 起立してまっすぐに立つ
- 目を閉じて1分間立つ
などもリハビリになります。1日1~2回行います。ふらついた時に支えとなるよう、机や椅子、壁のそばなど、安全な環境で行います。
耳以外の感覚を鍛える
脳は、耳から入ってくる体の運動の情報や、位置の情報、目で見た景色、関節や筋肉などから感じる「自分がどのような場所に立っているのか」などの情報を統合し、体のバランスをとっています。
前庭神経炎で耳からの情報が伝わらなくなっている分、目や関節、筋肉などの感覚を鍛えて、脳とのつながりを高めることが大切です。
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まとめ~はげしいめまいは安静に
前庭神経炎では、激しいめまいが起きているときは、安静を保ちます。薬で神経の炎症を抑え、リハビリでバランス感覚を鍛えフラフラするのを抑えましょう。
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